若年性特発性関節炎はさまざまなタイプに分類されますが、初期診療の段階では正確な診断が難しい場合が少なくありません。全身型とそれ以外のタイプに分けてそれぞれの標準的な流れに沿った治療を行いつつ、同時進行で鑑別診断を進めていきます。小児膠原病のエキスパートであり、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座で教授を務める森雅亮先生に、若年性特発性関節炎の治療の流れについてお話をうかがいました。
若年性関節リウマチに対する治療法として、1990年代に葉酸代謝拮抗剤であるメトトレキサート(MTX)の少量間欠療法がさかんに行なわれてきました。しかし、若年性特発性関節炎の中でも関節型の約30%の患者さんには無効であり、吐き気や嘔吐のために治療を受けられない患者さんもいました。また全身型の患者さんでは、このMTXは炎症の抑制に効果がありませんでした。
その後、炎症システムの解明が進むと、生物学的製剤として欧米ではTNF-α阻害薬が開発され、日本でもIL-6阻害薬が開発されるようになりました。特にIL-6阻害薬は全身型若年性特発性関節炎(sJIA)の患者さんによく効くことがわかり、その後全身型以外の関節型についても使用が承認されています。
このほか、若年性特発性関節炎の薬物治療では炎症を鎮めるために以下の薬剤が使用されます。
グルココルチコイド(GC)の全身投与によって炎症を鎮めることが治療の中心です。関節痛に対しては非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。病気の経過全般において、マクロファージ活性化症候群(MAS)への進展に注意を払い、MASが疑われた場合は早急に小児リウマチ専門施設に連絡をとり治療を開始します。炎症鎮静後にグルココルチコイド(GC)の使用量を減らす場合は治療アルゴリズムのフローに従って行います。
全身型の場合には、ステロイド系抗炎症薬でも関節炎が改善しない、あるいは薬を減らすことができず副作用で困っている患者さんが少なくありません。そのような場合には、次の記事でご紹介する生物学的製剤のトシリズマブが非常に有効で、約95%の方で症状が改善したというデータがあります。この治療によってステロイド治療をやめることができ、最終的にはトシリズマブ自体を使わなくて済むようになる症例も出てきています。
日本では若年性特発性関節炎に対して適応が認められている非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)はないため、関節痛および関節炎に対して適応があり、小児への使用が認められているイブプロフェンとナプロキセンを投与しつつ鑑別を進めます。診断がつき次第リスク判定を行い、ハイリスク群にはメトトレキサート(MTX)の経口投与を開始します。
治療開始後も画像検査により定期的に治療の効果を判定し、改善しない場合はリウマチ専門医(小児科)または日本小児リウマチ学会運営委員にコンタクトを取り、生物学的製剤による追加治療を行います。
関連の医療相談が10件あります
騒音性難聴と耳鳴り
1年くらい前から耳鳴りがきになり耳鼻科を受診したら騒音性難聴とのことでした。その後テレビがついていたり雑音があると会話が聞き取りにくく、仕事中どうしてもなんかしら雑音があるため聞き取りにくく聞き返すことが増えてこまっています。時々耳抜きができないような詰まった感じがすることも増えました… 加味帰脾湯という薬を処方されましたが改善しません… ほかの病院を受診してみるべきですか? あと、耳の感じはとても説明しにくいです。症状を伝えるのになにかアドバイスあったらおしえてほしいです…
脇の下がたまに痛い、違和感を感じる
3月にコロナウイルスに感染しました。 その後くらいから、右の脇の下にたまに痛くなります。自分で触ってとくにしこりのようなものはないとは思います。 コロナとは関係ないのかと思い、乳腺エコーをしました。特に異常なしでした。 乳腺など婦人科なのか、もしくはリンパなのか?どのような病院に行けば良いのでしょうか? たまに違和感を感じる程度なので、このまま様子見で問題ないでしょうか?肩こりや筋を違えたようなことはないように思います。 考えられる病気はリンパか乳腺系以外にありますか?よろしくおねがいします。
骨嚢腫の治療
左足親指の骨が痛くて違和感があり整形外科受診。レントゲンで骨に空洞があるのでMRI検査施行。骨嚢腫についてと原因や完治するのか?治療方法やそれに要する日数等詳しく教えてほしいです。
オミクロン株について
本日17時頃から37.6〜36.5の熱を繰り返しており、倦怠感、鼻詰まり、下痢をしています。 同居人も37.4の熱があり、PCR検討中です。 コロナの可能性はありますか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「若年性特発性関節炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします