リスク
血液透析と腹膜透析のいずれも合併症のリスクがあり、主に以下のものがあります。
血液透析の合併症
血液透析では血液を一時的に体の外に循環させる必要があるため、それに伴う合併症が現れやすくなります。
血圧変動
体内を循環する血液量が一時的に低下するため、血液透析中は血圧が低下しやすくなります。血圧低下により、あくび、倦怠感、吐き気などの症状が現れることがあり、程度が著しくなるとショック状態になることもあります。事前に血圧低下を予防する薬を使用することもあります。
出血傾向
体外に出た血液が固まるのを防ぐため、血液透析中は血液を固まらないようにする抗凝固剤と呼ばれる薬を使用します。そのため、治療中は出血しやすくなることがあります。
不均衡症候群
透析を始めて間もない頃は、透析によって急激に体内環境が変化するため、透析中や透析後に頭痛や吐き気などの症状が現れやすくなります。通常、2~3回程度透析を経験することで症状はなくなります。
アレルギー
透析治療に用いる透析膜(ダイアライザー)や薬剤に対するアレルギーが現れる場合があります。アレルギー症状はかゆみや発熱などが多いですが、まれに呼吸困難や著しい血圧の低下などの重篤な症状が現れることもあります。
シャントのトラブル
血液透析では透析膜(ダイアライザー)に大量の血液を流す必要があるため、腕に動脈と静脈をつないだ血管(シャント)を造り流量を確保します。シャントの形成によって、血管の狭窄や閉塞が発生することがあるため、シャントの音を毎日確認し良好に流れているかを確かめます。
そのほかの合併症
上記のほかに、動脈硬化による心疾患、二次性副甲状腺機能亢進症による骨疾患、アミロイドと呼ばれる物質が蓄積すること(透析アミロイドーシス)による手根管症候群や破壊性脊椎症などが現れることがあります。これらの合併症は、透析治療が長期にわたることで起こりやすくなります。
腹膜透析の合併症
腹膜透析では、お腹の中にカテーテルを留置して透析液を流し込むため、それに伴う合併症が現れやすくなります。
腹膜炎
腹膜透析でもっとも注意すべき合併症の1つです。カテーテルから細菌が混入し、腹膜に感染します。腹痛、吐き気、発熱などの症状のほか、排液のにごりが見られます。
カテーテルのトラブル
お腹の中に留置したカテーテルが動いてしまうことで、腹痛や排液不良が起こることがあります。また、カテーテルがつまってしまい、腹膜透析を続けられないこともあります。カテーテルの出口部や、カテーテルの周囲に感染を起こすこともあります。
被嚢性腹膜硬化症
腹膜透析の重篤な合併症の1つで、腹膜が腸と癒着して腸閉塞を引き起こす病気です。長期に腹膜透析を続け、腹膜が劣化することによって起こりやすくなります。定期的に腹膜の状態をチェックし、長期間の腹膜透析をしない、腹膜炎を起こさないなど発症を防ぐことが大切です。
透析液の注入に伴う合併症
腹膜透析では大量の透析液をお腹の中に入れる必要があるため、お腹の張りや腰痛、食事量の減少、ヘルニアといったトラブルを生じることがあります。
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