宮崎県宮崎市にて地域に医療提供をする宮崎生協病院は、同院が掲げる理念のもとさまざまな取り組みを行っています。その取り組みのひとつとして、日々の診療から救急患者さんの受け入れまでを幅広く行いながら、無料・低額診療事業の実施などを開始しました。「地域の願いに応え、誰もが安心してかかれる病院」の理念のもと、同院で行われている取り組みについて、宮崎生協病院 院長の遠藤豊先生にお話を伺いました。
当院は1976年10月に前身である宮崎共立診療所が開院され、開院以降は地域医療に貢献してまいりました。当院の開院の背景には、地域の方々や労働者の方々の自分たちの病院がほしいという考えがあり、市民のみなさまの出資により開院にいたりました。
当院が開院した1976年にはベトナム戦争が終わり、南北ベトナム統一がありました。また、国内ではロッキード事件など、さまざまな出来事が多くあった年でもあります。当時は県都ではありましたが、宮崎医大(現宮崎大学)が開設されたばかりで医療機関も少なく、当番医、医師会病院、急病センターもなく救急医療も不十分ななか、患者さんが救急車のなかで一夜を明かしたという話もあったようです。そのため、地域の方々や労働者の方々は、自分たちが安心して医療を受けることができる病院の開院を希望され、さまざまな尽力のもと、開院したのが宮崎共立診療所でした。
開院から、地域のみなさまに医療を提供するために増床や診療科の拡充などを行ってまいりました。1992年に経営母体が宮崎医療生活協同組合となり、当院も現在の名称である宮崎生協病院に改称いたしました。同組合は宮崎県内に複数のクリニックと介護事業所などを構えています。これらのクリニックや介護事業所と連携をすることで、患者さんに切れ目のない医療を提供することができると考えています。
また、積極的に第三者評価を受けることで医療の質の向上に努めてまいりました。医療機能評価やNPO法人卒後臨床研修評価機構(JCEP)、厚生労働省の研修病院評価を定期的に受審して、評価を頂き、認定を受けています。
当院の内科では、患者さんの病状に対して総合的に診療を行うようにしています。さまざまな側面から診療を行い、同時に医師の専門分野での診療も行っています。
また、当院では救急患者さんも受け入れています。ほかの病院で救急患者さんの受け入れが難しい場合には当院が受け入れ、当院で受け入れが難しい場合には近隣の病院に受け入れてもらうなどし、地域の病院と連携をして地域医療の提供に尽力しております。また、宮崎大学医学部附属病院、県立宮崎病院などの三次医療機関とも連携しています。
当院は、宮崎市郡医師会病院を中心に地域の病院と輪番制で内科の救急患者さんの受け入れを行っています。また消化管出血の止血輪番にも参加しています。輪番制とは、各病院が救急患者さんを受け入れる曜日や時間などをあらかじめ決め、その曜日や時間内の要請のあった救急患者さんを必ず受け入れます。
また、三次救急の患者さんや、当院で治療が難しい患者さんの場合には、宮崎大学医学部附属病院や県立宮崎病院などに搬送をしています。同院はドクターヘリやドクターカーを導入しており、迅速な処置や搬送が可能だと考えています。
当院の小児科では、総合的な小児診療のほかに医師の専門分野での診療も行っています。たとえば、小児アレルギーを専門としている医師の診療では、食物アレルギーの検査で食物経口負荷試験を行っています。食物経口負荷試験とは、アレルギーが疑われている食品を1回または複数回食べてもらい、症状の有無を確認する検査のことです。当院で行っている食物経口負荷試験は入院していただき行っています。
当院の理念である「地域の願いに応え、誰もが安心してかかれる病院」を目指して無料低額診療事業の実施をしています。無料・低額診療事業とは、経済的な理由で医療を受けることが制限されてしまわないように、無料または低額で診療が受けられる事業です。
当院では2010年4月からこの事業を開始いたしました。無料・低額診療は地域連携科の医療ソーシャルワーカーや担当事務とご相談のうえ、受けることができますので、お気軽にご相談していただきたいと考えています。
治療が受けられない方や、受けていた治療を中断してしまった方には、経済的な問題などさまざまな理由があると思います。当院では、ソーシャルワーカーと連携を取り、患者さんが治療を終えたあとも生活保護や身体障害認定の取得のお手伝いや案内なども行っています。
当院は将来医師・看護師を志す高校生への支援を行っています。高校生の医師・看護師体験では、医師や看護師を目指す学生を当院に招いてさまざまな体験をしてもらっています。
医療の現場を知っていただくことや、現場の医師・看護師と会話をすることで互いのモチベーションを高めることができると考えています。
当院は、基幹型臨床研修病院に指定されています。基幹型臨床研修病院とは、病院が独自の臨床研修プログラムを行える研修病院です。また、地域の協力型臨床研修病院と連携して若手医師の育成に尽力しています。
初期研修の1か月目は導入期研修を行っています。導入期研修では、医師の現場にすぐに入るのではなく多職種の仕事を経験してもらっています。同じ地域医療に尽力する仲間として、ほかの職種がどのような仕事をして地域のみなさまに貢献されているかをみていただきたいと思い、実施しています。
また、患者さん体験も行っています。患者さん体験では、外来から診療、入院までの流れを患者さんとして経験してもらっています。点滴をして数時間安静にしてもらったり、胃管挿入、酸素吸入、ECGモニター装着などを実際に行なったりします。実際に患者さんが行う治療や検査を受けてもらうことで、患者さんの気持ちがわかる医師になってほしいと考えています。
当院の研修を通して、病気だけでなく、その人自身のことがみられるような医師になってほしいと思います。その人自身をみるということは、病気のことだけでなく、患者さんの家庭背景、社会的背景にも配慮することができる医師と考えています。
当院で行っている無料・低額診療事業も患者さんの社会的背景に目を向けた取り組みだと考えています。また、患者さんやそのご家族とコミュニケーションが取れる医師になってほしいと思います。
当院は、子どもから高齢者まで幅広く診療が行える病院を目指しています。今後は、宮崎市のみなさまの平均寿命と健康寿命の差を埋められるように、予防や健診、診療、リハビリ、介護などに力を入れていきたいと考えています。たとえば、小児科で行っている「すくすく教室」では、1歳未満の子どもを持つお母さん(お父さん)を対象に、予防接種のスケジュールや健診、子どもの事故や病気などについてお話ししています。また健診にも力をいれ、企業健診、特定健診、がん健診などに取り組んでいます。
生活習慣病、がんなどの早期発見を行い、精査・治療に結び付けていきます。
当院で行っている無料・低額診療事業や、地域の病院との連携に力を入れ、切れ目のない医療の提供を行っていきたいと考えています。当院のベッドを地域のベッドとして、在宅を支援する機能として活用していただければと考えています。また、基幹型臨床研修病院として、若手医師の育成に尽力し、地域医療に貢献してまいります。
地域のみなさまが、安心してかかれる病院を目指してスタッフ一同で努めてまいります。
宮崎生協病院 院長
遠藤 豊 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。