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インタビュー

摂食障害に対する誤解―摂食障害を理解するために

摂食障害に対する誤解―摂食障害を理解するために
石川 俊男 先生

国立国際医療研究センター国府台病院 心療内科特任部長

石川 俊男 先生

摂食障害は増加し続ける疾患である一方、「甘え」「わがまま」「自分勝手」であるという批判を受けやすい障害でもあります。しかしこのような言葉で片づけられる病気ではないと、国立国際医療センター国府台病院心療内科特任診療部長の石川俊男先生は仰います。摂食障害を取り巻く現状について、詳しくお話し頂きました。

摂食障害の患者さんには「甘えている」「わがままだ」「贅沢だ」「食べ物がこんなにあるのに、もったいない」「世界には飢えに苦しむ子どももいるのに…」など、様々な厳しい意見を持たれる傾向があります。実の両親から、人間として心に深い傷を負うレベルの中傷を受けていることも少なくありません。そのような場合、私は「それではお父さんお母さん、あなたは娘さんのように、こんなにも消耗するまで痩せることができますか?」と聞いています。

甘えや贅沢という発想では、この病気を理解することはできません。

また、自信がないゆえに集団が得意ではないため、患者さんは一見すると個人主義的に見えることが少なくありません。普段から誰かと一緒にいることが難しいという特徴があり、集団行動ができないために、そこでまた誤解されてしまうとも考えられます。

その反面、全ての患者さんが「誰かに構ってほしい」という思いを抱いているのも事実です。しかし、彼女たちは集団にはいたくありません。というよりは、自信がないため、集団のなかでどうやって生きていったらいいかがわからないのです。ですから、誰か一人に依存した形で生きていこうと考えます。実は依存的になっている部分は、助けてほしいというSOSのサインでもあります。

摂食障害の患者さんは治ることが怖いと思っています。なぜなら、体重が増えるのが怖いからです。しかし、治すためには体重を増やさなくてはいけない場合があります。つまり患者さんにとって「治療を受けに来ること」は「怖いことをしに来ること」と結びつきます。そのため、治療行為から逃げようとします。

そのような医療を、通常の医者はしたことがありません。通常の患者さんは、何らかの症状を治してほしいから医者の元を訪れます。医者はそれに応えて治療を行います。それに対して、摂食障害では体重増加が怖いという恐怖心を根源的に持っているために、治療自体が恐怖の対象になるのです。ですから、医者側が努力を重ねても素直に治療を受けてくれません。

そのため、摂食障害の患者さんは、自ら治療を滞らせたり妨げたりするような行為をすることがあります。具体的には、点滴しても自ら管を抜いてしまいます。ひどい場合には中心静脈栄養(IVH)ですらも抜こうとします。IVHを誤って抜いてしまうと医療事故になりかねません。医療事故と隣り合わせの治療は、通常医者は避けたがります。そういう意味でも、医者は摂食障害の治療をしたがらないことがあります。精神科的管理だけではなく内科的管理が必要になるのは、精神疾患の中では珍しいことです。

さらにもうひとつ医師が困ることは、いくら医師が一生懸命治療しようとしても、患者さんが人間不信であるゆえに、医師や治療者を試そうとする点にあります。

治療をいざはじめようとすると、患者さんはこの治療者が本当に信用できる人材にあたるのか試すための行動をします。たとえば「先生があんなことを言ったから飛び降りた、リストカットをした」などです。この行為は、一歩間違うと死にかねないほどリスクの伴うものであることが多いです。摂食障害の患者さんにとっての他者は、そこまで試さなければ信頼できない存在になってしまっています。それを乗り越えた治療者と初めて信頼関係ができるのですが、一般の医者にはそのような特殊な経験がないため、なかなか治療が難しいといえます。

摂食障害を治療する医者と家族は、「患者にとって治療をすることが恐怖の対象であること」「一見裏切りに見える行動は不安の裏返しであるということ」を十分に理解しておくことが必要です。

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