NICUは生まれたばかりの赤ちゃんが医療の助けを必要としているとき、治療のために入る集中治療室です。赤ちゃんがNICUに入ることになったら、お母さんやご家族はどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
東京大学医学部附属病院小児・新生児集中治療部教授・部長の高橋尚人先生にうかがいました。
新生児、とくに未熟な状態で生まれた赤ちゃんは抵抗力が低く、感染症などに注意する必要があります。ご両親やご家族が面会される場合には、手洗い・消毒・マスクまたはガウンの着用など、施設で定められたルールに従っていただく必要があります。体調がすぐれない・熱っぽい・せき・くしゃみなど感染症にかかっている可能性があるときには面会を控えていただくようお願いします。
また直接の面会はお母さんとお父さんに限らせていただき、その他のご家族はガラス越しでの面会をお願いするといったケースもあります。とくに兄弟が小さなお子さんの場合は大人よりも感染症にかかりやすいので、一緒に入室できない場合もあることをご理解ください。しかし最近、NICUの設備が良くなっていることもあり、従来に比べると面会はかなりオープンになっています。24時間面会可能な施設も増えています。
母乳は赤ちゃんにとって必要なものがほぼすべて揃っている理想的な栄養源であり、免疫物質も含まれています。NICUに入院している赤ちゃんにも、できるだけ母乳をあげられるようにスタッフがお手伝いをします。赤ちゃんが小さい場合は、搾乳した母乳をチューブから授乳することになります。
NICUに入っている間でも、母子ともに安定した健康状態であれば、直接抱っこをしてスキンシップを行うことが推奨されています。これをカンガルーケアといいます。肌と肌の触れあいや、抱いたときの重み、匂いなどを直接感じることが愛着形成のためにとても重要であると考えられています。
また、欧米を中心に広まりつつある考え方として、ファミリーセンタードケア(Family-centered Care)というものがあります。NICUでも赤ちゃんとお母さん・お父さんが一緒に過ごせることを中心に考え、医療がそれをサポートするという方向に進んできています。施設の設備面など日本ではまだまだ難しい課題もありますが、NICUの個室化も将来的に目指すところのひとつとなっています。
ご家族の中には、生まれたばかりの赤ちゃんがNICUで医療機器に囲まれ、治療のためのチューブなどがつけられているようすにショックを受ける方も少なからずいらっしゃいます。とくにお母さんは赤ちゃんを丈夫に産んであげられなかったことで、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。NICUに入っている間、治療に関することは医師やスタッフを信頼してまかせることも必要です。
もちろん、不安なことや分からないことがあればNICUのスタッフにお尋ねください。精神的なサポートのために臨床心理士をおいている施設も増えています。
また、母乳を赤ちゃんに届けるために搾乳を頑張っても、なかなかうまくいかないこともあるかと思います。産後はお母さんも体調が万全ではありませんので、無理をせずできることだけをやっていくようにしましょう。そして、面会できる時には頑張っている赤ちゃんを褒めてあげてください。
東京大学医学部附属病院 小児・新生児集中治療部教授・部長
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