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POEMS症候群

概要

POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群)は形質細胞(リンパ球の一種であるB細胞が成熟してできたもの)の増殖によりVEGF(血管内皮増殖因子)が過剰に産生されることで、末梢神経障害をはじめ、胸水・腹水の貯留、皮膚の色素変化など全身に多彩な症状をもたらす疾患です。報告者であるポーランド人のCrow氏と日本人の深瀬氏の名前を取って、日本ではクロウ・深瀬症候群と呼ばれることもありますが、国際的にはPOEMS症候群と言われます。 発症年齢は40代後半に多い傾向にありますが、10〜80代までの幅広い年代での発症が報告されており、年齢に関係なく起こるといえます。また、男性のほうが女性よりも1.5倍多く罹患(りかん)しています。 従来は、平均生存期間が33か月と非常に予後不良な疾患でした。しかし、近年はサリドマイドや骨髄移植など、各種の治療法が効果的であることも判明してきています。サリドマイドは、以前は薬害を引き起こした歴史もあり臨床で使用することができませんでした。しかし、サリドマイドがPOEMS症候群に対する治療薬としての有効性も示されており、2017年7月現在、保険適応に向けての動きがみられています。 より詳細は、こちらの記事を参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/170612-006-ZP

原因

POEMS症候群は体内で形質細胞が増殖し、この形質細胞がVEGF(血管内皮増殖因子)というタンパク質を過剰に産生することで発症します。 形質細胞とは、体内に入ってきた病原体を攻撃する「免疫グロブリン」という抗体を産生するはたらきを持っており、生体にとってとても大切なはたらきを担っています。しかし、POEMS症候群においては形質細胞が異常に血液中に増えてしまい、VEGFが正常の3〜5倍、患者さんによっては100倍近くになります。異常に上昇したVEGFが、POEMS症候群二関連する種々の症状をもたらします。なお、形質細胞の増殖がVEGFを産生するメカニズムはいまだ解明されていません。 VEGF(血管内皮増殖因子)はその名の通り、血管の増殖を促し、新しい血管を作り出すはたらきを持ちます。またVEGFは血管透過性を亢進(血管壁を物質が通過しやすくなること)させるため、VEGFが増えると血液中から体内へ水分が漏れやすくなります。このはたらきが全身の毛細血管に作用することで、全身にあらゆる症状をもたらすのです。

より詳細は、こちらの記事を参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/170612-006-ZP

症状

POEMS症候群の名前は、その主要症状の頭文字をとって組み合わされた病名です。すなわち、Polyneuropathy:多発神経炎、Organomegaly:臓器腫大、Endocrinopathy:内分泌異常、M-protein:M蛋白、Skin changes:皮膚症状、です。 このなかで自覚症状として多く認められるものとしては神経炎に関連したものであり、末梢神経障害を生じます。具体的な症状としては、しびれや力が入らないなどです。発症後2年以内に病状が進行して、末梢神経障害により歩行ができなくなるといわれています。 また、胸水・腹水の多量貯留による全身の浮腫で人相までもわからなくなってしまう方もいます。末期になると、胸水・腹水が肺などの臓器を圧迫して呼吸不全となります。 さらに血液内に水分があることで保たれている血圧も、血管から水分が漏れて保つことができなくなり、低血圧からショック状態に陥ります。そして心不全腎不全など、あらゆる臓器が機能しなくなり、この状態まで進行すると命にかかわります。

より詳細は、こちらの記事を参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/170612-006-ZP

検査・診断

POEMS症候群の診断は、血液検査におけるVEGFの上昇と、血液・尿中のM蛋白の検出をもとにして行われます。形質細胞の増殖が病気の本質であり、これに関連したVEGFとM蛋白の増加を検出することになるのです。 この主要な基準に加えて、症状の項目で記述した神経症状をともなうことが診断には必須です。そのほか、臓器腫大や胸水、腹水、皮膚の異常(色素沈着など)、内分泌異常など、POEMS症候群で認めうる所見を加味しつつ最終診断がくだります。

より詳細は、こちらの記事を参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/170612-006-ZP

治療

POEMS症候群の治療方法は、ここ数十年のあいだに劇的な変化を遂げており、その治療成績も改善してきています。選択されうる治療方法としては、放射線療法、自己末梢血幹細胞移植、MP療法(ステロイドと抗がん剤であるメルファランの組み合わせ)、サリドマイドなどを挙げることができます。症状の出方や、患者さんの年齢、治療に対してどれほど耐えることができるか、などを加味して治療方法を決定します。 たとえば自己末梢血幹細胞移植は治療効果としてはとても高いものですが、とても強い治療法になります。高齢者やもともと全身状態の悪い患者さんの場合、治療そのものに耐えることができない可能性もあります。 一方、サリドマイドはこうした患者さんに対してとてもよい適応になる可能性が示されています。しかしサリドマイドには薬害を起こした負の歴史もあり、サリドマイドを内服した妊婦さんから出生した赤ちゃんに奇形が多発した時代もありました。そのため POEMS症候群に対しての治療効果が示唆されていても、保険適応下で使用することは出来ず、使用できる施設も限られていました。 この現状を改善するために2010年9月から2015年8月まで千葉大学神経内科主導の治験が行われ、サリドマイドがPOEMS症候群に有効であることが実証されました。この結果を受け、2017年7月現在、サリドマイドの保険適応下使用を目的にさらに活動が加速しているところです。

より詳細は、こちらの記事を参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/170612-007-FO

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