概要
エボラ出血熱とは、エボラウイルスに感染することによって引き起こされる感染症の一種です。
エボラウイルスは感染者の体液や血液に触れることによって感染し、2~21日ほどの潜伏期間を経て、発熱や筋肉痛、頭痛、喉の痛みなど一般的な“風邪”のような症状を引き起こし、嘔吐や下痢などの消化器症状や発疹を伴うようになります。また、重症化すると血小板などが減少することで出血しやすい状態となり、状況によっては致死率が90%にも上るとの報告もあります。
現在のところ、日本でエボラ出血熱の患者が発生したことはありませんが、2014~2016年頃にかけて西アフリカを中心に大流行し、感染者は2万8千人にも上りました。それ以降もコンゴ民主共和国などアフリカ大陸ではアウトブレイクが起きており、多くの感染者が命を落としているのが現状です。
原因
エボラ出血熱は、“エボラウイルス”に感染することによって引き起こされる病気です。エボラウイルスはチンパンジーやゴリラ、コウモリなど、アフリカの熱帯雨林に生息している野生動物からヒトに感染するようになったと考えられています。
また、エボラ出血熱はヒトからヒトへ感染が広がっていくことも分かっています。エボラウイルスが含まれる感染者の血液や体液に触れると、皮膚の傷口や粘膜から体内へ侵入することで感染するのです。そのほか、エボラウイルスは症状が回復した後も精巣、眼球、脳や脊髄の中で生存し続けることが確認されており、性行為などで感染することもあります。
症状
エボラ出血熱は、病名のとおり“出血しやすさ”が症状として現れることもありますが、必ずしも全ての感染者でそのような症状が現れるわけではありません。
一般的には、エボラウイルスに感染後2日から21日の潜伏期間を経て、突然の発熱、強い倦怠感や脱力感、筋肉痛、頭痛などの症状が現れます。そして、全身の発疹、下痢や嘔吐が現れ、高度な脱水状態に陥ることも少なくありません。さらに重症化すると、血小板などが減少するため出血しやすい状態となり、吐血や下血といった症状や意識障害が生じて死に至るケースも多いとされています。
そのほか、エボラ出血熱は肝臓や腎臓など多臓器にも障害を引き起こすのも特徴のひとつです。
検査・診断
エボラ出血熱の診断には、血液、尿、咽頭拭い液(喉や鼻の奥の分泌液を綿棒で拭ったもの)にエボラウイルスのたんぱく質(抗原)や遺伝子が含まれているかを確認する検査、エボラウイルスに対する抗体(エボラウイルスを攻撃するたんぱく質)の有無を確認する検査が必須となります。非常に特殊な検査であるため、日本国内では国立感染症研究所でのみ検査を実施することが可能です。
また、そのほかにも炎症や貧血、脱水の程度などを調べるための血液検査、肺や肝臓、腎臓などの臓器の状態を評価するためのCT検査や超音波検査などが適宜行われます。
治療
現在のところ、エボラ出血熱を根本的に治療するための抗ウイルス薬などはありません(2020年4月時点)。そのため、治療は脱水を改善するための点滴治療、痛みを和らげるための鎮痛剤などの薬物療法、貧血に対する輸血など、それぞれの症状に合わせた対症療法が行われます。
一方、世界ではエボラウイルスを攻撃する作用を持つ薬の開発が進められており、臨床研究で効果が認められた薬剤も見つかっています。
予防
エボラ出血熱を予防するには、流行地に行かないことが大切です。また、流行地に行かざるを得ないときには感染の原因になる野生動物に触れないよう注意し、生肉や火が通り切っていない肉の摂取は避けるようにしましょう。流行地では手洗いなど基本的な感染対策を徹底し、流行地の人と必要以上に密な接触をしないようにすることも感染予防のひとつです。
そして、エボラウイルスは完治した後も数か月間にわたって精巣内で生存を続け、精液と共に排出されることがあるとの報告もあります。そのため、エボラ出血熱を発症した患者との性行為には、発症から1年以内または精液からウイルスが検出されないことを検査で確認するまではコンドームを着用することが推奨されています。
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