鼻の疾患に対する内視鏡を使った手術は、副鼻腔炎以外でも数多く行われています。ここでは鼻づまりの原因での一つでもある「鼻中隔弯曲症」と注意すべき病気である「若年性血管線維腫」の手術について大阪労災病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長の西池季隆先生にお話しいただきます。
鼻中隔弯曲症は鼻の真ん中にあるしきりの部分である「鼻中隔」が左右どちらかに著しく突き出すことによって、ひどい鼻づまりが起こる病気です。鼻中隔に偏りが生じることで左右の鼻腔の広さに差が生まれ、鼻の中の空気の通りが悪くなって鼻の孔がふさがり、鼻づまりが起こります。原因としては、先天性である・もともと真っ直ぐだったものが成長とともに曲がってしまう・外傷で曲がる、の3通りが考えられます。
治療法としては、抗アレルギー薬の投与、もしくは薬物投与でも改善しない場合には手術を行います。弯曲部を矯正する手術としては、従来は粘膜をはがして鼻の中の軟骨のほとんどを切除してしまう方法がとられていました。しかし当院では、軟骨の中でも弯曲した部分だけを削る「部分切除術」を行うとともに、残存する軟骨を正しい位置に移動させる矯正を行っています。この内視鏡下手術により、従来に比べさらに低侵襲の手術を施すことができ、治療を受けた患者さんも非常に満足しておられます。
このほかにも、「若年性血管線維腫」についても内視鏡下手術を行っています。「若年性血管線維腫」とはまれな良性腫瘍で、成長とともに腫瘍が鼻の奥で大きくなり、脳の周囲や眼窩、そして頭蓋内にまで広がってしまう病気です。主に思春期の年頃の男性で多く発症します。
症状としては、初期は軽い鼻づまりや鼻出血ですみますが、進行すると鼻づまりや鼻出血がひどくなり、頭痛や難聴を伴うこともあります。また顔がむくんだり、さらにはその腫瘍が鼻から突出してくることもあります。
治療方法としては、顔にメスを入れる手術が一般的に行われてきました。しかしこの方法ですと、成長期の若年者の顔に切開の跡が残りかねないことが問題でした。そこで、それを解消すべく、現在では内視鏡を使った手術が多く行われています。
このように内視鏡を使った鼻の手術は、低侵襲であり整容的に有利であるので適応範囲も広がっています。そして何よりも重要なのが、患者さんのQOLの向上につながっていることなのです。
大阪労災病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長、大阪大学 医学部 臨床教授、徳島大学 非常勤講師
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