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蜂窩織炎は自然治癒する病気なの?~放置した場合のリスクと治療で使われる薬とは~

蜂窩織炎は自然治癒する病気なの?~放置した場合のリスクと治療で使われる薬とは~
川村 龍吉 先生

山梨大学医学部皮膚科学講座 教授

川村 龍吉 先生

目次
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蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは皮膚やその下の組織に生じる細菌感染症で、蜂巣炎(ほうそうえん)と呼ばれることもあります。主に傷や皮膚の病気などから細菌が侵入して発症し、患部の発赤・痛みなどの症状が見られ、重症化すると発熱や頭痛、悪寒などの症状が生じることもあります。また、細菌の感染が広がるとリンパ節炎リンパ管炎などを引き起こし、患部全体が腫れることもある病気です。では、蜂窩織炎ではどのような治療が行われるのでしょうか。

本記事では、蜂窩織炎の治療について詳しく解説します。

蜂窩織炎は自然治癒することはありません。そのため、医師による診断のもと治療を行う必要があります。

以下では蜂窩織炎の診断と治療についてそれぞれ解説します。

蜂窩織炎が疑われる場合、患部の状態やそのほかの症状を元に診断されることが一般的です。ただし、ほかの病気との鑑別が必要な場合などは併せて血液検査や皮膚や血液などを採取・培養し、原因菌を見つける検査を実施することもあります。

特に、蜂窩織炎と症状がよく似ている“壊死性筋膜炎”という病気では、発見後すぐに周囲の皮膚・皮下組織を手術で取り除くデブリードマンという処置を行わないと高率で死に至るため、的確な診断が必要となります。

蜂窩織炎と診断されると、まずは抗菌薬(抗生剤)による治療が行われます。抗菌薬の投与は症状が軽度な場合には経口で行われ、重症の場合には入院したうえで静脈内注射によって行われます。

一般的には抗菌薬を投与すると症状は数日~10日ほどで治まります。しかし、細菌が減少した後も体の反応が続く場合があるため、再発を防止するためにもしばらくは医師の指示に従い、抗菌薬の服用や病院の受診を継続しましょう。

そのほか、蜂窩織炎に伴い(のうしゅ)(うみ)のたまった腫瘍)が生じた場合は、切開によって膿を排出する治療を行います。

蜂窩織炎は放っておくと重症化することがあります。重症化ケースではまれに菌血症や壊死性筋膜炎などから敗血症が生じることがあり、敗血症にかかると臓器などに機能不全が生じて、場合によってはショックを起こして命を落とすケースもあります。そのため、皮膚が赤くなり痛みが生じるなど、気になる症状が現れたときは病院の受診を検討しましょう。

なお、菌血症とは血液中に細菌が入り込むことをいい、菌血症そのものに症状は見られません。菌血症にかかっても多くの場合は時間とともに細菌が除去されますが、まれに細菌が排除されずに敗血症に発展することがあります。

一方、壊死性筋膜炎とは細菌が筋膜に沿って増殖し、皮膚や皮下組織に急速な壊死が拡大する感染症で、進行すると四肢切断をする必要があったり、敗血症を生じたりする病気です。この病気では治療に緊急手術(デブリードマン)を要するため、必ず入院が必要となります。

蜂窩織炎は一度症状が治まっても再発する可能性があります。同じ場所に再発を繰り返すとリンパ管が損傷し、治った後も患部が腫れた状態が続いてしまうこともあります。

再発を予防するためには、発症した際に抗菌薬を十分に服用することのほか、蜂窩織炎の発症・悪化の原因となる病気を治療する必要があります。たとえば、白癬(あしはくせん)水虫)は蜂窩織炎の発症リスクを高めることが分かっているため、足白癬にかかっている人は蜂窩織炎の再発予防として足白癬の治療を行う必要があります。

蜂窩織炎は自然治癒で治ることはなく、医師の診断のもと抗菌薬の投与などの治療が必要です。重症化するとまれに重篤な合併症が生じることもあり、また壊死性筋膜炎の初期症状との見分けが難しいため、放置せずに気になる症状があれば早めに皮膚科を受診することを検討しましょう。

診断後は医師の指示に従って正しく抗菌薬を服用することが大切です。抗菌薬の服用中に症状が治まったと思って服用をやめてしまうと症状がぶり返したり、再発しやすくなったりすることもあります。抗菌薬を指定された日数できちんと飲みきり、医師の判断に従って病院の受診を継続しましょう。

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