しんしゅつせいちゅうじえん

滲出性中耳炎

最終更新日:
2024年12月03日
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2024/12/03
更新しました
2017/04/25
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概要

滲出性中耳炎とは、耳の奥にある“中耳”で作られた分泌液がうまく排出されずたまってしまうことによって、耳が聞こえにくくなったり、耳鳴りがしたりする病気です。子どもや高齢者に多くみられ、特に乳幼児の場合には聞こえにくさが原因で言語の獲得が遅れたり、呼びかけに反応しなかったりすることがあります。

中耳とは、耳の奥にある鼓膜、耳小骨(じしょうこつ)、鼓室からなる部位です。通常、中耳で作られた分泌液は中耳のさらに奥にある“耳管(じかん)”という管から鼻腔に抜けて排出されます。

しかし滲出性中耳炎では、何らかの理由で耳管がうまくはたらかなくなり、その結果、中耳に分泌液がたまってしまいます。中耳に分泌液がたまっていると鼓膜が振動しにくくなることから、聞こえにくさにつながります。

原因

滲出性中耳炎は、何らかの原因で耳管がふさがったり、狭くなったりすることなどによって生じます。耳管がふさがったり狭くなったりする原因としては、風邪や副鼻腔炎(びふくびくうえん)アレルギー性鼻炎などで鼻の症状が強いものなどが挙げられます。

また、子どもでは鼻の一番奥“上咽頭(じょういんとう)”にあるリンパ組織の1つである“アデノイド”が一時的に大きくなること(アデノイド増殖症)によって生じる場合があるほか、高齢者では加齢による耳管のはたらきの衰え、がんによる耳管の圧迫などが起こっている場合もあります。

症状

中耳に分泌液がたまることにより、耳が聞こえにくくなったり(難聴)、耳の中に水が入ったような、あるいは詰まったような感じ(耳閉感)がしたり、自分の声が耳の中で響くような感じ(自声強聴)を自覚したりすることがあります。そのほか、耳鳴りが生じる方もいます。

なお、滲出性中耳炎を放置していると鼓膜が薄くなり内側(中耳の構造物)との接着や癒着(ゆちゃく)が生じ、さらに聴力が低下してしまうことがあります。また、“コレステリン肉芽腫(にくげしゅ)*”“真珠腫性中耳炎**”などの発症につながる可能性もあります。

*コレステリン肉芽腫:耳の中の出血を原因に、耳の中に袋状のできもの(嚢胞<のうほう>)が生じる病気。

**真珠腫性中耳炎:慢性中耳炎の1つで、鼓膜の一部が中耳側にへこんでいくことにより、真珠のような見た目の皮膚の塊が生じる病気。

検査・診断

滲出性中耳炎が疑われる場合、まずは顕微鏡で鼓膜の状態を観察します。そのほか、気密耳鏡(きみつじきょう)検査、聴力検査、ティンパノメトリー検査、側頭骨CT検査、ファイバースコープ検査などが検討されることがあります。

気密耳鏡(ニューマチック・オトスコープ)検査

外耳道を加圧、減圧し、鼓膜の動きを観察する検査です。鼓膜の動きが低下している場合は、中耳内に分泌液などがたまっている可能性があります。

聴力検査

耳の聞こえを確認する検査です。耳から聞こえる音と骨から伝わる音がそれぞれ聞こえているかどうか調べます。

ティンパノメトリー検査

気密耳鏡検査と同様に外耳道に圧を加え、鼓膜が正しく動くかどうかや中耳の状態を確認します。気密耳鏡検査と併せて行うことでより正確な診断につなげることができます。

側頭骨CT検査

CT検査では、耳に関する器官の形態異常や腫瘍の存在などがないかを確認します。

側頭骨とは、頭蓋骨(ずがいこつ)の側面や底部を占めている骨のことをいいます。外耳道・中耳・内耳など、耳に関わる器官を保護する役割があります。

ファイバースコープ検査

必要に応じてファイバースコープで、上咽頭部分にアデノイド増殖症や腫瘍がないかを確認します。

治療

滲出性中耳炎の大部分は風邪や鼻副鼻腔炎など鼻の症状が原因であるため、これらが原因の場合、まずは薬物療法によって鼻の症状を抑え、耳や鼻のはたらきを正常な状態に戻します。それでも症状が改善しない場合には、外科的治療を検討します。

薬物療法

まずは中耳にたまった分泌物をスムーズに排出させるために粘液溶解薬(L-カルボシステイン)が処方されます。鼻副鼻腔炎を合併している場合は、マクロライド系抗菌薬を検討します。

外科的治療

薬物療法などを行っても症状が改善しない場合、鼓膜を切り開く“鼓膜切開”や、そこにチューブを挿入して中耳に分泌液がたまることを防ぐ“鼓膜換気チューブ留置”などが検討されます。

また、アデノイド増殖症などによる滲出性中耳炎でも必要に応じて手術治療が検討されます。

鼓膜切開

局所麻酔を行って、鼓膜の一部を切り開き内耳の分泌物を吸い取る治療です。鼓膜は治療から数日で自然にふさがることが一般的です。鼓膜切開は滲出性中耳炎の診断・治療の決定や短期的な症状改善に有効とされています。

鼓膜換気チューブ留置術

鼓膜を切開した部分にチューブを挿入しておくことにより、持続的に中耳にたまった分泌液を排出しやすくする治療方法です。主に鼓膜切開をしても滲出性中耳炎を繰り返す患者に対して検討され、チューブは2年を目安に入れたままにすることが一般的です。ただし、自然に抜け落ちることも少なくありません。

チューブを入れている間は詰まりなどのトラブルがないよう、定期的に医療機関を受診しましょう。

そのほかの手術治療

前述のような治療でも効果が不十分でアデノイド増殖症が原因の場合には、アデノイドの切除術も検討されます。

予防

滲出性中耳炎の大部分は鼻炎鼻副鼻腔炎など鼻の症状から生じるとされています。また、集団保育、家族に喫煙者がいることなどもリスクになり得るため、感染症予防や子どもの近くでの喫煙を控えることなどを注意するとよいでしょう。

鼻症状が長引くときなどは、早めに医療機関を受診することも大切です。

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