A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、A群レンサ球菌と呼ばれる細菌に感染することで咽頭(喉の奥の部分)や扁桃などの上気道が炎症を起こす病気です。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は日本では1年中発生し、流行期は冬から春といわれています。
また子どもから大人までさまざまな年齢の方がかかる病気ですが、好発年齢は3~15歳で子どもがかかりやすいという特徴があります。主に感染者の鼻水や唾液を鼻や口から吸い込むことによる“飛沫感染”によって感染が広がり、2~5日の潜伏期間の後発症します。この記事では、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の主な症状や考えられる合併症、診断・治療方法などについてお伝えします。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の主な症状には、突然の発熱や体のだるさ、喉の痛みなどが挙げられます。時に嘔吐が生じることもあります。鼻水や咳、結膜炎の症状が現れることは一般的ではありません。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎では、口腔内に特徴的な変化が現れることもあります。咽頭壁(喉の奥の壁)が赤く腫れ、上顎の奥の骨がない部分(軟口蓋)に赤や紫の小さな点が生じることがあるほか、舌に小さな赤い発疹が複数生じる“苺舌”が見られる場合もあります。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の合併症としては、以下のようなものが挙げられます。
細菌に感染することで炎症を起こす化膿性疾患として、肺炎や髄膜炎、敗血症などの合併症が考えられます。これらの合併症は細菌の感染が広がることによって生じ、時に命に関わることもあります。
そのほかの合併症として、リウマチ熱や急性糸球体腎炎が挙げられます。これらの合併症は主に子どもに見られますが、成人に生じることもあります。
リウマチ熱とはA群レンサ球菌への感染による炎症反応で、関節痛や心臓の炎症による胸痛、発疹などの症状が見られます。一方、急性糸球体腎炎とはA群レンサ球菌などによる感染症にかかった後に生じる一過性の腎炎で、顔や足のむくみのほか、血尿(特にコーラ色に近い尿)や高血圧などの腎臓の機能が低下した際の症状が現れることがあります。
症状などからA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の疑いがあると考えられる場合、主に2つの検査によって診断を行います。検査の結果、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎と診断された場合には、抗菌薬による治療が行われます。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の検査は、主に以下の2種類です。
一般的には迅速診断キットによる検査を第一に行い、場合によって菌の培養による検査を追加で行うことを検討します。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎では、抗菌薬の服用によって治療が行われます。具体的にはペニシリン系の抗菌薬が処方されることが一般的ですが、第一世代セフェム系の抗菌薬が用いられることもあります。
またペニシリン系の抗菌薬にアレルギーがある場合には、マクロライド系の抗菌薬の処方が検討されます。ただし、A群レンサ球菌にはマクロライド系の抗菌薬に耐性を持つものが10~20%程度存在するといわれているため、マクロライド系以外の薬剤(クリンダマイシンなど)で治療することがあります。
抗菌薬は最低でも10日間は継続して服用する必要があります。抗菌薬には症状を早期に和らげ、周囲への感染を抑える効果が期待できます。さらに長期に服用することによって、合併症の1つであるリウマチ熱の発症を予防できると考えられているためです。
抗菌薬を処方されたときは自己判断で服用を中止せず、医師や薬剤師の指示に従って薬を飲みきりましょう。
発熱があり喉が痛いなどの症状がある場合には、病院の受診を検討しましょう。子どもの場合には小児科の受診を検討するほか、内科や耳鼻咽喉科の受診を検討してもよいでしょう。小児科を受診する際には、保育園や幼稚園などでの流行状況も診断の参考になるため、周囲での流行があれば医師に伝えましょう。
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