しぜんききょう

自然気胸

最終更新日:
2024年10月28日
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2024/10/28
更新しました
2017/04/25
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概要

自然気胸とは、肺の表面を覆っている“胸膜(きょうまく)”という膜に何らかの理由で穴が開き、吸った空気がそこから漏れ出てしまうことにより、肺がしぼんでしまう病気です。自然気胸を発症した場合、肺がうまく膨らまなくなるため、息苦しさや胸の痛み、咳などの症状が現れます。

自然気胸は20歳前後の男性、長身で瘦せ型の人、または高齢で喫煙習慣がある人や低栄養状態の人に起こりやすいといわれています。

なお、自然気胸は治療を行っても再発することがあり、過去に自然気胸を発症したことがある人は再発に注意する必要があります。

原因

原因は原発性自然気胸と続発性自然気胸とで異なります。

原発性自然気胸

原発性自然気胸は特に明確な理由なく、突然発症します。原因としては胸膜の一部が弱くなって生じた“気腫性肺嚢胞(きしゅせいはいのうほう)”が破裂することによって起こると考えられています。この嚢胞は“ブラ”“ブレブ”などと呼ばれることもあり、体質的に胸膜が弱い傾向にある高身長で痩せ型の男性に生じやすいといわれています。また喫煙習慣のある人も、胸膜がもろくなりやすいために原発性自然気胸を引き起こしやすいといわれています。

続発性自然気胸

続発性自然気胸は何らかの病気が原因で発症する自然気胸です。原因となる病気としては、肺気腫肺がん、感染症、嚢胞性肺疾患*(のうほうせいはいしっかん)などが挙げられます。続発性自然気胸は比較的高齢者に多い病気です。もともと肺の状態が良好でない場合に発症することが多いため、治療に時間がかかることがしばしばあります。

また、女性特有の続発性自然気胸として“月経随伴性気(げっけいずいはんせいききょう)”もあります。月経随伴性気胸とは、子宮内膜症を原因として発症する自然気胸で、生理の前後に発症します。基本的に自然気胸は男性の発症が多いとされていますが、女性かつ30歳~40歳代で前述の症状が現れた場合は、月経随伴性気胸が疑われます。

*嚢胞性肺疾患:胸膜に嚢胞が多数できる病気の総称

症状

自然気胸の症状は、重症度や種類によって個人差があります。主な症状として、息苦しさや胸の痛み、咳などがありますが、特に症状がみられず胸部X線検査を行って初めて発見されることもあります。一方、重症の場合、肺が大きくしぼんで心臓を圧迫し、ショック状態に陥ることもあるほか、左右両方の肺が同時に気胸を起こした場合、呼吸ができなくなり命に関わることもあります。

検査・診断

自然気胸は主に胸部X線検査によって診断されます。X線で映される肺の様子を観察し、肺がしぼんでいる場合に気胸と診断され、重症度については肺のしぼみ具合によって判断されます。

なお、非常に軽症の自然気胸の場合、X線検査では発見できずCT検査で初めてみつかることもあります。

治療

自然気胸の治療方法は、主に保存療法と手術治療に分けられます。治療方針は、気胸の重症度や患者の全身状態、かかっている病気などを加味して検討されます。保存療法は体への負担が少ない治療ではありますが、手術に比べて再発しやすい側面があるため、受診・治療の際は医師の説明を聞いたうえでよく相談するようにしましょう。

保存療法

安静

軽症の場合は体を安静にし、通院で経過をみながら穴の開いた胸膜が自然に塞がるのを待ちます。胸膜から漏れ出てしまった空気も時間の経過とともに血液に溶け込み、徐々になくなっていきます。もっとも体に負担のかかりにくい治療方法ですが、50%以上の確率で再発するともいわれています。

穿刺脱気療法(せんしだっきりょうほう)

主に軽症の人に行われることがある治療方法で、胸膜の穴から漏れ出た空気を抜くために、局所麻酔下で胸に針を刺します。空気を抜けば再び肺が膨らむようになりますが、肺が膨らむことにより再び胸膜に穴が空いてしまうこともあるため、実施は慎重に判断します。安静による保存療法と同様、50%以上の確率で再発するといわれています。

持続吸引療法(胸腔ドレナージ)

中等症~重症の人に行う治療方法で、局所麻酔下で胸にドレーンと呼ばれる直径6~7mm程度の管を挿入し、胸膜の穴から漏れ出た空気を持続的に抜きます。胸に挿入したドレーンをドレーンバックと呼ばれる箱につなぎ、一度胸から排出された空気が逆流しないようにします。漏れ出た空気が抜けると再び肺が膨らむようになるほか、時間の経過とともに胸膜の穴も塞がっていきます。治療後の再発率は30~50%といわれており、再発を予防したい場合やすでに再発経験のある患者には手術治療を推奨することもあります。

胸膜癒着療法

手術が必要な状態であるにもかかわらず、かかっている病気や全身状態などを理由に手術が難しい場合に検討される治療方法です。まず持続吸引療法で肺の外に漏れ出た空気を排出させた後、ドレーンから胸の中に薬剤を注入し、炎症を引き起こすことによって肺と胸膜を癒着させ、穴を塞ぎます。再発率は10%といわれています。

手術治療

全身麻酔下で自然気胸の原因となった穴を塞ぐ治療方法です。複数の治療方法があり、基本的には自動縫合器という医療機器を使用して、穴の開いた嚢胞を切除することで穴を塞ぐことが一般的ですが、状況によっては穴の周辺の組織を糸で縛って穴を塞ぐこともあります。手術治療には開胸手術と胸腔鏡下手術があり、それぞれに体への負担や再発率などが異なります。

開胸手術

胸の側面を10〜15cmほど切開して行う手術方法です。特に自然気胸の原因となった穴の位置が特定しにくい場合などに検討されます。近年広く行われるようになった胸腔鏡下手術と比較すると傷が大きく、患者の体に負担がかかりやすい治療方法ですが、再発率はおよそ1%と低いことが特徴です。

胸腔鏡下手術

胸に数cm程度の穴を数か所開け、この穴から胸腔鏡と呼ばれるカメラや医療器具を挿入して行う手術方法です。開胸手術と比較すると傷が小さく、患者の体への負担も比較的少ない手術ですが、再発率は5%程度と開胸手術よりやや高い傾向にあります。多くの医療機関では、手術後の再発を予防するために切除部位に吸収性シートを用いて補強するなどの処置が行われています。

種類

自然気胸には、原発性自然気胸と続発性自然気胸があります。原発性自然気胸とは健康な人に突然生じる自然気胸を指し、続発性自然気胸とは何らかの病気に伴って発症する自然気胸を指します。

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