概要
C3腎症とは、腎臓の一部で、血液中の老廃物をろ過する“糸球体”という部分に異常が生じる病気です。C3という補体*成分が長期にわたって不適切に活性化することで糸球体に異常が現れ、尿の異常が現れるだけでなく腎臓の機能が徐々に低下していき、透析が必要になることもあります。
C3腎症は国の指定難病“一次性膜性増殖性糸球体腎炎”の1つで、近年新しく分類された病気です。一次性膜性増殖性糸球体腎炎は、子どもから高齢者まで幅広い年代で発症するものの特に65歳以上の人に多く、患者数は約1,000人と推定されています。C3腎症は分類されたのが新しいこともあり日本における患者数は把握されていませんが、世界における発生頻度は年間100万人に0.2~2人ほどと推定されています。
*補体:抗体とともに病原微生物を排除するタンパク成分。
原因
C3腎症の詳しい発症原因は解明されていませんが、原因の1つはC3という補体の活性化を制御する経路の異常だといわれています。この補体の経路の異常は、補体を抑制する制御因子に対する自己抗体*や先天性(生まれつき)の遺伝子異常が関係していると考えられています。
補体は体内に異物が侵入してきたときに活性化しますが、C3腎症患者の場合は何らかの原因によって異物がないときでも補体が活性化する、もしくは異物などで補体が活性化された後に普段の状態に戻れないため、糸球体にC3が蓄積して、腎臓に異常が認められるようになります。
なお、補体系の異常がない場合でもC3腎症を発症する可能性があります。
*自己抗体:抗体は細菌やウイルスなど体内に侵入してきた異物に対して反応するが、何らかの原因で自分の体の一部に反応する抗体が現れることがあり、その場合は臓器障害を招く可能性もある。
症状
通常、血尿やタンパク尿といった症状がみられます。血尿は肉眼では見えない程度のものも多く、健康診断の尿検査で判明するケースも少なくありません。タンパク尿の程度には個人差があるものの、初診時に約半数が後述するネフローゼ症候群に至っているといわれています。診断されてから6年で35%が腎不全になるという報告もあります。
C3腎症は、慢性腎炎やネフローゼ症候群をきたすことが多いといわれています。慢性腎炎はタンパク尿や血尿が続き、ネフローゼ症候群は尿にタンパクが多く漏れることで血液中のタンパク、特にアルブミン濃度が低下して足に強いむくみが現れることが特徴です。また、血栓症をはじめとした血液凝固異常、免疫不全などの合併症を生じることもあります。
検査・診断
C3腎症の確定診断には腎生検が必要です。
腎生検とは、腎臓の組織を一部採取して顕微鏡で異常を確認する検査です。局所麻酔のもと超音波検査装置で腎臓を見ながら背中側から針を刺して組織を採取する方法と、全身麻酔のもと手術で腎臓の周囲まで切開して目で見ながら組織を採取する方法があります。
腎生検で採取した組織を蛍光抗体*で染色した際に、組織に抗体が沈着しておらず補体C3だけが付着しているか、または複数の沈着物の中でも補体C3が圧倒的に強い染色となっている場合にC3腎症と診断されます。
*蛍光抗体:蛍光色素を結合した抗体。この抗体を利用して組織中の抗体・補体成分を調べる(蛍光抗体法)。
治療
現在のところ、C3腎症に対して確立された治療法はありません。
薬物療法では、一般的にステロイドや免疫抑制薬を使用します。これらの多剤併用療法が初期治療で奏功したとする報告や血漿交換が有用だという報告があるほか、最近では補体阻害薬が有用と考えられ、欧米を中心に使用成績が報告されつつあります。
このような薬物療法に加え、腎臓の負担を軽くするために塩分やタンパク質の摂取を制限する食事療法や血圧のコントロールも欠かせません。薬物療法とともに食事療法も継続していく必要があります。
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