しんじゅしゅせいちゅうじえん

真珠腫性中耳炎

最終更新日:
2024年07月17日
Icon close
2024/07/17
更新しました
2024/07/04
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)とは、鼓膜の皮膚の一部が中耳に入り込んで生じる慢性中耳炎の一種です。

耳は外側から外耳・中耳・内耳の3つに分けられます。鼓膜は外耳の突き当たりにある直径8~10mm、厚さ0.1mmほどの薄い膜で、音によって振動し、その振動を鼓膜の裏にある“耳小骨(じしょうこつ)(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)”を通じて内耳に伝える役割を持っています。

何らかの原因で鼓膜由来の皮膚が中耳に入り込み、そこにたまった落屑物が白く真珠のように見えることがあるため“真珠腫”という病名がついていますが、腫瘍(しゅよう)ではありません。真珠腫性中耳炎にはいくつかの種類があり、もっとも発症頻度が高いのは鼓膜上方に発生する弛緩部型真珠腫です。

先方提供

弛緩部型真珠腫の臨床像(画像提供:欠畑 誠治先生)

真珠腫は、周辺の骨などを溶かして進行するため、速やかに治療を受けることが大切です。

種類

真珠腫性中耳炎には、生まれつき生じる“先天性真珠腫”と、生まれたあとに発症する“後天性真珠腫”があります。

先天性真珠腫

受精から10か月ほどまでの胎児期に “表皮芽(ひょうひが)”という、表皮となる細胞の素が中耳に入り込むことなどによって生じます。初期のうちは症状がなく、多くの場合は学校検診などで小さな子どものうちに発見されます。

後天性真珠腫

後天性真珠腫は、鼓膜が内側にへこみ、そこに皮膚が蓄積することで生じる一次性真珠腫と、鼓膜に穴が空き、空いた穴から鼓膜の皮膚の一部が中耳へと入り込むことによって生じる二次性真珠腫があります。

さらに一次性真珠腫は鼓膜上側の“弛緩部(しかんぶ)”という部分に生じる“弛緩部型真珠腫”と、鼓膜の大部分を占める“緊張部”に生じる“緊張部型真珠腫”に分類されます。

原因

真珠腫が発生する原因については、まだよく分かっていません。ただし後天性真珠腫に関しては、子どもの頃に急性中耳炎滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)などを繰り返していた人に発症しやすいといわれています。

また、中耳と鼻をつなぎ、中耳の換気を行う“耳管”と呼ばれる器官の機能が悪い方や、中耳のガス交換をしている“乳突蜂巣(にゅうとつほうそう)”が十分に成長していないこと、鼻をすする癖があることなども、真珠腫性中耳炎の原因になる可能性があるといわれています。

症状

先天性真珠腫の場合には、無症状で経過し、検診などでたまたま発見されることがあります。後天性真珠腫では、初期症状としてや血の混じった匂いのある耳だれや耳痛が生じることなどがあります。いずれの場合も進行すると、鼓膜の振動を伝える役割を持つ耳小骨が破壊されて耳の聞こえが悪くなります。

真珠腫性中耳炎の進行例

鼓膜の周辺にはさまざまな神経や内耳が存在します。真珠腫性中耳炎が進行すると、その神経や内耳が障害されて、さまざまな症状が現れます。

鼓膜の裏側にある味覚を司る“鼓索(こさく)神経が障害された場合は、味が分かりにくくなったり、顔を動かす“顔面神経”が障害された場合は、顔をうまく動かせなくなったりすることなどがあります。さらに、内耳に障害が及ぶと感音難聴やめまいを引き起こします。

また、病気が頭蓋内まで進行すると、“髄膜炎”や“脳膿瘍(のうのうよう)”などの重篤な合併症を生じることもあります。

検査・診断

まず顕微鏡や内視鏡を使って鼓膜の状態を観察し、鼓膜がへこんでいないか、鼓膜周囲の骨の破壊がないか、鼓膜に真珠腫を疑うような白い塊がないかなどを確認します。

鼓膜の状態から真珠腫性中耳炎の可能性が高いと判断された場合は、CTやMRIなどの画像検査に加え、耳の聞こえの程度や鼓膜の動きやすさを確認するために、純音聴力検査やティンパノメトリー検査も行います。

画像検査

CT検査を行い、中耳の状態や骨の破壊の程度、周辺の器官への影響などを確認します。さらに真珠腫が及んでいる範囲を詳細に評価するためMRI検査を行います。

純音聴力検査

いくつかの音程の音を聞き、聞こえたら応答ボタンを押す検査です。

耳から聞こえる音を聞く“気導聴力検査”と、骨から伝わった音を聞く“骨導聴力検査”の両方を行います。気導と骨導の差があると、音を伝える耳小骨の破壊や周囲との固着が考えられます。

ティンパノメトリー検査

鼓膜に空気の圧を加えたり減じたりすることで、鼓膜が正しく動いているかどうか確かめる検査です。気圧の変化を受けると鼓膜は膨らんだりへこんだりしますが、鼓膜の奥に貯留液などがたまっている場合や耳小骨の動きが悪くなっている場合には、鼓膜が動きにくくなります。

治療

真珠腫性中耳炎の治療では、基本的に手術が行われます。

これまでは、耳の後ろを切開して顕微鏡を用いて行われていましたが、近年は耳の穴から内視鏡を入れて行う経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)という痛みの少ない低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)が普及してきました。真珠腫の進行具合に応じて、適切な手術方法を選択することが重要です。

鼓膜のへこみが軽度の初期段階の場合には、耳管の機能を改善する薬や鼓膜換気チューブを挿入し、進行を止められることもあります。

進行して落屑物がたまっている場合は、有効な薬物療法がないため、入院して多くの場合は全身麻酔下に手術を行います。

真珠腫性中耳炎の手術治療では、まず真珠腫の完全摘出が重要です。真珠腫を完全に取り除けたことを確認し、破壊された耳小骨のツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨の連鎖を軟骨や骨、人工耳小骨などを用いて再建します。

しかし、進行した真珠腫では、1回の手術で周辺の重要な器官を温存しながら真珠腫を完全に取り除くことができないケースもあります。その場合は、1回目の手術で真珠腫の摘出を行い、真珠腫が完全に取り除けたことが確認できたら2回目の手術で耳小骨の再建(連鎖再建)を行います。高齢の方や、他にも病気があり複数回手術を受けることが難しい方に対しては、1回の手術で治療が可能な手術法を選択することもあります。

予防

真珠腫性中耳炎は発症原因が明らかでないため、完全に予防することは困難です。ただし、子どもの頃に急性中耳炎滲出性中耳炎を繰り返すと、発症しやすくなるといわれているため、これらの病気にかかったときは耳鼻咽喉科を受診し、治るまで継続的に通院することを心がけましょう。また、鼻をすすることも真珠腫性中耳炎の原因の1つですので、鼻をすする癖を直すようにしましょう。

真珠腫性中耳炎は再発することが多い病気で、手術から10年後に再発することもあります。再発は真珠腫を完全に取り除けていないことによる“遺残性再発”と、耳管機能や鼻すすり癖など真珠腫の病態が改善していないために生じる“再形成再発”があります。

遺残性再発は近年内視鏡を用いた手術法が導入されたことにより、防ぐことができるようになりました。一方、再形成再発を予防するためにさまざまな取り組みがされていますが、いまだその方法は確立されていません。そのため、手術後も10年は定期的に通院し経過観察するようにしましょう。

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「真珠腫性中耳炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

真珠腫性中耳炎

Icon unfold more