吐血:医師が気にする危ない症状|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
植田救急クリニック
加藤 之紀 先生【監修】
吐血とは、食道や胃・十二指腸から出血した血液を吐くことを指します。舌を噛んで血が出た場合や鼻血を飲み込んで口から血が出た場合などは吐血には含めません。
このような場合吐血の可能性があります。吐血は食道や胃、十二指腸内の粘膜や血管が傷つき出血して起こるもので、ふつう何らかの病気の一症状として現れます。そのため、本当に吐血であれば早急な受診がすすめられます。
吐血の症状が現れる病気には、大きく分けて食道の病気と胃や十二指腸の病気があります。
食道炎は、食道の粘膜に炎症を起こした状態のことをいいます。食道炎の症状としては、吐血のほかに胸やけや胸部の違和感、しゃっくりなどが現れる場合もあります。
食道静脈瘤は、食道の粘膜下にある静脈に瘤ができるもので、肝臓に病気がある方に起こることの多い病気です。瘤があるだけでは症状は現れません。しかし、進行して瘤が破裂すると大量に出血・吐血する場合があります。もし、口から血液そのものを大量に吐いたような場合にはすぐに救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
食道がんは、食道の粘膜の表面にできる悪性腫瘍です。がんが小さいうちは目立った自覚症状がほとんどありません。がんが大きくなってくると、食べ物がつかえる感じや飲食時の違和感、声枯れ、咳などの症状が現れることがあります。
マロリー・ワイス症候群は、食道と胃の境目が縦方向に裂けて出血した状態のことをいいます。主な原因は嘔吐と考えられ、嘔吐を繰り返すことで食道に大きな圧力が加わることで発症します。
胃潰瘍は、現在ではヘリコパクター・ピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が主な原因と考えられています。
自覚症状でもっとも多いのがみぞおちの痛みで、空腹時や食後によくみられます。胃もたれや胸焼け、吐き気、嘔吐、食欲不振などの症状が現れる場合もあります。
胃潰瘍は空腹時や食後にみぞおちの痛みが現れることが多いのに対して、十二指腸潰瘍では空腹時に右上腹部の痛みや背中の痛みが多くみられます。他の症状としては胃潰瘍と似ているものが多く、胸焼け、吐き気、嘔吐、食欲不振などが伴うこともあります。
胃静脈瘤は、胃壁内を流れる静脈に瘤ができる病気です。瘤があるだけでは症状は現れず、瘤が破裂した時に大量出血、大量吐血となって現れます。食道静脈瘤同様、血液そのものを大量に吐いたような場合はすぐに救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
胃がんは胃に発生する悪性腫瘍で、喫煙や食生活(塩分の過剰摂取や野菜・果実の摂取不足)、ヘリコバクター・ピロリ菌などが原因になるといわれています。
初期の段階で特徴的な症状が現れることは少なく、進行しても無症状の場合もあります。自覚症状がある場合には、みぞおちの痛みや不快感、食欲低下、体重減少などが見られる事が多いといわれています。
吐血は、食道や胃・十二指腸からの出血によって起こることから、これらの部位の病気を示すサインと捉えることができます。そのため、本当に吐血があったなら夜間休日を問わず、すぐに消化器内科または救急外来を受診することが勧められます。
受診した際には、いつ吐血があったのか、どのくらいの出血量だったのかなどを医師に伝えましょう。吐いたものの色などは口頭で伝わりにくい事も多いため、スマートフォンなどで写真を残しておくのもよいでしょう。