概要
芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)は、血液のがんである白血病の一種に分類される非常にまれな病気です。主な特徴として、紫色や赤黒い発疹が皮膚に現れて発症することが多く、病気の進行が速いことが挙げられます。高齢の男性に多くみられ、腫瘍細胞における遺伝子変異が原因と考えられています。
症状は皮膚症状のほか、リンパ節の腫れなどが生じることがあり、診断の際は皮膚などの組織を採取する生検や画像検査などが行われます。確立された治療法はないため、一般的に急性白血病に準じた薬物療法や造血幹細胞移植*が検討されます。近年では、腫瘍細胞が発現する表面分子を標的とする新しい治療薬も登場しています。
*造血幹細胞移植:赤血球・白血球・血小板のもととなる造血幹細胞を移植する治療法。
原因
BPDCNは、がんに関連する遺伝子の変異によって引き起こされると考えられています。近年の研究により、がんを抑制する遺伝子であるCDKN2A/CDKN2B遺伝子やRB1遺伝子などの欠失や、がん遺伝子であるMYB遺伝子、MYC遺伝子の変異が関与することが明らかになってきました。これらの異常な遺伝子が正常な細胞を変化させ、がん化を引き起こすと考えられています。
症状
BPDCNで最も特徴的なのは皮膚に現れる症状です。一般的に進行が速く、進行するとリンパ節の腫れや、骨髄にがんが広がることにより白血病の症状が現れることがあります。
皮膚症状
多くの患者さんで初期症状として認められ、紫色や赤黒いあざのようなシミ(斑)、あるいは少し盛り上がったコブ(腫瘤)などの発疹が現れます。これらの皮膚症状は、痛みやかゆみなどを伴わないことが多いといわれています。
リンパ節の腫れ
BPDCNの患者さんの約半数でリンパ節の腫れがみられます。
骨髄にがんが広がった場合の症状
血液を作るはたらきをもつ骨髄にがん細胞が広がることで、正常な血液細胞が作られなくなり、以下のような症状が引き起こされます。
- 貧血……赤血球の減少により、息切れや動悸などが起こります。
- 出血……血小板の減少により、鼻血や歯ぐきからの出血が起こります。
- 感染症……白血球の減少により、感染症にかかりやすくなり発熱などの症状が現れます。
検査・診断
BPDCNの診断では、主に皮膚の病変部の組織を少量採取して調べる生検が行われます。生検では、採取された組織を顕微鏡で観察し、細胞の形を確認します。加えて、免疫染色という特殊な染色法やレーザー光を用いるフローサイトメトリーという測定法で、がん細胞の表面に発現する特定のタンパク質を目印(マーカー)として調べます。BPDCNの診断では、CD4、CD56、CD123、TCL1などのマーカーが重要な指標とされています。
がんの全身への広がりを調べるために、CT検査やPET検査などの画像検査が行われることもあります。
治療
BPDCNに対する治療法は確立されていません。そのため、治療方針は急性白血病の治療法を参考にして、個々の患者さんの状態に応じて決定されます。一般的にはまず複数の抗がん薬を組み合わせる薬物療法が検討され、薬物療法後に可能であれば造血幹細胞移植が行われます。BPDCNは再発しやすい病気ですが、造血幹細胞移植後に長期生存する場合もあります。
近年、BPDCN細胞の表面に過剰に発現するCD123を標的とする新しい治療薬(タグラキソフスプ)が登場し、2026年3月に販売が開始されました。この薬によって、急性白血病を参考として行われる治療法に加え、BPDCNそのものを対象とした治療の選択肢が広がっています。
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