吐き気・嘔吐:医師が考える原因と対処法|症状辞典

吐き気・嘔吐

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 激しい嘔吐があり、水分を摂ることもできない
  • 吐いたものに血が混じっている
  • 強い腹痛・頭痛、まひ、しびれ、ふらつきなどがある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 嘔吐を繰り返している
  • 嘔吐までは至らないが、吐き気が続いている
  • 発熱、下痢などの症状がある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 客員教授

藤城 光弘 先生【監修】

名古屋大学医学部附属病院 消化器内科 医員

飛田 恵美子 先生【監修】

吐き気・嘔吐とは、気持ち悪くなり吐きそう、もしくは実際に吐いてしまうことを指します。急に吐き気や嘔吐の症状が出た場合は、何らかの病気のサインかもしれません。

  • 昨日から気持ち悪くて熱もある
  • 吐くほどではないけど、ここのところ胃のムカムカが取れない
  • 最近めまいに伴って吐き気がする……

このような症状の原因は何なのでしょうか? 考えられる病気や受診のポイント、日常生活で気をつける注意点まで詳しくご紹介していきます。

吐き気・嘔吐は何らかの病気による症状のひとつとして現れている場合があります。

突然の吐き気・嘔吐の原因となる主な病気には、以下のようなものがあります。

急性胃腸炎

急性胃腸炎ウイルスや細菌の感染が原因となって起こることが多い病気です。ウイルスではノロウイルスやロタウイルス、細菌では黄色ブドウ球菌や病原性大腸菌などが有名です。

周囲にかかっている人がいる、生ものや加熱が不十分なものを食べた、衛生環境が整っていない地域への海外旅行から帰ってきたばかりなどの場合は注意が必要です。

主な症状は吐き気・嘔吐のほかに下痢、腹痛、発熱などですが、水分が取れない、症状が強いような場合はなるべく早く病院を受診しましょう。

急性胃腸炎
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急性胆嚢炎・胆石発作

急性や胆石発作などでも急な吐き気・嘔吐が起こる場合があります。比較的頻度の高い病気で、吐き気・嘔吐のほかに右わき腹やみぞおちの鈍い痛み、発熱などの症状がみられることが多いとされています。

また、これらの症状は食後1~2時間ほど現れ、その後治まってしまう場合があるため、病院に行かずに我慢してしまう方も多いともいわれています。繰り返している場合には一度病院で相談しましょう。

急性虫垂炎(盲腸)

急性虫垂炎、いわゆる盲腸でも吐き気・嘔吐の症状が出ることがあります。初期は吐き気や腹部の違和感、みぞおちの痛みなどの症状として現れることが多いといわれていますが、徐々に右下腹部の痛みや下痢などの症状が出るようになります。これらの症状があれば早めに病院を受診しましょう。

虫垂炎
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腸閉塞

さまざまな原因で腸の一部の通りが悪くなる腸閉塞では、吐き気のほかにお腹が張る、便秘、腹痛などの症状が出る場合があります。過去にお腹の手術をしたことがある人は腸閉塞を起こす危険が高く、また大腸がんが原因となることもあるため、症状が当てはまる場合は早めに病院を受診しましょう。

脳や神経の病気

吐き気・嘔吐が、脳梗塞脳出血や脳炎・髄膜炎など脳や神経の病気の症状として現れている可能性もあります。脳梗塞脳出血の場合にはしびれや麻痺、頭痛、ろれつが回らないなどの症状、脳炎・髄膜炎などの場合には高熱などの症状が見られます。

狭心症・心筋梗塞

狭心症心筋梗塞は、心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈が動脈硬化などにより細くなったり詰まったりすることで起こる病気です。典型的には胸が締め付けられるような痛みがみられますが、吐き気・嘔吐を伴う場合もあります。

狭心症
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心筋梗塞
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薬によるもの

一部の薬には、副作用として吐き気・嘔吐が出やすいものがあります。普段飲み慣れていない薬を飲む場合は注意が必要です。もし症状が出た場合には、薬剤師か処方した医師へ相談するようにしましょう。

糖尿病性ケトアシドーシス

糖尿病でインスリンが不足し、エネルギーを作るために脂肪が分解されて血液が酸性に傾いた状態を糖尿病性ケトアシドーシスと呼びます。口の渇き、意識がぼーっとするなどさまざまな症状を引き起こしますが、吐き気や腹痛を伴うこともあります。

長く続く吐き気・嘔吐の原因となる病気には、以下のようなものがあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

