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耳の骨が破壊される病気、真珠腫性中耳炎の手術とは?

耳の骨が破壊される病気、真珠腫性中耳炎の手術とは?
森鼻 哲生 先生

市立東大阪医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長

森鼻 哲生 先生

目次
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“骨を溶かす巨大な耳垢”ともたとえられる真珠腫性中耳炎。進行するとさまざまな合併症のリスクがあるため、早期発見・早期治療を行うことが重要です。

今回は、市立東大阪医療センター 耳鼻咽喉科(じびいんこうか)頭頸部外科(とうけいぶげか)において部長を務める森鼻 哲生(もりはな てつお)先生に真珠腫性中耳炎の概要や手術などについてお話を伺いました。

中耳に炎症や感染を起こす慢性中耳炎の一種である真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)は、中耳炎の中でもより深刻な病気です。生まれつき真珠腫という病変がある先天性真珠腫と、中耳炎の延長として引き起こされる後天性真珠腫に分類されます。

真珠腫性中耳炎は薬で根治することができないため、基本的に手術が必要となります。また、がんとは異なり、転移したり生命に関わったりすることはほとんどありませんが、手術したとしても再発しやすい病気なのでその点は注意する必要があるでしょう。

正常な鼓膜(左)、真珠腫のある鼓膜(右)
正常な鼓膜(左)、真珠腫のある鼓膜(右)

ヒトの鼓膜の外側は皮膚(表皮)で覆われていますが、その皮膚が何らかの原因で鼓膜の内側(中耳腔)に侵入すると、内部に皮膚から出たカスがたまって塊となります。そこに細菌感染や炎症が起こることで骨を破壊する細胞が集められ、結果的に耳周囲の骨が溶かされると報告されています。

真珠腫がさらに進行した場合には、耳の奥にある骨を溶解して脳のそばまで進展します。

正常なCT画像
正常なCT画像 
真珠腫による骨の破壊が起きているCT画像
真珠腫による骨の破壊が起きているCT画像

本来は体の表面を覆っている皮膚が、中耳腔にポケット状に侵入することが発症の要因です。そのため、鼻すすり癖のある方は鼓膜が内側に引っ張られて陥凹(かんおう)(へこみ)を形成し、真珠腫を発症しやすいといわれています。また、耳に滲出液(しんしゅつえき)がたまる“滲出性中耳炎”を小児期から罹患し、治療せずに放置した場合にも鼓膜の陥凹が生じやすいため、結果的に成人してから真珠腫に進行することが多くみられます。

主な症状

細菌感染を起こすと初期では症状が乏しいですが、症状が進行すると耳漏や耳痛といった症状が現れます。また、鼓膜や耳小骨の破壊、内耳の神経に影響がおよぶことで難聴が生じます。

進行するとさまざまな合併症のリスクが

重症化すると、表情をつくる神経である顔面神経の麻痺や、三半規管の破壊によってめまい、脳への細菌感染から髄膜炎が起こるなど大変厄介な合併症を生じる恐れがあります。

耳の内部を観察

まずは、ファイバースコープ(内視鏡)を用いて患者さんの耳の中を詳細に観察し、鼓膜や外耳道(耳の穴)の骨の状態を評価します。

聴力検査

また純音聴力検査といった聴力検査を行い、難聴が伝音性(音の伝わりが障害されている)か、感音性(内耳の音を感じる感度が鈍っている)かを診断します。伝音性の難聴の場合には、手術などの治療による聴力の改善が期待できます。

CT検査は病変の進展範囲や骨の侵食具合を観察できるため、手術方法を決める手がかりとなる重要な検査です。また、MRI検査の特殊な撮像方法を用いると真珠腫の質的な診断ができます。そのほか、感染している細菌の種類を調べる細菌検査も実施します。細菌検査の結果に基づき、術前に適切な薬を用いて細菌感染を落ち着かせてから手術することで、術後の創部感染のリスクを抑えることにつなげています。

さらに可能であれば、生検(採取した組織の一部を顕微鏡で詳しく調べる検査)を行い、術前に診断の確定や、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の否定を行います。

真珠腫性中耳炎はごく初期では症状の少ない病気です。難聴、耳漏、耳痛といった症状がみられた場合には、放置せずに耳鼻咽喉科を受診ください。

真珠腫性中耳炎では、多くの耳の病気に適応となる鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)という手術方法で治療を行います。鼓室形成術は、耳の穴の中という狭い空間内を顕微鏡や内視鏡を組み合わせながら操作するという非常に細かい手術です。針のように繊細な手術器械を用いて真珠腫の病変を取り除いたり、歯科ドリルのような器械で骨を削ったりします。

病変を取り除いた後は、病気で傷んでしまった鼓膜や耳小骨を再建し、ダメージを回復させることで聴力の改善を図ります。創部については、手術で耳の中、耳の前や後ろなどを切開するのですが、なるべく創が目立たないように配慮しています。

全身麻酔で鼓室形成術の手術を行う場合は、手術時間は2~3時間ほど、入院期間は約1週間です。

手術の様子
手術の様子

真珠腫性中耳炎は、進行の度合いにより、ステージ1からステージ4に分類されます。ステージ1は初期、ステージ2は真珠腫が広範囲に進展、ステージ3は周囲の構造物が破壊されるほど重症、ステージ4はさらに進んで脳の領域に障害が及ぶ状況という意味です。

