インタビュー

変形性脊椎症とは。病気ではないが、病気につながることがある

変形性脊椎症とは。病気ではないが、病気につながることがある
曽雌 茂 先生

東京慈恵会医科大学 整形外科 教授

曽雌 茂 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年08月20日です。

変形性脊椎症」というものがあります。しかし、これは主にX線像から診断される病名であり、必ずしも症状を伴っている(すなわち病気)というわけではありません。年を重ねると顔にシワができるのと同じように、年を重ねると椎体や椎間板にも変化(椎体の骨棘、椎間板腔の狭小化、椎間関節の肥厚や骨硬化など)が起きます。これらは加齢による変化であり、高齢者では必ず見られる変化といっても過言ではありません。この変形性脊椎症とはどのような変化なのでしょうか? 東京慈恵会医科大学整形外科学准教授の曽雌茂先生にお話をお聞きしました。

変形性脊椎症とは、主に加齢により生じる椎間板や椎体の変化のことを言います。基本的には加齢に伴う変化であり、高齢者に多く起こります。しかし、この病名は単純X線像上での診断であり、必ずしも症状を伴うものではありません。むしろ、無症状のことがほとんどで、基本的に病気とはいえません。

しかし、椎間板の変性が高度になれば腰痛の原因になりますし、図のように変形性脊椎症が進み、骨棘、靱帯、椎間板などにより神経が圧迫されると腰痛や背中の痛み、あるいは下肢痛などが引き起こされます。こうなると、症状があるわけですからその時点で病名が付きます。つまり理解としては、「変形性脊椎症自体は病気ではないが、これが病気につながることはある」と考えましょう。

私自身も、変形性脊椎症という言葉を患者さんの説明に使うことはありません。何らかの症状がある方のレントゲンをとって背骨が変形していることがわかったとしても、これはよくあることであり、症状と直結しているわけではありません。

どれくらい多くの人が「変形性脊椎症」となる? 高齢者すべてに起こる?
レントゲン上で年齢に応じた変化や変形が起きているということを捉えて、それを指して「変形性脊椎症」というのであれば、ほとんどの人は該当してしまいます。年齢を重ねれば誰しもに起こることです。たとえば、年齢を重ねても顔はシワが出て来ないという人はいません。同じように、椎体や椎間板にも変化が起きて、レントゲンでみると年齢なりの変化が起きていると考えましょう。

脊椎は、「椎骨(椎体)」という骨とその間にあるクッションの働きをする「椎間板」でできています。クッションである椎間板は、若い頃からさまざまな力を受けています。それが、加齢とともに徐々に退行変性していきます。椎間板が変性をしていくと、徐々にその弾力性が失われていき、クッションとしての役目を果たせなくなっていきます。すると、骨(椎体)にも影響が出てきます。そうなると、下図のように骨棘(こつきょく)が形成されていきます。

骨棘が形成される様子
骨棘が形成される様子

この骨棘形成自体は、年齢を重ねる中でほぼすべての人に見られます。したがって、骨棘があるだけでは問題はありませんし、病気とはいえません。問題は、この骨棘が神経を刺激するなどして症状が引き起こされたときです。そのような段階では変形性脊椎症ではない別の病名がつきます(脊柱管狭窄症、神経根症、頚椎症性脊髄症など)。

変形性脊椎症のリスクは?
誰しも変形性脊椎症になる可能性があります。しかし、変形性脊椎症になりやすい要因、すなわち椎体や椎間板の変性を起こしやすい要素という観点からは、荷重負荷・喫煙糖尿病が挙げられます。

例えばスポーツや重量物の挙上など、荷重負荷を腰にかければかけるほど椎体や椎間板の変性は進んでいきます。また、変形性脊椎症とは必ずしも関係がありませんが、椎間板の変性は遺伝との関連が指摘されています。

変形性脊椎症は病気ではないので、「症状」という言い方は正確ではありません。骨棘があるだけでは基本的に無症状です。繰り返しとなりますが「変形性脊椎症が進行することでいろいろな病気が引き起こされる」と理解してください。引き起こされる病気には「腰部脊柱管狭窄症」もありますし、「頚椎症性脊髄症」もあります。このように、いろいろな病気につながっていきます。

これらについての詳細は、次の記事「変形性脊椎症の検査ーMRI検査を行う場合とは?」をご参照ください。

脊椎のX線(レントゲン)検査
変形性脊椎症では骨棘が形成されますが、症状がないものは病気ではありません。少し難しい話ですが、特徴的な所見は、「椎体の骨棘形成(棘/とげのようなものができる」「椎間板腔の狭小化(椎骨と椎骨の間が狭くなること)」や「椎間関節の肥厚(椎弓をつなぐ関節が分厚くなること)」などがあります。

椎間関節
椎間関節

特に治療はありません。

加齢に伴う変化で多くの人に起こるものであり、これといった予防法は基本的にはありません。ただし、「椎体や椎間板を守る・悪化をさせない」という観点から注意できることはあります。「リスク」の項での説明の繰り返しとなりますが、以下のことが重要です。

まず、荷重負荷を減らす(負担をかけすぎないようにする)ことです。体も絞れるものなら絞っていき、あまり太り過ぎにならないようにすることが大切です。また、タバコは椎間板の変性を促進するためよくありません。さらに、糖尿病も椎間板の変性を促進させることが分かっています。

ここからいえることは、規則正しいライフスタイルを送り、日常生活・食生活に気をつけ、適度な運動をして肥満を防ぎ、筋肉をつけていくことです。いずれも健康を保つためによく言われることで、特別なことはありません。

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