インタビュー

真珠腫性中耳炎の治療-手術の種類は大きく3つある

真珠腫性中耳炎の治療-手術の種類は大きく3つある
白馬 伸洋 先生

帝京大学医学部附属溝口病院 耳鼻咽喉科 教授/科長

白馬 伸洋 先生

この記事の最終更新は2016年03月30日です。

中耳と鼻を交通する耳管の働きが障害されると、鼓膜の一部が内陥してしまい、そこに周囲の骨を圧迫破壊する真珠腫が形成されます。真珠腫を放置すると外耳道の骨や音を伝える耳小骨が破壊されるばかりでなく、顔面神経麻痺味覚障害めまいや神経性の難聴などの症状が引き起こされることもあります。このように他の中耳炎に比べて重篤度が高い真珠腫性中耳炎の治療はどのような手段で行われるのでしょうか。帝京大学医学部附属溝口病院の白馬伸洋先生にお伺いしました。

真珠腫性中耳炎は、他の中耳炎に比べて重篤な症状を来しやすいため、真珠腫性中耳炎と診断された場合は原則として外科的手術により真珠腫を摘出することとなります。真珠腫を摘出した後は、破壊された耳小骨の連鎖を再建して音が聞こえるようにしなければなりません。中耳の病変を清掃して、耳小骨の連鎖を再建する外科的手術は「鼓室形成術」と呼ばれています。

真珠腫性中耳炎の鼓室形成術の場合、少しでも真珠腫の取り残し(遺残)があると高率で再発します。また、内陥した鼓膜の部分と破壊された外耳道の骨の補強が不十分であると、その部分に再び真珠腫が生じます(再形成)。手術では、遺残なく摘出した上で再形成を予防するための工夫をしていく必要があります。

真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術には大きく3つの方法があります。

外耳道を大きく削開し、あわせて耳の後ろの部分も削開して大きな空間を作り、広い術野を確保したうえで真珠腫を摘出する手術です。

※術野とは:術者の目から見える部分のこと。

外耳道を削らず耳の後ろの部分(乳突洞)のみを削開し、前(温存した外耳道)と後ろ(乳突洞を裂開した部分)から真珠腫を摘出する手術法です。外耳道を温存できますが、死角ができるために術者には高いスキルが求められます。

「外耳道後壁削開型」(オープン法)と同様に外耳道を削って真珠腫を摘出したあと、軟骨や筋肉の膜などを用いて外耳道を再び作る(再建する)手術です。

上記3つの手術のうち、どの手術を専門としているかは医師によって異なります。また、各手術法それぞれにメリットとデメリットがあります。現状では多くの患者さんが最初に診察を受けられた施設でそのまま手術を受けられていますが、手術法によってその後の生活の質(QOL)には大きな差が生じてしまいます。

ですから、患者さんには2か所以上の病院で説明を受けたり、複数の病院のWebサイトを見るなどし、ご自身にとって納得のいく手術法を選択したうえで、治療を受けていただきたいと感じています。

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