インタビュー

前立腺肥大の手術 様々な手術はどのように行うか?

前立腺肥大の手術 様々な手術はどのように行うか?
田部井 正 先生

横須賀共済病院 泌尿器科

田部井 正 先生

吉田 実 先生

衣笠病院 主任医長

吉田 実 先生

前立腺肥大症の治療方法のうち、薬物療法での治療が難しいと判断された場合には手術療法が行われます。どのような種類の手術があり、またそれらは具体的にどのような手術なのでしょうか。衣笠病院の吉田実先生ご監修のもと、横須賀共済病院 泌尿器科の田部井正先生に引き続きお話をうかがいました。

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)

薬物療法で効果が不十分な患者さんや、尿閉、尿路感染症、腎機能低下などの合併症がある患者さんには、外科的治療を検討します。

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)は尿道から内視鏡を挿入し、前立腺の組織を電気メスで切除する術式です。現在世界的に最も多く施行され、前立腺肥大症手術においてもっと標準的な方法(golden standard)となっています。

前立腺核出術(TUEB/HoLEP)

経尿道的前立腺核出術(TUEB)やホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)は近年普及しつつある手術で、TUR-Pに比べると、手術時間が若干長くなるものの、出血量が少ない、術後の尿道カテーテル留置期間が短い、入院期間が短い、前立腺肥大の再発が少ないなどの利点があります。

手術は実際どのように行われるのか。所要時間は?

日帰り手術を行っている施設もありますが、通常は入院治療となります。手術前日あるいは当日に入院していただきます。食事は、施設によって時刻は多少異なりますが前日の22時頃以降からは何も食べずにおいていただきます。前日の夜と当日の朝にスポーツドリンクや、病院で用意する専用の飲料を取っていただく施設もあります。

麻酔は通常は脊髄麻酔(下半身の麻酔)ですが、腰椎の変形があるなどの理由で全身麻酔になることもあります。

前立腺肥大症は、前立腺の中でもいわゆる内腺あるいは移行域(transition zone : TZ)と呼ばれる部分が大きくなった状態なので、手術ではこの内腺の部分を切り取って通り道を拡げます。TUR-Pはこの内腺を内側から少しずつ削り取っていく方法で、手術に時間がかかると出血が多くなるため、1時間から1時間半程度で手早く手術を行う必要があります。熟練した泌尿器科医であれば、70グラムから80グラム程度の大きさまではこの方法で行うことが可能です。

一方TUEBやHoLEPでは最初に内腺と外腺との間を剥がして行きます。きれいに剥がすことができれば多少時間がかかっても大きな前立腺肥大に対して少ない出血で手術が可能です。

いずれの方法でも、術後は尿道から膀胱内まで管を入れておいて、管につながった袋に尿が自然に流れ出るようにしますが、TUR-Pでは術後しばらく出血を抑えるためにその管を術後4~5日入れておく必要があるのに対し、HoLEPやTUEBではほとんどの場合翌日には管を抜くことができます。

尿道の管を抜いて排尿を確認し、1~2日様子を見て問題がなければ退院となります。まれに術後38℃以上の高熱が出たり、濃い血尿が続いたりすることがあり、入院が長くなることがあります。また、ごくまれに手術後数ヶ月たってから、手術の影響で前立腺よりも先のほうの尿道が狭くなることがあり、手術して尿の勢いがよくなったのに数ヶ月したらまたチョロチョロとしか出なくなったというような場合、この尿道狭窄が疑われます。この場合は狭くなったところを専用の器具を使って拡げることでまた勢いがよくなります。

手術療法は薬物療法に比べて尿の勢いや残尿感をよくする効果は高く、また尿が我慢できなかった人も膀胱の負担が減ることで結果的に我慢しやすくなることが多いですが、まれに咳やくしゃみで尿が少し漏れてしまうようになることがあります。また、もともと夜間のトイレの回数が多かった人が完全に夜中にトイレに行かなくなるということはありません。

ただし、手術を行うと抗コリン剤と呼ばれる頻尿改善薬を安全に使用することができるようになります。前立腺肥大症があって尿が出にくい方が抗コリン剤を飲むと尿が出なくなってしまう危険があるため使用するのが難しいのですが、手術を行えばこの薬を安心して服用できるようになり、尿の回数を減らせる可能性があります。その他にも、前立腺肥大症があることで使いにくい薬(向精神薬や不整脈の薬など)が手術をすれば使用可能になります。

その他の手術方法

どのように肥大した前立腺を除去するか(切除、蒸散、熱凝固、変性)、そのためにどのデバイスを使うか(電気メス、レーザー、超音波、マイクロ波、ラジオ波)によって他にもさまざまな術式、具体的にはレーザー前立腺蒸散術(PVP)、組織内レーザー凝固術(ILCP)、経尿道的マイクロ波高温度治療術(TUMT)などがあります。これらの方法は体への負担が少ないという利点がありますが、TUR-PやTUEB, HoLEPに比べて前立腺肥大の再発が多く見られます。いずれも尿道に内視鏡を挿入することで行う治療です。

以前は大きな前立腺に対しては下腹部を切開する開腹手術が行われていましたが、現在では開腹手術はほとんど行われなくなっています。

記事1:前立腺肥大症とは―50歳を過ぎての排尿トラブルは前立腺肥大症かも?
記事2:前立腺肥大症の治療方法とは 薬物療法にはどのような種類がある?
記事3:前立腺肥大の手術 様々な手術はどのように行うか?