
真珠腫性中耳炎の手術には、外耳道を大きく削り、広い術野を作って真珠腫の摘出を行う方法(オープン法・外耳道再建法)と、外耳道を保存したまま手術を行う方法(クローズ法)があります。このうち、患者さんの手術後の生活の質(QOL)が最もよいものは外耳道を削らずに真珠腫を取り除くクローズ法です。しかし、狭い術野で処置を行うクローズ法は非常に難易度が高く、術者に求められるスキルも高度なものになると、耳鼻咽喉科の科長・白馬伸洋先生はおっしゃいます。この記事では、死角がある中で取り残しなく真珠腫を摘出するために、白馬先生が工夫されていることについてお話しいただきました。
クローズ法は、狭い外耳道と外耳道の後にある乳突洞の骨を削開して作った空間から手術器具を入れて処置を行う手術です。そのため、術者の目からは見えない部分(死角)があり、慎重に観察しなければ真珠腫の取り残し(遺残)が生じてしまいます。
また、耳の奥には顔面を動かす神経や味覚を感じる神経などの重要な神経、体のバランスを取る三半規管や音を感じる蝸牛が存在するため、手術中にこれら神経や三半規管、蝸牛を誤って傷つけてしまうと、顔面神経麻痺や味覚障害、めまいや神経性の難聴など患者さんに大きな障害を残してしまうことになりかねません。ですから、私は複雑な症例に関しては、耳専用の先端が細く角度がつけられた「内視鏡」を併用して手術を行っています。
また、真珠腫の取り残しを防ぐために、真珠腫を分断せず連続性を持ったひとつの塊として摘出することも心掛けています。外耳道と外耳道の後にある乳突洞の骨を削開して作った空間の2か所から器具を入れ、真珠腫を包む膜を破らないよう慎重にどちらかの空間の方向へ真珠腫を押し出すように処置を行います。
また、真珠腫を分断しなければ摘出することができない症例であっても、必ず処置の前に内視鏡を入れて、真珠腫がどのように連続しているかを確認しています。
真珠腫性中耳炎の再発の原因は大きくわけて2つあります。ひとつは「遺残型」と呼ばれる真珠腫の取り残しに因るものです。もうひとつは「再形成型」と呼ばれ、内陥した鼓膜の部分とその周囲で破壊された外耳道骨の補強が不十分であることによって、その部分に再び形成されるものです。後者の再形成を防ぐためには、真珠腫摘出後に鼓膜を補強することが大切です。私が行っている補強法は、耳たぶの後部にある軟骨(耳介軟骨)を薄くスライスした「薄切軟骨」を使用する方法です。耳介軟骨には厚みがあるため、薄くせずにそのまま内陥した鼓膜と破壊された外耳道骨を補強すると、鼓膜と外耳道に凸凹が生じてしまいます。そのため、耳介軟骨を3枚程度に薄くスライスし、花びらのように重ね合わせて内陥した鼓膜と破壊された外耳道骨を的確に補っています。
しかし、耳の形や真珠腫の形状は患者さんごとに異なるため、外耳道を残す「クローズ法」ではどうしても死角ができてしまい、真珠腫の遺残が懸念される症例も存在します。このような症例に対しては、真珠腫の取り残しを防ぐため2回に手術をわける「段階的鼓室形成術」を行います。
(段階的鼓室形成術については、記事5「段階的鼓室形成術と白馬先生の目標-関東でもクローズ法手術を受けられるように」をお読みください。)
周辺で真珠腫性中耳炎の実績がある医師
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 耳鼻咽喉科 科長、人工内耳センター センター長
国立病院機構 東京医療センターー低侵襲な医療を患者さんに提供することで地域医療に貢献する
区西南部医療圏の医療を支える東京医療センターによる、前立腺がん・子宮体がん・胃がん.大腸がん・慢性中耳炎.真珠腫性中耳炎の治療をテーマにした特集です。
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国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科(聴覚・人工内耳センター) 医学部准教授
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東京科学大学 耳鼻咽喉科 医学部内講師
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東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学系専攻 認知行動医学講座 耳鼻咽喉科学 講師
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真珠腫 聴力回復は可能か?
