公益財団法人 がん研究会有明病院

公益財団法人 がん研究会有明病院で取り扱った症例

この病院で治療をした実際の症例について、医師のインタビューを元に作成しています。

  • ほかの病院では全摘をすすめられていた60歳代男性

    布部 創也 先生
    • 胃がん

    がん研有明病院で胃外科部長を務める布部創也(ぬのべそうや)先生に、胃がんの症例について伺いました。 ほかの病院では全摘をすすめられていた60歳代男性 こちらの患者さんは胃の上部にがんが生じていたのですが、比較的がんの範囲が不鮮明で、切除範囲を決めるのが難しい状態でした。ほかの医療機関では胃の全摘をすすめられたそうですが、当院ではなんとか少しでも胃を残すことができないだろうかと頭を悩ませました。幸い、内科の医師がかなり詳しく検査をしてくれたおかげで、病変の位置や広がりが分かり、これなら胃亜全摘術で胃の一部を残せると判断されたため、胃亜全摘術を行うことになりました。 術後の後遺症も少なく退院 こちらの患者さんの胃亜全摘術は腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)によって行われました。無事にがんを取りきることができたほか、胃の一部を残すことができたため、術後の後遺症も少なく元気に過ごされています。現在手術からおよそ2年が経過しますが、今のところ再発はありません。このように胃がんでは内科の正確な診断力、外科の技術が伴ってこそ、根治性があり術後の生活の質を保てる治療が行えるのだと思っています。

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  • 胃の入り口に腫瘍ができてから2年が経過した患者さん

    布部 創也 先生
    • 消化管間質腫瘍

    がん研有明病院で胃外科部長を務める布部創也(ぬのべそうや)先生に、胃がんの症例について伺いました。 胃の入り口に腫瘍ができてから2年が経過した患者さん こちらの患者さんは胃がんではなく、消化管間質腫瘍(しょうかかんかんしつしゅよう)(GIST)と呼ばれる腫瘍が胃の入り口部分にできていました。以前受診していた病院では胃の全摘をすすめられたそうなのですが、患者さん自身が手術を拒んだこともあり、当院を受診された頃には診断からおよそ2年が経過している状態でした。GISTは胃がんとは異なり、多少経過していても大きく進行することはありません。そのため、私たちは当院で手術を受けることを提案しました。 LECSによって胃を全て残して手術完了 当院ではGISTをはじめとする胃粘膜下腫瘍に対して腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)と呼ばれる手術方法を開発し、治療にあたっています。この手術方法は外科の腹腔鏡下手術と内科の内視鏡手術が組み合わさったもので、腫瘍のある部分だけを限定的に切除することができ、術後の生活の質を保って治療が行えます。こちらの患者さんの場合にも胃の全てを温存し、腫瘍だけを取り除くことができたため、術後の後遺症もほとんどなく、お元気に過ごされています。

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  • ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性

    渡邊 雅之 先生
    • 食道がん

    がん研有明病院で副院長と消化器外科部長兼食道外科部長を務める渡邊雅之(わたなべまさゆき)先生に、食道がんの症例について伺いました。 ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性 こちらの患者さんは頸胸部(けいきょうぶ)に進行した食道がんがあり、以前受診していた医療機関では手術が難しいと判断されて放射線治療を受けたといいます。しかし、治療後も腫瘍(しゅよう)が残ったままで気管にも浸潤しており、当院にお越しになったときはがんによって食道がかなり狭窄(きょうさく)し、水も飲めないような状態でした。前医で放射線治療後であり、手術治療以外に根治を目指せる治療方法がないと判断し、当院では手術治療を行うことになりました。 手術によってがんが根治し食べ物も食べられるようになった 手術治療では咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)・食道の全てを全摘し、縦隔気管孔を造設する手術を行いました。喉を温存することはできませんでしたが、がんをしっかり取り切ることができ、術後3年以上経過しますが今のところ再発はありません。また、当院を受診した当初は水も飲めないような状態でしたが、今では口から食べ物を摂取することができています。

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  • 2箇所にがんが生じ、化学放射線治療を行った患者さん