ピロリ菌や痛み止めの使い過ぎなどが原因となり、胃潰瘍十二指腸潰瘍が起こることがあります。吐き気のほかに胃もたれ、胸やけ、みぞおちの痛みなどの症状が代表的です。

胃潰瘍
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十二指腸潰瘍
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胃がん

胃がんは胃にできる悪性腫瘍です。胃がんのリスクを上昇させる原因として、ピロリ菌に感染していること、喫煙、野菜や果物の摂取不足などがあるといわれています。自覚症状として、みぞおちの痛みや不快感、胸やけや食欲低下が多くの方にみられます。

胃がん
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めまいを伴う耳の病気

耳が原因で、発作的なめまいや吐き気が繰り返し起こる病気にメニエール病良性発作性頭位めまい症などがあります。吐き気に伴ってめまいがある場合には、一度耳鼻科の受診を考えてみてよいでしょう。

メニエール病
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良性発作性頭位めまい症
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うつ病

うつ病は気分が落ち込むことや、気力が出ない状態が続き、体そのものに不調を感じることも多い病気です。体の症状のひとつとして吐き気・嘔吐が現れる場合があるといわれています。

うつ病
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病院に行く目安となるのは、吐き気・嘔吐以外に強い腹痛などの症状がある場合や、食事はおろか水分も十分に取れない状況のときです。こういった状況の場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

吐き気や嘔吐が数日から1週間以上続く、繰り返すなど、なかなかよくならない場合も一度病院で相談しましょう。原因によって専門科目は分かれますが、まずは内科や消化器内科で相談するとよいでしょう。

また、吐き気・嘔吐は消化器以外の病気でも起こりうる症状です。突然の発症で、頭痛や胸の痛みなどほかの症状を伴う場合には、脳卒中など急を要する病気である可能性があります。このような場合は早急に医療機関を受診しましょう。

受診の際のポイントとしては、いつから起きている症状なのか、1日何回程度の吐き気・嘔吐があるのか、ほかの症状はあるかなどを医師に伝えることです。これらの情報は原因を探る手がかりになります。

乗り物酔いを起こしたとき、吐き気・嘔吐はよくある症状です。乗り物が動いているのに本やスマホなど動かないものをじっと見るなど、目からの情報と体に伝わる動きの情報が一致しないことが原因で起こります。

初期には頭痛やあくびが見られ、その後吐き気・嘔吐が現れることが多いといわれています。

乗り物酔いになってしまったら・ならないためには

乗り物酔いの症状が出たら乗り物をいったん降りることが望ましいですが、難しければ横向きに寝たり、衣服を緩めたりするとよいでしょう。乗り物に乗る前日は、よく睡眠を取り、当日は食べ過ぎ・飲みすぎを控えることが大切です。乗り物に乗るときは窓側や前方など視覚的な情報がよく入る座席に座り、景色を眺めたり窓を開けたりして外の空気を吸うようにするとよいでしょう。

食べ過ぎによって胃に負担がかかると、胃のはたらきが鈍くなり、吐き気や胃のむかつきを感じることがあります。またお酒を飲みすぎると、アルコールが体内でうまく分解されずに気分が悪くなることがあります。

食べ過ぎで吐き気・嘔吐が現れたら

もし食べ過ぎて吐き気・嘔吐の症状が現れたら、安静にしてしばらくの間休息を取るといいでしょう。激しい運動は控え、体調が戻ってきたら歩くなどの軽い運動を徐々に開始して消化のはたらきを助けるといいでしょう。

お酒の飲みすぎで吐き気・嘔吐が現れたら

お酒を飲みすぎて吐き気・嘔吐の症状が現れたら、安静にして衣服を緩める、水分を取るなどの対応をして様子を見ましょう。一度に大量のアルコールを摂取した場合は急性アルコール中毒になる危険性もありますので、お酒の飲みすぎには十分注意しましょう。

妊娠したことにより、吐き気・嘔吐の症状が出る場合があります。いわゆる“つわり”の症状です。

妊娠かなと思ったら

妊活中など心当たりのある方は、妊娠検査薬の使用もしくは産婦人科を受診しましょう。もし妊娠している場合には、妊娠中でも飲める薬を服用することが望ましいので、吐き気があるからといって安易に市販薬などを使わないようにしましょう。

症状がよくならないときには、一度病院で相談してみましょう。吐き気・嘔吐は自然とよくなる場合もありますが、繰り返す場合やよくならないときには何らかの病気が隠れている可能性もあります。

 

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。