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写真でみる蜂窩織炎の症状とは~皮膚症状のほかにも発熱などの全身症状もある~

写真でみる蜂窩織炎の症状とは~皮膚症状のほかにも発熱などの全身症状もある~
前川 武雄 先生

自治医科大学附属さいたま医療センター 皮膚科 准教授(科長)

前川 武雄 先生

目次
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蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌を原因とする細菌感染症です。皮膚やそのすぐ下の組織に発生し、赤みや痛み、重症の場合は発熱なども引き起こすことがあります。原因となるレンサ球菌や黄色ブドウ球菌は普段から人間の体表などにすみ着いていることもあるため、この感染症は比較的身近な病気だといえるでしょう。では、具体的にはどのような症状がどこに現れるのでしょうか。本記事では実際の症例写真と一緒に蜂窩織炎の症状を詳しく解説します。

蜂窩織炎の好発部位は脚です。赤み、痛み、腫れなどの皮膚症状のほか、悪寒、頭痛、発熱などが現れることもあります。

蜂窩織炎が発生しやすい部位は下肢(股関節(こかんせつ)より下)ですが、体のどこにでも生じる可能性があります。なお、症状は片側にのみ現れることが一般的といいます。

また、膝から下に発生する蜂窩織炎の主な原因は趾間(しかん)型の足白癬(はくせん)(足の指の間に発生する水虫)とされ、この場合は指の間のひび割れや炎症部分から細菌が侵入し、感染すると考えられています。

蜂窩織炎の代表的な症状は感染した部分の皮膚の赤み、痛みです。これらの症状は細菌の影響と、感染から体を守ろうとする反応によって引き起こされます。さらに感染部分が熱を持って腫れる、盛り上がりやくぼみが現れる、点状出血(点状の赤み)が見られる、水ぶくれができる、といった症状が見られることもあります。水ぶくれは破れる場合があり、皮膚が壊死(えし)することもあります。さらに細菌の感染が広がると感染部分の近くのリンパ節が腫れて、押すと痛んだり(リンパ節炎)、リンパ管が炎症を起こしたり(リンパ管炎)するといいます。

また、蜂窩織炎で見られる上記のような皮膚症状は境界があいまいですが、蜂窩織炎の一種である丹毒(たんどく)では症状の境界がはっきりしている特徴があります。これは蜂窩織炎が皮膚とその下の脂肪組織といった深い部分の感染症であるのに対し、丹毒が皮膚に限局した浅い部分の感染症であるためです。境界がはっきりしている丹毒の皮膚症状はオレンジの皮のように見えるといった特徴があります。

蜂窩織炎
蜂窩織炎の症状例

皮膚症状が現れる数時間前に発熱、悪寒、心拍数の増加、頭痛、低血圧せん妄(精神機能の障害)が現れることがあります。しかし、通常は客観的に具合が悪いようには見えないとされています。また、感染が急速に拡大して痛みが急激に強くなる、低血圧、せん妄、皮膚の剥がれ(かつ水疱(すいほう)と発熱を伴う場合は特に)が見られる場合は、蜂窩織炎ではなく壊死性軟部組織感染症が生じている可能性が高く、命に関わる危険性もあるため注意が必要です。

蜂窩織炎は感染が急速に拡大し、死亡する可能性もある感染症です。特に痛みが急激に強くなる、低血圧せん妄、皮膚の剥がれ(かつ水疱と発熱を伴う)などが見られる場合は重症の可能性が高いため、急ぎの受診が必要な場合があります。この場合は抗生剤の点滴または内服を行うことで多くは速やかな回復が見られるとされています。

また、蜂窩織炎と似た症状が現れる病気に、深部静脈血栓症*や壊死性軟部組織感染症*があります。これらの病気も命に関わる恐れがあるため、下肢に赤みや腫れの症状が見られた場合には必要に応じた検査を行い、原因疾患を慎重に見極める必要があります。したがって、蜂窩織炎が疑われる症状がある場合は放置せずに受診を検討しましょう。

*深部静脈血栓症 … 深部静脈(多くは下肢)に血栓が生じる病気。血液の流れに乗って肺動脈に到達し詰まると肺塞栓症を生じることがある。
*壊死性軟部組織感染症… 皮膚や皮下、筋膜、筋肉などの軟部組織が細菌感染によって壊死が拡大する感染症

蜂窩織炎の治療では主に抗生剤の点滴または内服を行うほか、患部を冷却して安静にします。また、リンパ浮腫(ふしゅ)の患者は蜂窩織炎にかかりやすいとされており、その場合はリンパ浮腫のケアである圧迫下での運動療法やリンパドレナージを中止し、患肢の挙上で対処する必要もあります。ただし、浮腫がある状態では蜂窩織炎が治りにくいため、患肢の挙上だけでは浮腫が悪化してしまう場合には患者の状態を見ながら下肢を圧迫して浮腫を軽減させることもあります。

蜂窩織炎の症状は感染部位の赤み、痛み、腫れなどほか、水ぶくれや皮膚の壊死、発熱、悪寒なども見られることがあります。また、低血圧せん妄、皮膚の剥がれなどが見られる場合は重症の可能性が高く、場合によっては死に至ることもあります。

そのため、上記のような症状を自覚した場合には早めに病院を受診しましょう。診断は基本的に医師による患部の視診や触診によって行われます。診察時に疑問や不安を感じたら、ためらわずに医師に相談するようにしましょう。

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  • 自治医科大学附属さいたま医療センター 皮膚科 准教授(科長)

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