背中が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

背中が痛い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 突然起こった激しい痛みがある
  • 胸の痛み、息苦しさ、冷や汗、意識が薄れるなどの症状がある
  • 高熱がある
  • 背中や腰を強くぶつけたなどきっかけがはっきりしている
  • 時間とともに痛みが移動する

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 日常生活に支障がない程度だが、痛みが続いている
  • 発熱がある
  • じっとしていても痛みがある
  • 体重が減少する

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 筋肉痛などであることがわかっており、時間の経過とともによくなる

国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生【監修】

突然起きる背中の痛み、こんな状況に遭遇したことはありませんか。

  • 体を動かした瞬間、急に背中が痛くて動けなくなった
  • 背中や腰が痛いし、なんだか寒気もする
  • 背中や腰の痛みに加えて、足のしびれがある

など、背中の痛みにも色々あります。背中の痛みと関係のある病気には、どのようなものがあるのでしょうか。

背中の痛みと関係のある病気には、内臓に関係しているもの、骨や関節に関係しているもの、それ以外のものなどがあります。

背中の痛みを起こすことのある内臓の病気には以下のようなものがあります。いずれも、症状が強い場合には急を要することが多いのが特徴です。

心臓の病気

心臓の病気でも背中が痛むように感じることがあります。たとえば、心筋梗塞狭心症大動脈解離肺塞栓症などです。激しい胸の痛みや息苦しさなどを伴うことが多く、肩や首など他部位に痛みが出ることもあります。特に、心臓から背中への血管が裂ける大動脈解離では安静にしていても引き裂かれるような強い痛みが生じ、痛みが移動するという特徴があります。いずれも急を要する病気です。症状が激しいときには救急要請を含めて検討しましょう。

膵炎・胆嚢炎など

膵炎は膵臓から分泌される膵液によって、膵臓周囲や膵臓自体に炎症が起きる病気です。主な症状は、みぞおちや背中の痛みです。多量に飲酒する人、高脂血症の人などはかかるリスクが高いといわれています。

胆嚢炎は、何らかの原因で胆嚢に炎症が起きる病気です。主な症状は右上腹部の鈍い痛みですが、吐き気・嘔吐、背中の痛みが現れることもあります。膵炎・胆嚢炎共に早期の治療が必要な病気のため、激しい痛みがある場合には早期の受診を検討しましょう。

尿路結石

尿路結石とは、尿管などの尿の通り道に石ができる病気です。年代としては30~50代、女性よりも男性に多い傾向にあります。尿路結石の症状は石が詰まった場所によって異なりますが、背中や腰回りの痛みは比較的多い症状です。背中や脇腹に激しい痛みを伴うこともあるため、そのような場合には早めに受診を検討しましょう。

腎盂腎炎

腎盂腎炎とは、尿路結石膀胱炎などが原因で腎盂(腎臓の一部)に細菌などが感染し炎症を起こす病気です。主な症状は、寒気、発熱、背中や腰の痛みですが、頻尿や排尿時の痛み、嘔吐などが現れることもあります。早期の治療を必要とする病気のため、早めに受診を検討しましょう。

椎間板ヘルニア

背骨は椎体という骨がいくつも連なってできていますが、この骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が潰れたり、変形して飛び出したりした状態が椎間板ヘルニアです。

背骨のどこでヘルニアが起こっているのかにもよりますが、背中や腰の痛み、手や足のしびれなどが主な症状です。尿や便が出にくい、両足に力が入らないときなどは注意が必要です。

圧迫骨折

圧迫骨折とは、骨が負担に耐え切れずに潰れてしまう骨折で、主に背骨で起こります。特に骨がもろくなっている高齢者で多い骨折で、少ししりもちをついただけなのにずっと背中や腰の痛みが続くなどの場合、実は骨折していたなども珍しくありません。

急性腰痛症(ぎっくり腰)

急性腰痛症は何らかの動作をきっかけに突然腰が痛くなる病気で、ぎっくり腰とも呼ばれます。ただし、まず、上記のようなほかの病気やけががないか検査する必要があります。運動習慣のない人や、重いものを持ち上げる機会の多い人に起こりやすいとされています。

主な症状は腰や背中を中心とした痛みです。痛みの程度には幅がありますが、ひどい場合には動けなくなることもあります。

皮膚の病気が原因となって背中の痛みを感じることもあります。

帯状疱疹

帯状疱疹とは、過去に水ぼうそうにかかったことがある人の体内に潜んでいた水ぼうそうウイルスが、何らかのきっかけで再び活性化した状態です。

水ぼうそうとは症状が少し異なり、皮膚の一部分にピリピリとした痛みを感じ、水疱を生じます。背中から脇腹にかけては帯状疱疹が比較的できやすい範囲のため、注意が必要です。基本的には体の右側のみ・左側のみなど、片方に横方向に広がることが特徴で、両側や上下方向に広がることはあまりありません。

激しい痛みがある場合にはなるべく早期に受診の検討をしましょう。痛みが長引く場合や繰り返す場合、発熱などほかの症状がある場合にも早めの受診を検討しましょう。特に“両足が動きにくい”、“痛みの位置が移動する”、“尿や便が勝手に漏れてしまったり、出にくくなったりしている”という場合には手術が必要なことがあります。そのため、救急要請を含めて検討しましょう。

受診先は原因によって異なりますが、痛みのほかに手足のしびれがある、転んだ・重いものを持ち上げようとしたなどのはっきりしたきっかけのある場合には整形外科が適しています。また、背中の皮膚に水疱ができている場合には皮膚科を受診を検討しましょう。

それ以外の場合や、発熱などの体の症状を伴う場合、もしくは自分ではよくきっかけが分からないような場合には、まず近くの内科やかかりつけの医療機関で相談するのがよいでしょう。

受診の際には、いつから・きっかけとなる出来事があったかどうか、背中の痛みのほかに症状があるかどうかなど、できるだけ詳しく伝えるようにしましょう。

日常生活上の習慣などが原因で背中が痛むこともあります。

長時間同じ姿勢をとり続けると筋肉が緊張してこるため、背中に痛みを感じやすくなることがあります。

長時間同じ姿勢が続いたら

ストレッチなどの軽い運動をして、こりをほぐしましょう。両手を上にあげて背筋をのばしたり、肩を大きく回したりするだけでも効果的です。また、入浴などで血流をよくすることも、背中のこり解消に役立ちます。

急な運動により背中の筋肉を傷めたり筋肉が疲労したりすると、背中に痛みを感じることがあります。

体を動かす前には

体を動かす前にはストレッチングなどでウォーミングアップをしましょう。

まずは、全身の筋肉をのばしてほぐします。足は肩幅よりやや広め、両手は組んで頭の上にあげ、手のひらを上にむけてのびをするように全身をのばしましょう。続いて背中のストレッチングです。全身のストレッチングが終わったら、ひざを軽く曲げます。そのまま腰から背中を丸めながら両手を前に押し出しましょう。

このほか、軽く散歩やジョギングをして体を温めておくのも効果的です。難しい場合には、その場で足踏みをしてもよいでしょう。

自分でできる対策をしても背中の痛みがよくならない場合には、一度受診しましょう。思いもよらない原因で背中の痛みが出ている可能性もあります。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。