15年前に左耳の真珠腫の手術を受けました。 耳小骨が溶けている状態で聴力を失いました。顔面麻痺も残っております。 当時聴力回復する術はないと聞き諦めておりました。 右耳は正常ですが、仕事やコミニュケーションに支障は出ております。 15年経った今でも、耳小骨の再建など、聴力を取り戻する方法はないものでしょうか。
鼻をすするのと真珠腫性中耳炎の関係について
小学生の頃から副鼻腔炎とかあって耳鼻科にはずっとお世話になっていた状態でした。 成人してからも、耳が痛くなったり、耳掃除をすると大きな塊が出たりあって、その都度近所の耳鼻科に通院して、内耳炎とか外耳炎とか言われ、耳垢?の塊をとってもらったり点耳薬や抗生剤の飲み薬で治療をしてました。 だんだん、仕事も忙しく毎回病院にいけなくなり、自分で塊をとったりしていました。今月に入って、右耳がすごく痛くて目が覚め、慌てて会社近くにある初めての耳鼻科に駆け込んだところ、予想通り急性中耳炎と言われ、抗生剤と点耳薬が4日分出されました。 痛みは治まったのですが、これまでしばらく放置していたこともあり、一応見てもらおうと思い再受診しました。 鼻はすする方かと聞かれたので、副鼻腔炎と過去に言われた事とここ数年はアレルギー性鼻炎もあるので、鼻をすすっているかもと伝えると、「真珠腫かな」と言われました。 手術したほうがいいかも、とりあえず毎週受診をしていたのですが、仕事中に右耳の違和感というか聞こえないような感じがあったので、受診し聴力検査をしたところ、大きな病院の方が良いと紹介状を書いてくれ、今週初めに総合病院の耳鼻科を受診しました。 結果はかなり大きな真珠腫があるので、早めに手術をした方が良いと言うことでした。CT等の検査は予約済です。時間をかけて大きくなったようなのですが、鼻をすするのと真珠腫の関係は何かあるんでしょうか?主治医は忙しそうでなんで真珠腫になったのかとかメカニズムを詳しく聞いてません。多少なりとも知識を持ったうえで手術の話などに備えたいので、こちらに質問させてもらいました。
最初は耳のこもりだけでした。
23日のお昼頃、左耳のこもった感じがありました。 そして25日に耳鼻咽喉科へ行き、聴力検査(学校で受けるような検査と雑音が片耳ずつ入りながらの検査)と耳管通気をしてもらいました。 結果、左耳が聞こえにくくなっているようでした。 花粉症の症状が出始めたと同時になったものですから花粉症の薬を処方されました。 しかし、耳のこもりは取れません。 そして最近は耳鳴りも出始めました。 キーンという金属と金属がぶつかり合うような音です。 お恥ずかしいお話ですが、鼻詰まりがひどく、市販の点鼻薬を何年も使用していました。 花粉症の薬を処方され、飲み始めてからは嘘のように鼻詰まりが消え、今は使用していません。 正直、点鼻薬中毒みたいになっていました。 ちょっと鼻詰まるとすぐ点鼻薬みたいな感じです。 正直今はこの薬で鼻詰まりが治まってるだけで薬切れたら鼻詰まり再開するんじゃないかと凄い不安でもあります。 この鼻詰まりの件は先生にお話できませんでした。 これを伝えた方が宜しいのか、また、耳のこもりと耳鳴りはどうしたら良いのでしょうか? まとまっていない文章で申し訳ないですがどうぞ宜しくお願いします。
耳がボコボコする
1ヶ月前から時々左耳がボコボコします。 鼓膜が脈を打つ感覚があります。 生理中、前後に起こり、5〜10分で治ります。毎日ではないです。 1ヶ月前に初めてその症状が出て、1週間ぐらいで治りましたが、今月、生理になってまた出てきました。また一週間ぐらいで治りましたが。 耳が痛い(両方)、物が詰まってるような感じがする(左耳)時もたまにあります。その症状も1日や2日で収まりますが。 また、一週間前にイヤホンをしたままくしゃみをしたところ右耳が痛くなったこともありました。(1.2日で治りました) 1年前より顎関節症発症しており、その影響もあるかもしれませんが、耳鼻科にもかかった方がよいでしょうか。 またこのような症状が出る病気としてはどのようなものがありますか。教えてください。
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