    渡邊 雅之 先生
    • 食道がん

    がん研有明病院で副院長と消化器外科部長兼食道外科部長を務める渡邊雅之(わたなべまさゆき)先生に、食道がんの症例について伺いました。 2箇所にがんが生じ、化学放射線治療を行った患者さん こちらの患者さんはがんが見つかった際、ステージIIIの頸部食道がんとステージIIの胸部食道がんを重複している状態でした。初回の治療では、患者さんご自身が喉頭の温存を希望したため、手術ではなく化学放射線治療で根治を目指すことになりました。 治療は奏功し腫瘍が消失しましたが、治療開始からおよそ1年後に胸部食道がんが再燃し、救済手術を行うことになりました。救済手術によって無事がんを切除することができたほか、幸い、頸部食道がんは完全寛解状態を維持していたため、術後も喉頭の温存は可能でした。 がん寛解後に食道気管瘻()が発生するも手術で解決 こちらの患者さんの場合、治療によってがんは取り切れたものの、治療後も頸部食道がんを治療した際の化学放射線療法による瘢痕狭窄(はんこんきょうさく)(傷あとが残り食道が狭くなること)が生じており、放っておくと食道が狭まってしまうので、内視鏡による食道の拡張術を度々行っていました。すると、治療開始から4年近くが経過した際、食道に穴が空き気管に唾液や胃液などが流れ込む“食道気管瘻”が生じてしまいます。 食道気管瘻は命に関わる合併症ですので、手術によって食道の穴を塞ぎ、患者さんの結腸を使って食道をつなぎ直すことになりました。現在は治療開始から6年が経過しますが、がんの再発もなく、口から食事ができる状態で元気に生活されています。

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  • 初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん

    文 敏景 先生
    • 肺がん

    がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん こちらの患者さんは、ほかのがんの治療後に胸部CTを撮影したところ、肺に初期のがんが発見された方です。発見時すでに90代でご高齢の方でしたが、体力もあり、肺の機能も正常だったため手術を行うことが検討されました。 低侵襲手術によって速やかに回復 こちらの患者さんの場合、完全胸腔鏡下手術で右の上葉を取り除く肺葉手術が行われました。完全胸腔鏡下手術は低侵襲(ていしんしゅう)手術の1つで、開胸手術と比較すると患者さんのかかる負担が小さいといわれています。 切除する肺の大きさは完全胸腔鏡下手術でも開胸手術でも変わりませんが、傷が小さい分術後の回復も早く、肋間筋(ろっかんきん)を温存できるので呼吸機能も保たれます。そのため、こちらの患者さんも術後は翌日から歩くことができ、手術から5日目には退院することができました。 現在、手術から5年以上が経過しましたが再発もなく、趣味のゲートボールを続けられているということです。 肺がんの治療方針を定める際は年齢だけでなく、その方の体力や呼吸機能を見て手術ができるかどうか判断することが大切です。90歳を過ぎて手術ができる方は限られますが、当院ではこの方のように体が元気な場合には、手術で治すことも検討しています。

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  • 6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん

    文 敏景 先生
    • 肺がん

    がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん こちらの患者さんは発見時すでに転移のあるステージIVの肺がんでした。そのため、最初の治療方針では手術治療の適応とはならず、薬物治療が行われることになりました。 しかし、薬物治療を6年継続したところ、手術ができる状態までがんが小さくなったため、手術治療が検討されることになりました。 薬物治療の効果で手術が可能となった こちらの患者さんの場合も、完全胸腔鏡下手術で肺の切除が行われました。低侵襲手術を行うと、開胸手術と比較して回復までの期間が短く済むため、次の治療にも早く移れるという特徴があります。こちらの患者さんの場合にも術後の経過がよく、今のところ再発がないため、経過観察を続けています。 肺がんでは薬物治療の飛躍的な進歩によって、薬物治療でがんが小さくなり、手術治療ができるようになるケースが増えてきています。このように治療によって手術ができるようになった患者さんに対する手術のことを“サルベージ手術”といいます。

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  • 患者さんの年齢はさまざま、ときに80歳代でも手術を行うことも

