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血管肉腫に対する主な治療法とその特徴、症例別の治療方針

血管肉腫に対する主な治療法とその特徴、症例別の治療方針
大塚 篤司 先生

近畿大学医学部皮膚科学教室 皮膚科 主任教授

大塚 篤司 先生

目次
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血管肉腫とは、血管の内皮細胞から発生するがんを指します。悪性度が高く、極めて予後不良ながんのひとつです。まれな病気であるため、いまだに治療法は確立されていませんが、患者の状態やがんの状態に応じてさまざまな治療が行われています。

本記事では、血管肉腫に対する治療法とがんの状態に応じた治療方針、血管肉腫の予後について解説いたします。

血管肉腫の治療法には、外科的にがんを取り除く“手術”、免疫を回復させて治療する“免疫療法”、がんに放射線を照射する“放射線治療”、抗がん剤を用いた“化学療法”の4つがあります。

血管肉腫は予後が悪く、転移や再発の可能性が高いことから、多くの場合はいくつかの治療法を組み合わせて治療が進められます。

血管肉腫は切除しても多くは近くで再発する場合があります。そのため、手術では基本的にがん自体だけでなく、その周囲を広範囲に切除します。主にがんの大きさが5cm以下の場合に実施され、切除によってがんがなくなるので根治が期待できます。

しかし、全身麻酔の使用など体への負担が大きいことから、体力が低下している高齢者などでは手術が難しい場合もあります。

免疫療法とは、体の免疫を活性化させることでがん細胞を攻撃し、がんを抑制する治療法です。血管肉腫ではインターロイキン2(IL-2)製剤が用いられ、局所注射または動脈注射によって投与します。

副作用は少ないですが、効果が期待できる症例が限定的です。主に初期がんの斑状(はんじょう)型病変に対して実施されています。化学療法の登場により、現在は実施する施設が徐々に減ってきているといわれています。

放射線治療は、がんに対して放射線を当てることによってがん細胞のDNAに損傷を与え、がんを死滅させたり小さくしたりする治療法です。血管肉腫には放射線治療が効く場合が多く、進行度に関係なく行われています。

副作用として、放射線を照射した場所に皮膚や関節、骨に障害が起こることがあります。

血管肉腫に対しては、抗がん剤による治療も多く実施されています。近年では保険が適用されるパクリタキセルなどのタキサン系薬剤が頻用され、化学療法によって生存期間の延長が期待できます。日本ではほかに、パゾパニブ、エリブリン、トラベクテジンなどの薬が血管肉腫に対して使用されることがあります。

その一方で、抗がん剤を使用することによってさまざまな副作用が生じる場合があります。副作用には個人差がありますが、代表的なものとして脱毛やしびれ、関節痛、筋肉痛、爪が剥がれる、吐き気などが挙げられます。また、間質性肺炎が起こる可能性があると指摘されています。

血管肉腫の治療法にはさまざまなものがありますが、全ての症例に全ての治療法が有効なわけではありません。患者の状態やがんの状態などに応じて、有効と考えられる治療法が選択されます。

血管肉腫の治療は一般的に手術が第一選択で、がんの大きさが5cm以下の場合、あるいは5cm以上でも完全切除が可能と判断された場合に手術が行われています。しかし、手術でがんを取り除けたとしても近くに再発することが多いので、通常は手術後に放射線治療が実施されます。

手術による効果が見込めない場合や、体力が低下している高齢者で手術が難しい場合には、主に放射線治療と免疫療法または化学療法を組み合わせた治療が選択されます。

進行がんに対する治療としては、放射線治療と化学療法の併用が一般的です。化学療法では週に1回の投与を3週間続け、1週間休薬するというような形で進められます。

頭部血管肉腫で放射線治療や化学療法が無効、あるいは施行できない場合には、局所の腫瘍(しゅよう)の増大に伴う醜形(しゅうけい)、腫瘍からの出血や滲出液(しんしゅつえき)、感染による悪臭などによってQOL(生活の質)が著しく低下します。このような場合、モーズペーストという外用剤などを使用し、症状の緩和を図る場合があります。

血管肉腫は転移を起こしやすく、肺や肝臓、骨、リンパ節なさまざまな部位に転移が見られます。

なかでも危険性が高いのが肺への転移です。血管肉腫の死因のうち約90%が肺転移によるものとの報告もあり、肺転移は直接的に生命予後に関わるため、転移があれば早期に胸膜癒着術(胸腔内に薬剤を投与し、あえて炎症を起こして胸膜をくっつける手術)が施行されることが多くあります。

また、リンパ節に転移した場合には、外科的にリンパ節を切除することがあります。

病気の予後を反映する指標として“5年生存率”があります。これは診断を受けてから5年後に生存している割合を示すもので、対象となる病気を死因に入れるかどうかや、データ収集機関によっても差が見られますが、日本皮膚外科学会のアンケート調査結果によると血管肉腫全体の5年生存率は9%となっています。

国立がん研究センターの報告によると、全てのがんにおける5年生存率が62.1%であることから、血管肉腫は極めて予後不良ながんであるといえるでしょう。しかし、がんが小さく転移がみられない場合には、根治が見込めることもあります。

血管肉腫の予後は極めて悪いですが、一般的には治療の開始が早いほど予後が良好となります。治療法は患者の状態やがんの状態にもとづいて検討されますが、最終的には患者の希望を考慮して決定されます。自分に合った治療が受けられるよう、気になることがあれば医師に相談し、納得したうえで治療を進めていくようにしましょう。

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