インタビュー

環境ホルモンと不妊の関係性とは?

環境ホルモンと不妊の関係性とは?
堤 治 先生

山王病院(東京都) 名誉病院長

堤 治 先生

この記事の最終更新は2015年10月01日です。

環境ホルモンは内分泌かく乱物質であり、これによって女性ホルモンの作用が乱されるということを『環境ホルモンとは?(1) 環境ホルモンが発生する原因』『環境ホルモンとは?(2)環境ホルモンの種類と対策』『環境ホルモンは胎児にも影響を与える』の3記事にわたってご紹介してきました。では、環境ホルモンと不妊にはどのような関係があるのでしょうか。山王病院病院長の堤治先生に解説していただきました。

環境ホルモンは男性精子の減少に影響を及ぼすと言われています。そのため、環境ホルモンが不妊に無関係とは言えません。
また、環境ホルモンは近年日本でも増加が指摘されている子宮内膜症の原因の一つとしても考えられています。子宮内膜症は不妊の原因ともなりえる重大な病気です。ここから見ても、環境ホルモンは不妊に影響するということができるでしょう。

つまり、男性・女性ともに、環境ホルモンの影響によって不妊となる可能性があるということです。

環境ホルモンの影響によって精子が減少しているとなれば、精子の数を増やす(元に戻す)必要があります。また、子宮内膜症などを患っている女性は、その治療が必要です。

しかし、不妊治療をしている人にとって一番してはいけないことは「神経質になり過ぎること」です。環境ホルモンは前述のとおり、あらゆる物質に含まれています。あれもダメ、これもダメ、と制限をかけすぎると、人間は誰しもストレスにさらされます。ストレスは妊娠を希望している方にとって決していいものではないでしょう。

もしどうしても心配だという方は、何が入っているのかよくわからないものを買ったり食べたりしないようにすれば安心ではないでしょうか。

環境ホルモンを実験動物に投与すれば精子が減ることがわかっています。しかしヒトに同じ実験をするわけにはいきませんから、ヒトでも同じことが言えるかどうかははっきりと断言できません。それでも、そのような可能性があるということを危惧していくことも大事です。

環境ホルモンが人体に与える影響は未解明な部分が多く、環境ホルモンを摂取し、それが原因で亡くなった方は報告されていません。つまり環境ホルモンを無理やり投与されたからといって、死ぬわけではないということです。

ダイオキシンは確かに毒として働くこともあります。しかし、実験動物でエストロゲンを欠乏させた状態で微量のダイオキシンをやると薬になることもあるのです。メカニズムはいまだに解明されていませんが、低濃度の環境ホルモンを与えると発育を促進するというデータもあり、環境ホルモンが育児や発達・発生に如何に作用するかはいまだに不思議な面が多いのです。

災いを転じて福となすという言葉があります。環境ホルモンの研究が、生命機能の解明や新しいホルモン製剤の創薬などに発展することを期待しています。

余談ですが、体外受精で生まれたお子さんのほうが一般のお子さんより学校の成績がいいことが統計的に証明されています。これは体外受精そのものが子どもの能力に直接関係しているのではなく、その後の環境が大きいと推測できるでしょう。体外受精は自費診療ですから、ある程度裕福な家庭でないと受けられないのが実情かもしれません。

親側としても、不妊に悩み苦しんで、体外受精でようやく生まれた子どもに対しては熱心な教育投資をすることも想像できます。結果として成績が良くなるので、体外で受精したからといって天才になるというものでもありません。

今や日本では27人に1人が体外受精で生まれる時代です。体外受精児の数も世界で一番になりました。特に都市部では晩婚化などの影響もあり、不妊を経験される方が増えています。体外受精は出産のための新たな手段として十分に活躍しているのです。不妊に悩む女性は、体外受精や人工授精という選択も残されているということを覚えておいてください。

ヒトの健康や生殖機能はいろいろな環境ホルモンの複合汚染により脅かされる可能性があります。少子高齢化の現代では、環境ホルモンによる次世代への影響をどうにかしていかないと、とんでもない未来になってしまうのではないかと私は危惧しています。
私たちは将来への希望を持って環境ホルモンに向き合い、対策を練っていく必要があるでしょう。

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