神戸市垂水区にある神戸徳洲会病院は徳洲会グループの病院で、1986年に設立されました。これまで救急医療と高齢者医療により地域を支えてきた同院は、5つのセンターで構成された超急性期および急性期医療を行う医療機関となる予定です。現在は、そのための体制転換と2022年を目標にした新病院移転計画を進めています。
同院の体制転換の概要とチーム医療、地域の医療機関との連携協力体制強化、若手医師に対する研修教育体制について、院長の樋上哲哉先生にお話を伺いました。
5つのセンターのうち、現在は心臓血管センターのみ稼働しています。消化器病、整形・外傷、周産期、緩和ケアの各センターは、新病院移転計画にあわせて順次開設予定です。
心臓血管センターでは、心臓血管スクリーニング検査を実施しており、動脈硬化の程度を把握することで、心筋梗塞による突然死のリスクなどを早期発見できるプログラムを用意しています。通常の検査に加え、心エコー・顎動脈エコー・ABI/CAV(血管年齢評価)・冠動脈/大血管3DCTを実施しています。
当院は、患者さんの身体的負担の軽減と、長期成績の向上を追求した外科手術の提供に努めています。代表例として、当院の心臓血管センターで行われている、心筋梗塞や狭心症に対する完全心拍動下冠動脈バイパス術と、僧帽弁・大動脈弁閉鎖不全症に対する自己弁温存形成術があります。
1つ目の完全心拍動下冠動脈バイパス術は、冠動脈の流れが悪くなっている部分に、患者さん自身から採取した右内胸動脈と左内胸動脈を閉塞している冠動脈の末梢側へつなげて、新しい血液の流れ道をつくる手術です。当院ではこの手術を行うとき、動脈硬化の影響を受けにくく長持ちする内胸動脈を用い、また血管採取時に独自開発の超音波メスを使用することで工夫をしています。
2つ目の自己弁温存形成術は、心臓にある弁そのものと周辺部位の形を整えるなどして、弁の開閉機能を改善させる手術です。心臓の弁の手術には、生体弁もしくは機械弁と取り替える人工弁置換術もありますが、人工弁の耐久性や血栓が生じるリスクなどを考慮して、独自の弁尖形成法を考案・実施しています。
このように当院では、手術に工夫をこらすことで、患者さんの早期社会復帰と、合併症の発生や再手術の予防に努めています。
徳洲会はグループ全体で救急医療に注力しています。当院も例外でなく、兵庫県により二次救急医療機関に指定されており、地域の救急医療体制の一翼を担っています。
今後当院では、循環病器センター、消化器病センター、整形・外傷センターそれぞれで救急車を受け入れ可能な体制を構築予定です。総合窓口が、救急隊から寄せられた情報から適していると思われるセンターに連絡して救急車を受け入れることで、救急車受け入れから治療開始までの時間短縮をねらっています。また、各センターでダイレクトに受け入れることにより、患者さんの診療を一貫して行えるようになることも、この受け入れ方法の大きなメリットだと考えています。
当院ではチーム医療を推進しています。チーム医療は、患者さんを中心として、その周りに医師、看護師、薬剤師、理学療法士や栄養士、介護士などが存在しています。それぞれが持つライセンスに優劣はありません。どの職種も平等な立場のもと、患者さんの健康を取り戻すという目的を共有して連携しています。
医師にしかできないこと、看護師にしかできないことがあります。それぞれのスペシャリティを活かした連携を行うことで、患者さんの社会復帰をサポートします。
当院では、若手医師の教育をつうじて地域の在宅医療活性化を図れないか、地域の先生方と共に検討しています。
今後、当院は超急性期および急性期医療に特化する病院となる以上、慢性期医療や在宅医療を担う地域の医療機関や関連施設との連携をますます大切にしていく必要があります。そのためには、地域の先生方に対してこちらから一方的に協力をお願いするだけでなく、フォローを行うことも大切です。その一方で、若手医師が在宅医療に参入しやすくなる土壌づくりが必要だと考えていました。
そこで若手医師を対象に、当院では急性期医療を学ぶ場を用意して、地域では開業医の先生方の協力のもと在宅医療の経験を積める仕組みづくりを進めています。特に、在宅医療の重要性や醍醐味をより多くの若手医師に知ってもらうための土壌づくりをすることで、地域の在宅医療体制の充実と発展にも貢献できるのではないかと考えています。
地域の在宅医療体制を充実させるため、当院にもできることに積極的に取り組みます。
若手医師と話す機会があるとき、院長と先輩医師それぞれの立場から、4つのことをお伝えしています。
まずは、夢を持つことです。医師に限った話ではありませんが、人は夢を叶えるために目標を立てて、目標を達成するために創意工夫や努力を重ねていきます。まずは自分なりの夢を持ってください。
知識や技術は先輩からを見て盗むものでなく、教育をつうじて先輩から後輩へ引き継がれていくものです。
私は心臓外科医として後進を指導する機会もありますが、教えられるものは可能な限り教えています。しっかりとした教育を受けることで、一人前になるまでの時間が短縮できれば、その分自分の研究や技術研鑽にあてることができます。
医者は科学者でもあります。教科書的な知識なども「そういうものだ」と受け取るのでなく、「本当にそうなのか」と常に考える姿勢を持ち続けてください。
物事を学ぶときには一流を見てください。一流と呼ばれる人や存在を見て、目標とすることで、常に高い意識を持ち続けてください。
大分循環器病院 名誉院長 心臓血管センター長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。