胃もたれ:医師が考える原因と対処法|症状辞典
埼玉医科大学病院消化管内科 診療部長 教授
今枝 博之 先生【監修】
胃もたれは、食べ過ぎ・飲み過ぎなどにより胃腸が正常に消化活動できず、胃が重く感じたり、気持ち悪さを覚えたりする症状のことを指します。しかし、症状の出方や症状が現れたときの状況によっては注意が必要なこともあります。
このような症状がある場合、考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。
胃もたれには上記で説明したような消化器系等の病気が原因となっていることがありますが、一方、食事のパターンや嗜好品など日々の生活習慣が引き金となることもあります。
食べ過ぎると多量の食べ物を十分消化できず、胃もたれが起こることがあります。
食べ過ぎてしまったときは、食後30分ほどゆっくり休みましょう。苦しいからといって急に体を動かすと、消化に必要な血液が内臓に十分行き渡りません。普段から消化のよいものを適量食べる習慣を身につけるようにしましょう。
飲み過ぎは胃粘膜を荒らし、胃もたれを引き起こしてしまいます。
飲み過ぎによる胃もたれがつらいときは、食べ過ぎたときと同様、まずは胃を休ませましょう。多量のアルコールで荒れた胃の粘膜を労わるためにも、食事はおかゆなどの消化のよいものを食べるようにするとよいでしょう。
油分は消化しにくいため、多量に摂取すると消化に時間がかかり、胃もたれを感じることがあります。
脂っこい食事を食べ過ぎて胃もたれを感じた時には無理をせず、胃を休ませましょう。普段から脂肪分の多い食事はできるだけ控えるのが理想です。
喫煙は胃粘膜の毛細血管の酸素不足を招き、胃もたれの原因になります。
タバコは胃だけではなく、体全身の不調を引き起こしますので禁煙が好ましいでしょう。
自分の意思だけで止めることが難しい場合、最近では禁煙薬による効果的な方法があるため、禁煙外来を受診してみるのもよいでしょう。
日常生活でできる対処法を試してみても症状がよくならない場合、一度病院で相談してみましょう。
胃もたれは病気が原因となって起こっている場合があります。
胃もたれの原因となる食道の病気には、主に以下のようなものがあります。
逆流性食道炎は胃酸が逆流して食道に炎症を起こしてしまう病気です。通常の胃もたれのような症状のほか、口の中に酸っぱさを感じたり、げっぷや胸やけ、飲み込みにくさ、ときにはみぞおちなどに痛みが出たりすることがあります。
胃と食道の境目にある食道裂孔とよばれる穴がゆるむために、胃の上部が飛び出してしまうことで、食べた物が食道へ逆流してしまう病気です。食べ物が逆流するという面では逆流性食道炎と共通しているので、症状もげっぷや胸痛、飲み込みにくさなど、現れる症状も似ています。
腹部の圧力が高くなる肥満や喘息、加齢による食道裂孔のゆるみなどが発症の引き金となることがありますが、まだはっきりとした原因は判明していません。
食道アカラシアは、食べ物を食道から胃へ流すはたらきをする部分が絶えず収縮して正常に機能しないため、食べ物が食道にたまってしまう病気です。胃もたれ・胸やけのほか、食べ物が飲み込みにくくなったり、食べ物の逆流により咳が出たりすることがあります。
胃もたれの原因となる胃の病気には、主に以下のようなものがあります。
胃や十二指腸の内側の壁が胃酸によってダメージを受け、潰瘍という傷ができてしまう病気です。胃に消化性潰瘍ができると空腹時に多く胃痛が発生し、食事をしたりすると一時的に痛みが収まる場合があります。しかし、食後に胃痛が現れる場合もあるため注意が必要です。また、胃の潰瘍では胃痛以外にも吐き気や嘔吐が起きてしまうこともあります。
十二指腸の潰瘍の場合は午前の時間帯や空腹時に痛み出すパターンがみられますが、これも胃の潰瘍と同様に食事などで痛みが軽減することがあります。
胃炎は胃の内側の粘膜が炎症を起こし、胃痛や吐き気が出てしまう病気です。突然症状が発生する急性のもとの、症状が長引く慢性のものがあり、空腹時などに胃痛が頻発します。
胃がんは胃の粘膜の細胞ががん細胞になり、増殖してしまう病気です。主な症状として胃の不快感や胸やけ、吐き気などが挙げられますが、体重が減ったり、黒っぽい色の便が見られたりすることもあります。発症の原因の多くはピロリ菌感染で、喫煙や食塩の取りすぎなどとの関係も指摘されています。
胃がんはかなり進行していても自覚症状があまりないことがありますので、定期的に検診やピロリ菌のチェックを受け、早期発見につなげることが大切です。
機能性ディスペプシアとは内視鏡などの検査をしても何も異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれや胃痛の症状が続く病気です。胃の不快感のほかにも、すぐお腹がいっぱいになって十分な量の食事がとれなくなる、みぞおちが痛むなどの症状もみられます。
胃もたれがずっと続きよくならない、悪化するような場合には、内科や消化器科へ受診しましょう。特に気持ち悪さで食事ができない、食欲が大幅に低下している、ダイエットをしていないのに体重が減ったなどの症状がみられる場合は早めに受診しましょう。
また、受診の際には医師に不快感や痛みがある場所や程度、時間など、症状についてなるべく詳しく伝えるようにしましょう。生活習慣やストレスについて心当たりがある方はその点についても話してみるとよいでしょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。