    髙橋 祐 先生
    • 胆管がん

    がん研有明病院で肝・胆・膵外科部長を務める高橋祐(たかはしゆう)先生に、胆管がんの症例について伺いました。 患者さんの年齢はさまざま、ときに80歳代でも手術を行うことも 当院にいらっしゃる肝門部胆管がんの患者さんの平均年齢は70歳前後ですが、若い方では40歳代の患者さん、お年を召した方では80歳代の患者さんもいらっしゃいます。手術を検討する場合、年齢で判断をするのではなく、がんの状態や体力、患者さんの希望や意志を総合して検討します。そのため、体が元気で本人が治療に対し意欲があれば、80歳代の患者さんでも手術を行うことがあります。 肝門部胆管がん患者さんの多くは、がんによって胆管が詰まることで生じる“黄疸(おうだん)”をきっかけに発見されます。そのほか、別の病気で病院を受診中に血液検査で異常が生じて、肝門部胆管がんが見つかるケースもあります。 手術治療が唯一の根治治療 肝門部胆管がんが発見された場合、可能な限り唯一の根治治療である手術治療を検討します。 肝門部胆管がんの手術治療は体に負担がかかる大手術となることが多く、術後の回復には時間がかかります。しかし、綿密な手術計画と術前管理、過不足ない手術、徹底した術後管理により、手術前と同じ生活に戻ることは十分可能です。また胆管がんは膵臓(すいぞう)がんと同様に難治がんの1つですが、リンパ節転移のない方の5年生存率は50~60%程度あり、十分根治も見込めます。当院では内科・外科・画像診断科などの各専門科がそれぞれの技術を持ち寄り、協力して治療を行っています。

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  • 多数の肝転移があった結腸がん、手術で根治を目指した30歳代男性

    福長 洋介 先生
    • 大腸がん

    がん研有明病院 消化器センター・大腸外科部長の福長 洋介(ふくなが ようすけ)先生に、大腸がんの症例について伺いました。 多数の肝転移があった結腸がん、手術で根治を目指した30歳代男性 こちらの患者さんは発見時すでに肝臓に転移があるステージIVの結腸がんでした。肝転移の個数が30~40個と非常に多かったことから、以前受診していた医療機関では手術ができないと言われ、当院を受診されたそうです。 確かに肝転移の数が多い場合、肝臓を切除しすぎてしまうと肝機能が低下し命に関わることがあるほか、仮に手術がうまく行っても再発リスクが高いなど手術をためらう理由はあります。しかし、抗がん剤による薬物治療を行うことでがんが小さくなり、肝転移の数も少なくなってきたため、当院では手術治療を行うことにしました。 残す肝臓を肥大化して肝機能を維持 抗がん剤によって多少肝転移は少なくなったものの、肝臓の切除範囲が広く命に関わることが懸念されました。そこで当院では、肝機能を維持するために残す肝臓を肥大化させる治療を併せて行いました。 こちらの患者さんの場合、肝臓の右側に多くの腫瘍(しゅよう)があり、左側は腫瘍が少ない状態だったので、1回目の手術では左側の腫瘍を取り除いたうえで右側の肝臓へ行く血管を塞栓(そくせん)して右側の肝臓を小さくし、左側の肝臓を大きくする処置を実行。左側の肝臓がある程度大きくなったところで2回目の手術を行い、腫瘍が多くあった右側の肝臓を取り除きました。その後5年以上経過しましたが再発はありません。 このように、大腸がんでは他臓器への転移があっても根治が期待できる場合があります。

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  • 放射線治療の結果、手術可能になった60歳代男性

    福長 洋介 先生
    • 大腸がん

    がん研有明病院 消化器センター・大腸外科部長の福長 洋介(ふくなが ようすけ)先生に、大腸がんの症例について伺いました。 放射線治療の結果、手術可能になった60歳代男性 こちらの患者さんは直腸がんで、腫瘍が大きく膀胱への浸潤(しんじゅん)(がんが周りの器官に広がっていくこと)がひどい状態でした。貧血や低タンパクなど体力も大きく落ちており、このような全身状態では手術治療はもちろん、抗がん剤治療を行うことすら困難です。以前受診していた医療機関では緩和ケアで様子を見ることをすすめられたとのことでした。 当院でも、この状態で手術を行うことは難しいと考えられましたが、まずはがんによる貧血や低タンパクを改善するため、入院で放射線治療を行うことにしました。 放射線治療で全身状態が改善し、手術が可能に 放射線治療を行ったところ、腫瘍が縮小したことにより貧血や低タンパクが改善し、全身状態がよくなってきました。そこで当院では、放射線治療から1か月経過し体力が回復した後、手術を行うことになりました。 前述のとおり、膀胱への浸潤がひどい状態だったので直腸・膀胱・前立腺を全て摘出する“骨盤内臓全摘術”を行い、排泄のための人工肛門(じんこうこうもん)・人工膀胱の2つのストーマを造設しました。現在手術から5年ほど経過しましたが、再発なく元気に生活していらっしゃいます。 放射線治療後の手術は組織が脆(もろ)く手術の難易度が上がりやすいという特徴があります。しかし当院では、さまざまな技術やチームワークを生かして、このような難しい手術にも挑戦しています。

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