愛知県犬山市にあるあいちせぼね病院は、整形外科のなかでも背骨(脊椎疾患)を専門に診療を行う病院です。迅速な検査、診断と体への負担が少ない手術が強みの同院では、プロ・アマ問わずスポーツ選手など、特に体が資本になる方からも幅広く支持されています。
そんな同院が現在提供している医療や強みについて、院長の伊藤 全哉先生にお話を伺いました。
当院は、1997年に外来診療メインの“伊藤整形・内科クリニック”として開院しました。その後、2002年にリハビリセンターを建設し、2006年に“伊藤整形・内科あいち腰痛オペクリニック”へ名称を変更(現在は“あいちスポーツ・人工関節クリニック”)、19床の病床と低侵襲(体への負担が少ない)専用の手術室を3室設置しました。その頃は小さな傷で早く退院できる内視鏡治療が普及し始めていたので、先代の院長が海外に赴いて内視鏡治療を学び、世界で活用されている当時の最新機器を多数導入しました。手術は自費(保険適用外)診療のみの実施でしたが、数年後には多数の手術件数を誇る病院として評価されるようになりました。この実績によって、患者さんが自費診療でも低侵襲な手術を望んでいることが証明されたのです。
その後、さらなる治療の拡大を目指し、2017年4月に日本では珍しい病院としては初めての脊椎疾患を専門とする“あいちせぼね病院”を開院しました。自費診療と保険診療の両方を提供できるようになり、患者さんはさらに多くの選択肢から治療を選ぶことができるようになりました。背骨専門という病院は国内でも珍しく、近年はさらに患者さんが増えています。
当院では、CT やMRIといった複数の検査機器に加え手術室3室を備えており、さらに背骨を専門とする医師が9名在籍していることから(2024年8月時点)、迅速かつ的確な診断・治療が可能となっています。通常、MRI検査だけで1か月待ちといった病院も珍しくありませんが、当院では基本的に初診でMRIやCT検査を実施し、その日のうちに診断できるよう努めています。
さらに、診断と同時に手術の日程を決定しているので、初診から2週間程度で手術の実施まで可能です。当院に来られる患者さんの約半数は東海地方以外の方で、国内のみならず海外の方もいらっしゃいます。1日でも早く痛みを取りたい患者さんに寄り添い、新しい医療機器を導入したりオリジナル機器を企業と共同開発したりしながら、迅速な治療が提供できる体制を整えています。
当院では、最小侵襲手術(MIS)を重視し、できるだけ小さな傷で手術を行っています。当院での主な対象疾患は、ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折の三大背骨疾患です。これらの疾患に対しては、MISを用いた小さな傷での手術を基本とし、患者さんの負担を最小限にして治療を進めています。
特にヘルニアの治療においては、全国で主流になりつつある7ミリの内視鏡からさらに進化した3ミリの内視鏡を用いて、最小限の傷での手術を行っています。この方法は局所麻酔で日帰り可能で、患者さんにとって負担が少なく、手術後すぐに日常生活に戻れるといったメリットがあります。
また、当院の強みは常に新しい治療法を取り入れている点で、他院では難しいとされる症例でも対応可能なところです。他院での治療に限界を感じて、当院にセカンドオピニオンを求めて訪れる患者さんも多くいらっしゃいます。
当院では、新しい医療機器を導入して日々進化した手術を提供しています。金属を用いた最小侵襲脊椎手術(MISt)には、副院長の伊藤 研悠医師が特に実績を重ねています。当院のMISt手術では“O-arm(オーアーム)”という機器を活用しており、これは手術中にCT画像をリアルタイムで取得し、ナビゲーションシステムにより正確にネジを挿入できるようにする機械です。O-armを使用することで従来の目視による手術よりも正確に骨の位置を確認しながら手術を行うことができます。データに基づいた正確な治療により、傷を最小限に抑えられ、より安全で信頼性の高い手術を目指すことが可能です。
当院では最小侵襲手術(MIS)を全国、全世界に広めるための活動も行っています。私自身も月に数回、国際的な会議や講演に参加しており、最新の治療技術を国内外で広めていますが、副院長の柴山 元英医師もMISの指導者として著名です。柴山医師は1990年代の終わりからMISを導入し、この分野の先駆者としてMISの技術と知識を広めてきました。国内外から当院へ見学に訪れる医師も多く、MISの技術を学ぶ機会を提供しています。
また当院では、毎年3月に“MISSサミット”を開催し、国内・海外から60~70名の医師を招いて最新の治療法を発表しています。このイベントは第一線で活躍する医師たちが集まり、最新技術について情報交換を行うものです。このサミットを通じて、当院は世界の先端を行く知見を取り入れ、医療の向上に努めています。
当院では、患者さんが求める治療法が保険診療では提供できない場合の選択肢として、自費診療を行っています。自費診療を導入している理由は“患者さんのニーズ”に応えるためです。患者さんのニーズとして “痛みの早期解消”がもっとも多く、その次に“傷が小さいこと”や“費用面”、“技術力”を求める傾向があります。当院では、迅速に効果的な治療を受けたいと考える患者さんのニーズに寄り添い、多数の選択肢を提案できるようにしています。
早期に快適な生活を取り戻せるよう、痛みを我慢せずぜひ早めに来院していただきたいと思います。当院では、診断から治療までをできるだけ少ない来院回数で完結するように努め、充実した診療体制を整えています。当院の手術は基本的に低侵襲でリハビリテーションの期間が短く、迅速な回復が期待できることが特徴です。土曜日に手術を受けて日曜日に帰宅し、月曜日から通常の生活に戻るといったことも可能です。
また、当院にいらっしゃる患者さんのうち、実際に手術を受けるのは約1割程度です。残りの9割の患者さんは、薬物療法、注射、リハビリなどの手術以外の治療で改善することが多くなっています。首や腰の痛みをはじめ、脊椎に関するさまざまな症状に応じた治療法を提供しておりますので、手術はハードルが高いと感じる方もぜひ気軽に受診してください。
*病床数や医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年8月時点のものです。