しんしつちゅうかくけっそんしょう

心室中隔欠損症

別名
VSD
最終更新日:
2023年06月27日
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2023/06/27
更新しました
2017/04/25
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概要

心室中隔欠損症は、心臓の左右下部に存在する心室を隔てる壁(心室中隔)に穴が開いている病気です。穴が開く位置により模様部欠損型や筋性部欠損型、流入部型、流出部型などに分けられ、このうち模様部欠損型がもっとも多く認められます。

心室中隔欠損症は先天性の病気であり、約1,000人に3人の割合で確認されます。小児の先天性疾患としてはもっとも多い病気とされ、全体の約20%を占めます。しかし、小児で発見された場合、その約半数は出生後1年以内に心室中隔の穴が自然に閉じるといわれています。一方、成人で発見される先天性疾患全体の約15%を占めており、比較的発症頻度の高い先天性疾患であるといわれています。

原因

心室中隔欠損症は、先天的な異常が原因であるといわれています。心室中隔は通常妊娠4週から8週頃に形成されますが、何らかの異常により正常に形成されず、穴が残ることにより発症するとされています。

症状

心室中隔欠損症では、“肺高血圧症”や“心拡大”、“アイゼンメンジャー症候群”などをきたし、さまざまな症状を認めます。

本来、心臓はポンプのようなはたらきをし、全身に血液を循環させる役割があります。しかし、心室中隔欠損症の場合には、心室中隔に穴が空き左心室と右心室がつながることで、本来直接血液が流れ込むことがない左心室から右心室へ血流が生じます。

大動脈へ送られる体に必要な分の血液に加えて、心室中隔を通して左心室から右心室へ血液が送られるようになるため、通常の心臓としての機能に加えて余分な血液を送る負荷が心臓にかかるようになり、その負荷に対応すべく左心房と左心室は本来よりも大きくなり、心拡大を起こすことがあります。加えて、通常より多くの血液が肺へと送られるため肺の血管の圧が上昇し、肺高血圧症を引き起こすこともあります。

穴の大きさや場所によって異なりますが、症状の程度はさまざまで、中には命に関わるケースがあります。軽度の場合には無症状のこともありますが、中等大の穴が開いている場合には生後1〜2か月程度から呼吸や脈拍が速くなったり、授乳が困難だったりするケースがあるほか、手足の冷感や寝汗などの症状を認めることがあります。重症の場合には、肺高血圧の状態をきたした結果、手足や唇などが青紫色になるチアノーゼを生じることもあります。さらに肺高血圧症が重症化すると、チアノーゼに加え胸の痛みや疲れやすさ、失神などを生じることもあります(アイゼンメンジャー症候群)。

このほか、症状の程度にかかわらず“感染性心内膜炎”を引き起こすことがあります。これは心室中隔欠損症によって血流が乱れ、心臓の壁を傷付けることで細菌が付着しやすくなるためです。それらの細菌は、歯科治療や外科的処置などによって体内に侵入し、感染性心内膜炎を発症する原因になることがあります。

検査・診断

心室中隔欠損症は、新生児検診や乳児検診で発見されることがあります。検診で心臓の雑音が聴取されるなどの異常がある場合には、心電図や胸部X線検査、心エコー検査などを行い診断します。

心室中隔欠損症の検査所見では、心電図で心室の肥大が確認されるほか、胸部X線検査では心拡大や肺血管陰影の増強などが確認されます。しかし、軽症の場合にはこのような検査を行っても異常を示さないケースもあります。いずれも心エコー検査で穴の大きさや部位、心室の圧、血流などを確認することで診断されます。

治療

すでに心臓に負荷がかかっている場合には、心不全症状の改善を目的として利尿剤等を用いた薬物療法が行われます。薬物療法によって改善がみられる場合には、時期をみて心臓カテーテル検査を行い、2歳頃までに手術が行われます。一方、薬物療法を行っても呼吸症状が改善しない場合や症状の進行が疑われる場合には、早期に手術が行われることもあります。

軽症の場合には薬物療法や手術をせず経過観察を行うこともありますが、この場合でも歯科治療や何らかの外科的処置を受ける際には感染性心内膜炎の予防のために抗生剤の内服を検討する必要があります。

手術療法

心室中隔の欠損部にパッチを当て、穴をふさぐ手術が行われます。手術では心臓を一時的に止めて治療を行うため、心臓の機能を代わって担う人工心肺という装置を用いて全身麻酔下にて行います。

人工心肺が使用できない場合や穴をふさぐことが困難な場合には、肺に流れる血液量を制限する(はい)(どう)(みゃく)(こう)(やく)(じゅつ)という手術を行うこともあります。海外では、手術ではなくカテーテルを用いて穴を塞ぐ治療を行うこともあり、将来的に日本でも可能になる可能性があります。

予防

心室中隔欠損症は先天性疾患であるため、予防することは困難です。しかし、小児発症の多くは出生後の検診で発見されるため、定期的に検診を受けることが早期発見につながります。また、小児で重症の場合には呼吸の荒さや授乳量の低下、体重減少などの異常から発見される場合があり、成人の場合にも呼吸困難やむくみ、原因不明の発熱がきっかけで診断に至るケースもあります。そのため、何らかの異常に気付いたら早めに医療機関の受診を検討するとよいでしょう。

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