大阪労災病院は内視鏡下耳科手術において全国でもトップクラスの実績を誇ります。慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎・耳小骨奇形・耳小骨離断・耳硬化症などを対象に、2014年度では116件の鼓室形成術のうち7割を内視鏡下で行いました。ここでは大阪労災病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長の西池季隆先生に耳の内視鏡手術についてお伺いしました。
内視鏡が使われる領域は徐々に拡大しており、耳科領域もその一つです。耳における内視鏡の利用は1993年頃から通常の手術において補助的に使われるようになり、2006年には耳の手術のすべてを内視鏡下に行う報告がなされるようになりました。現在、国内の耳鼻咽喉科領域においても注目されている分野です。その中でも大阪労災病院では全国に先駆けて、耳における内視鏡手術に取り組んできました。
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎の手術は顕微鏡下で行うことが多いのですが、耳の中は狭いために耳の後ろを大きく切開して、耳の中を観察する必要があります。さらに顕微鏡で奥までのぞき込むために、手前の骨を大きく削らなければなりません。それでも顕微鏡で見えない死角が生じることがあります。
しかし内視鏡を使うと、耳の入り口からだけの操作で、狭くて複雑な箇所へも入り込むことができ、内視鏡で観察しながら手術を行うことができます。これにより余計な切開や削開を行う必要がなくなりました。
また、内視鏡は患部に寄ったり離れたりというように視野をスムーズに変えることができ、30センチ離れた遠目からのぞく顕微鏡の手術と比べ患部周辺の状況把握が容易です。さらに、数十倍の拡大画像をハイビジョンモニタで見ながら手術ができるため、精細に患部を見ながら手術ができます。
このように顕微鏡下手術に比べ傷が小さく、健常部分が可能な限り残るため、術後の痛みや、術後の回復時間も短く、QOLの改善につながることが大きなメリットです。一方で、片手操作で手術を行うことや平面画像で立体感が得られないため、術者の慣れが必要です。しかし、内視鏡下耳科手術では一つのモニターを若手医師と指導者が一緒に見ながら手術の研修ができるため、医学教育という観点から優れた方法です。
耳における内視鏡を使った手術の対象疾患としては、慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎・耳小骨奇形・耳小骨離断・耳硬化症などがあります。
慢性中耳炎の場合、鼓室形成術と呼ばれる手術を行います。まず鼓膜の穴をふさぎますが、それだけでは聴力が回復できない場合、中耳にある音を伝えるための耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)を再建する必要があります。また、アブミ骨の底板が内耳の「卵円窓(らんえんそう)」に固着してしまい、難聴が進行する耳硬化症の手術では、アブミ骨を一旦取り去り、人工ピストン(耳小骨の代用物)をアブミ骨の底板に挿入するアブミ骨手術を行います。これらの耳科手術において内視鏡を使った手術を行っています。
鼓膜の一部が内側にへこみ「中耳」および「乳突洞」に「真珠腫」を形成する真珠腫性中耳炎は普通の中耳炎とは異なり、真珠腫がしだいに大きく成長し、周囲の骨を溶かしてさらに進行してしまう厄介な病気です。
手術では真珠腫をきれいに取り除き、鼓膜や耳小骨などを再建します。真珠腫は奥深くまで進展することが多いため難しい手術とされていますが、当科では真珠腫性中耳炎の4割で内視鏡下耳科手術を行い、低侵襲な手術を提供しています。
こうした手術では耳の後ろを大きく切ることが多く、そのために手術後に耳介が大きく立って目立ってしまったり(耳介聳立:じかいしょうりつ)、耳のしびれや、他人の耳になってしまったような麻痺した感覚が残ったりすることがあります。そのような合併症は、当科の手術ではほとんど生じることはありません。
当科における鼓室形成術は年々増加し、2014年度には116件に対して行っています。そのうちおよそ7割にあたる78件で内視鏡を使った耳科手術を行っています。内視鏡を使った耳の手術は、2015年には第一回の国際内視鏡下耳科学会が行われるなど、耳鼻咽喉科領域の医師からの関心がますます高まっており、今後普及が進むものと思われます。
大阪労災病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長、大阪大学 医学部 臨床教授、徳島大学 非常勤講師
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