ステージ1では、1回の手術で治療を終える前提で手術を行うことが多いです。ステージ2以降では段階的鼓室形成術といって、計画的に手術を2回行うことで、病気の再発を防ぐとともに術後の聴力を可能な限り回復させることを目指します。段階的鼓室形成術では、1回目の手術では病変を取り除き感染や炎症を抑え、2回目の手術では再発がないかを確認したうえでできるだけ聞こえを改善するよう努めます。なお、ステージ3の一部やステージ4では、側頭骨の奥深く(錐体尖部)の手術操作や脳神経外科と共同での手術作業が必要となることがあります。

病気の進行度や患者さんの年齢などを考慮したうえで、手術の方法や回数を適切に選択することが大切です。

真珠腫性中耳炎は、診断されたからといって一刻を争う病気ではありません。ただし、年単位で放置すると厄介な合併症が生じます。医師に手術をすすめられたら、ご自身やご家族、お仕事の予定などをすり合わせて、なるべく2~3か月以内には手術を受けることをご検討ください。それ以上経過すると病状が進行して、手術自体が困難になったり、手術に伴う合併症の可能性が高くなったりする恐れがあります。

真珠腫性中耳炎は悪性の病気ではないのですが、手術をしても再発することがあります。そのため術後の定期的な診察や処置は必要不可欠です。外から見えない部分はCTなどを用いて再発がないか定期的にチェックする必要があるため、術後の通院も重要であることをご理解ください。

そのほか、飛行機の搭乗や水泳の可否、ご自身での耳掃除については、担当医の指示を守っていただきたいと思います。また、鼻すすり癖のある方は、なるべく控えるようにしましょう。

耳は聴覚と平衡感覚を担う器官です。加えて、耳の中には味覚や顔の動きを担う神経が走行しているため、耳の中は非常に複雑な構造になっています。真珠腫性中耳炎の手術では、病変を切除する際にそれらに触れるので、手術後には以下の症状が強く出る可能性があります。

【起こりえる主な合併症】

たいていは追加の処置や時間経過とともに落ち着きますが、まれに症状が長く続くことがあります。これらの合併症が起きないように、細心の注意を払って治療を行っております。

真珠腫性中耳炎などの中耳炎の手術では、鼓膜や耳小骨という耳の中にある細い骨を組み合わせて音の伝わりを再建します。このとき、組織接着剤を使用して接着を行います。それらを用いることでより接着度が高まるだけでなく、手術時間の短縮ができるため患者さんの侵襲(しんしゅう)(体の負担)を軽減した安全な治療につながります。

手術の前には組織接着剤の使用に関して必ず説明させていただきますのでご安心ください(組織接着剤を用いずに手術を行うことも可能です)。

鼓膜に穿孔(せんこう)(穴)を生じ耳漏や難聴といった症状が現れる慢性中耳炎、真珠腫という病変が増殖して骨を溶かすことで難聴を引き起こす真珠腫性中耳炎、耳小骨がだんだんと動きにくくなり難聴をきたす耳硬化症など、さまざまな耳の病気に対して手術を行い、日常生活の質の向上を目指します。初期の病気に対しては、局所麻酔や日帰り手術も行っています。

また、耳の診療以外にも、鼻・副鼻腔(ふくびくう)手術、口腔(こうくう)咽頭(いんとう)手術、頭頸部手術も実施しています。

いきなり「耳の手術が必要ですよ」と言われても、ご家庭やお仕事の事情で入院や通院が困難な方も多くおられます。当科では、これら患者さんのご都合や年齢などに配慮して、手術方法を選択するよう心がけています。

たとえば、真珠腫の再発のためにすでに複数回手術を受けている患者さんや、ご高齢な患者さんに対しては根治性を優先した術式を選択し、最後の手術にできるように努めます。また、お仕事の関係で術後にたびたび通院ができない方には、創部の治癒が早く、術後処置の必要が少ない術式をご提案します。

総合病院である当院では、診療時間は平日の限られた時間のみとなっていますが、その時間内には通院が難しい方もいらっしゃるでしょう。そこで、術後の対応を患者さんのご自宅や職場の近くの耳鼻咽喉科クリニックで行えるように、クリニックとの病診連携(病院と診療所の連携)を推進し、平日の夕刻や土曜日にも患者さんが通院できるように尽力しています。

真珠腫性中耳炎の手術では顔面神経付近の操作を行うことが多いため、ごくまれではありますが、手術による顔面神経への障害が報告されています。その対策の1つとして、当院では顔面神経の損傷を防ぐために顔面神経刺激、モニター装置を導入し、より安全な手術を心がけています。また、耳は脳や大血管にも近い側頭骨という非常に複雑な場所にあります。ステージの進んだ真珠腫では側頭骨の奥深くや頭蓋内の操作が必要となることもあるため、当院ではナビゲーションシステムを併用することが可能です。

顔面神経刺激、モニター装置(左)、ナビゲーションシステム(右) 
顔面神経刺激、モニター装置(左)、ナビゲーションシステム(右) 

加えて、従来の顕微鏡よる方法のほかに、内視鏡による手術も実施することで、できるだけ患者さんに与える侵襲を減らす工夫をしています。

森鼻先生

耳の中はご自分では見ることができず、多少の違和感や症状があったとしても放置してしまう方もいらっしゃるかもしれません。真珠腫性中耳炎は初期では症状に乏しいため、気付いたときには病気が進行している場合があります。ですから、気になることがあれば早めにお近くの耳鼻咽喉科クリニックを受診ください。手術が必要な場合には治療が可能な病院へと紹介されますので、耳に気になる症状がある方はまずはお近くの耳鼻咽喉科クリニックで医師の診断を受けましょう。

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  • 市立東大阪医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長

    森鼻 哲生 先生

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