「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力工場や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待され、経済産業省より2016年に「健康経営優良法人認定制度」が設立されました。
今回は、2023年から「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に2年連続で認定されている株式会社MIXIに、どんな観点を重視し健康経営を推進してきているのかそのポイントをお伺いしました。
インタビューに応じてくださった方:
人事本部 人事戦略部 部長 兼 人事採用部 部長 兼 労務部ウェルネス推進グループ マネージャー 杉村元規 さん
人事本部 労務部 ウェルネス推進グループ ウェルネス推進チーム 保健師 日下ななみ さん
―健康経営を始めたきっかけ
健康経営を始めたきっかけは二つあります。一つ目は、会社として以前から心身への適切なケアを行ってきていましたが、コロナ禍以降は休職者が増加傾向となり、個々の健康意識に変化が出てきました。
二つ目は、社員の平均年齢が約36歳と比較的に若いため健康に対して差し迫った課題感はありませんでしたが、健康診断の結果が平均年齢の割には全体的によくありませんでした。
そこで経営課題として意識的に、「健康を絡めた社員のパフォーマンス向上」という観点を強く認識し直し、本格的に健康経営に関する取り組みが始まっていったのが背景になります。
―健康経営を浸透させるのに工夫してきたこと
健康経営に本格的に取り組むなかで、会社に専門家である保健師(日下さん)が在籍していること、そしてウェルネス推進グループの存在の認知度が社内でとても上がったと思います。
保健師が社内向けに配信する健康関連の動画「朝会体操」というコンテンツに自ら携わったり、従業員同士が気軽にオンライン上で会話できるSlackチャンネル「mixi_健康活動」を作成し、またチャンネル上に健康に関する情報を積極的に発信したりと、今ではかなりの社員が保健師を認知しています。また産業医や役員がチャンネルで発信してくれることもあり、チャンネル自体の認知にもつながっています。
社員からすると、「健康面、安全衛生面で専門の人が在籍しているんだ」、「会社が健康に対する取り組みをやってくれているな」という認識の向上や安心感の醸成につながっていると感じています。
とはいえ、具体的な取り組み内容まで認知してもらうためには、地道に取り組みを続ける必要があります。
「健康」というの当たり前ですが、社員の普段の生活習慣が大きくかかわってきます。社員の生活習慣を変えていくとなると並大抵の取り組みでは難しいですが、奇抜なアイデアによって変わるものでもありません。そのため一つひとつ地道な活動の積み上げによって、気付く・変化を起こす社員が増えていってほしいと思っています。
保健師から健康情報について発信したり、身近な上司から健康に関する指針の話を話したり……多面的にアクションを積み重ねていかないと、約1600人の社員の意識・行動改革までつなげていくのは難しいと思うので、引き続き頑張っていきたいところです。
また人によって興味があるトピックは異なるので、テーマについても幅広く取り扱う必要があると感じています。
ここ数年の活動によって土台は形成することができたので、ここにどうコンテンツを乗せていくべきかをしっかり考えてやり続けていきたいですね。
―3年間の中でも特にユニークな取り組み
約3年前から健康に関する情報を動画で発信するようになりました。
健康維持・増進を目的とした簡単な運動やストレッチメニューの動画を作成し、社内ポータルサイトにて掲載、配信する「朝会体操」をはじめ、睡眠、食事、定期健康診断など、健康に関するいろいろな情報を他部署に協力をしてもらって動画にして発信していったことで、保健師の認知度もよりいっそう上がっていきました。
今では多様なトピックが動画となり、テレビの1コーナーを見ているような感覚で楽しんでもらえるようになっています。
定期健康診断のアンケート結果から、「睡眠」に対する議題を抱えている社員が多いことが分かったので、今年度の健康経営の活動では「睡眠」を主軸テーマとして啓発を行っています。
ほかには、健康経営の象徴であるキャラクターを制作しました。ウェルネス推進グループのスローガンが“凡事徹底”なので、その言葉にかけて、ジンベイザメ(長寿を表現)の「ボンジー」とコアラ(睡眠を表現)の「テッペイ」というキャラクターを作っています。
このキャラクターは健康に関する取り組みのあらゆるところに登場しています。、たとえば8月31日が“野菜の日”であることから、当社では野菜摂取の推奨のため、31日がある月にベジチェックという機器で推定野菜摂取量の測定会を行っています。このキャラクターは社員の健康を応援するためベジチェックスコアカードにもデザイン起用されています。
*ベジチェック:カゴメ株式会社が開発した、⼿のひらをセンサーに当てて約30 秒で推定野菜摂取量を測定できる機器
ジンベイザメの「ボンジー」(長寿を表現)とコアラの「テッペイ」(睡眠を表現)
また、働き方で言いますと、オフィスワークとリモートワークを融合した「マーブルワークスタイル」を2022年4月より正式に制度化し、遠方の居住も可能としています。現在では約50人の社員が遠方に住んでいます。
出社指示があった際に本社に12時までに到着できる場所であれば、居住地の制限はありません。このように、一人ひとりのライフスタイルに応じて柔軟に、かつ個々のパフォーマンスを最大化しながら働けるような仕組みがあります。
※ マーブルワークスタイル制度の概要
1 部署ごとに最適な出社回数を選択でき、フルリモートワークも可能に
2 フレックスタイム制
所定労働時間 10:00~19:00(休憩時間は左記就業時間中の1時間)
コアタイム* 12:00〜15:00
3 交通手段を飛行機や新幹線など範囲を拡大し、交通費を上限15万円/月まで実費支給
4 日本全国どこでも居住可能に**
* コアタイムを撤廃し、フルフレックスを試験導入中
** 12:00までににオフィスへ通勤できる範囲に限る
―MIXI社の健康経営の目指すところ
MIXIはエンターテインメントを提供する会社ですので、健康経営も「より社員が楽しんで参加できる」ような取り組みにもっと昇華していきたいと思っています。当社の特徴として、社員の納得度が重要なので、効果を上げていくには社員の自発性・自律性を高めていくのが本質的に一番よい方法なのではないかと思っています。
ボトムアップで健康経営の取り組みが始まった背景からも、社員の納得度を重視して、”あるべき姿”を社員からも提案してもらいながら健康経営の取り組みを形成していきたいと思います。
取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。