概要
気胸とは、何かしらの原因で肺から空気が漏れてしまい、漏れた空気によって肺が潰されてしまう疾患のことです。気胸は交通外傷や胸を刺されたことなどがきっかけとして発症することもありますが、こうした明らかな原因がなく発症するものを自然気胸といいます。
自然気胸を発症すると胸の痛み、呼吸困難、咳などが出てきます。重度の気胸を発症すると、緊張性気胸と呼ばれる生命に危機がおよぶ状況になり、速やかな処置が必要とされます。
自然気胸では「ブラ」や「ブレブ」と呼ばれる肺の病変部位から、空気が漏れ出すことがほとんどです。症状が改善しない場合や再発を繰り返す場合には、手術でブラやブレブを摘出することもあります。
原因
肺の内部は緻密なスポンジ状になっていて空洞がたくさんあります。肺の周りは風船のゴムのような胸膜と呼ばれる膜で包まれており、さらにその周りの肋骨や筋肉が壁となって肺を守っています。
しかし、肺の中に「ブラ」や「ブレブ」と呼ばれる病変が生じることがあります。ブラやブレブはお餅がぷっくりと膨らんだ様子とよく似ており、壁が非常に弱い構造になっています。ブラやブレブが破れると、そこから空気が抜けて肺がしぼみ気胸を発症します。外傷などの明らかな原因があればもちろんですが、原因がなくとも破れることがあり、この状態を自然気胸といいます。
きっかけが特になくてもブラやブレブは破れる可能性があります。激しい運動をしたからといって破れやすいわけではなく、寝ているときにでもブラやブレブは破れることがあります。
自然気胸は、背が高くて痩せている20歳前後の男性に発症しやすい傾向にありますが、その理由は明らかになっていません。受験や就職などのタイミングで発症することもあり、ストレスが要因のひとつだとも考えられます。
症状
自然気胸の症状は、ブラやブレブが破れた際に発生する突然の胸の痛みです。肺が潰されてうまく呼吸ができなくなるため、呼吸困難も感じます。肺から空気が漏れる量が多くなると正常な肺はほぼ潰され心臓も圧迫されるため血液循環動態にも悪影響が生じるようになります。この状態は「緊張性気胸」と呼ばれ、生命の危機に瀕することになります。
緊張性気胸を発症すると、呼吸困難はさらに悪化し、血圧低下も来すようになるためチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色である状態)やショック状態(重要臓器への血流が不足することにより、全身にさまざまな症状を引き起こす状態)になります。
また、なかには気胸を発症していても咳や胸痛、呼吸困難が自覚されないこともあり、健診などで偶然、発見されることもあります。
検査・診断
自然気胸は胸部レントゲン写真で比較的容易に診断できます。
レントゲンで肺の状態を確認すると、気胸の起きている側の肺が虚脱(空気が入っていない状態)していることがわかります。また、胸部単純レントゲン写真では気胸の診断のみならず、肺がどの程度潰されているのか、その重症度も判定することが可能です。
さらに詳しく胸の内部を確認する場合には胸部CT検査を行います。CT検査によって、レントゲンでは観察ができないような小さな嚢胞(袋状の病変で、中に空気がたまったもの:ブラやブレブ)や、胸膜癒着の有無、肺気腫等の基礎疾患(もともと持っている疾患)などを明瞭に確認することができます。
治療
自然気胸の治療は、重症度に応じて異なります。気胸そのものは仮に発症したとしても、病状が重くなければ自然経過で治癒することもあります。そのため、軽度の気胸であれば「安静」といった治療方法が選択されることもあります。
しかし、自然気胸の程度が重い場合においては、胸腔ドレナージや手術といった、別の治療方法が選択されます。
胸腔ドレナージ
もっとも一般的に選択される治療法です。肺から漏れ出た空気を体外へ持続的に排出させて、潰れた肺をもとに戻します。胸腔ドレナージを行いながら破れた肺が徐々に修復されるのを期待します。
手術
自然気胸はブラやブレブの破裂がもととなって発症しているため、原因となったブラやブレブを切除します。手術は胸腔鏡下で行うことが基本ですが、胸膜の癒着が激しい場合には胸開術が選択されることもあります。気胸に対する手術は、下記のような場合に適応となります。
- 胸腔ドレナージで1週間程度持続吸引しても空気漏れが止まらない場合
- 再発性の場合
- 左右の肺に同時発症した場合
- 血胸(胸腔内で出血していること)を合併している場合
自然気胸に対しては日常生活において注意すべき点がいくつかあります。たとえば、喫煙は気胸の原因になるとの指摘もありますし、続発性に肺気腫などの肺障害が生じます。そのため、禁煙は大切な治療方法のひとつです。またスキューバダイビングも気胸を誘発することがあります。ダイビング中に気胸を発症すると、死亡事故につながることもあるため控えるようにしましょう。
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