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インタビュー

“過食嘔吐がやめられない”摂食障害の患者に対するアプローチ

“過食嘔吐がやめられない”摂食障害の患者に対するアプローチ
石川 俊男 先生

いしかわストレスケアクリニック

石川 俊男 先生

目次
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摂食障害のうちの過食嘔吐症は、低体重である場合、死亡率18%にまで及ぶ非常にリスクの高い障害です。食べることと吐くことを繰り返すことで体内バランスが崩壊し、多臓器不全を起こしてしまうことがあります。一方で、過食嘔吐症の患者さんにとって過食嘔吐は一種の自己防衛反応でもあり、やみくもに症状だけを止めようとしても治療にはならないといいます。過食嘔吐症の患者さんに対して治療者や周囲の方がどのように向き合えばよいのか、長年臨床の場で摂食障害患者を見守ってこられたいしかわストレスケアクリニック(元・国立国際医療研究センター国府台病院 心療内科特任診療部長)の石川(いしかわ) 俊男(としお)先生にお話しいただきました。

※2021年2月現在、国立国際医療研究センター 国府台病院を定年退職したのち、いしかわストレスケアクリニックにて診療をしております。入院施設ではありませんので、低体重(35kg以下)の患者さんの診療はお断りしています。

嘔吐を覚えてしまっている患者さんの治療が難しいのは、過食嘔吐がストレス対処の手段としても使われることがあるからです。そのような場合、過食が快感になっているのか嘔吐が快感になっているのか分からなくなっています。

経験された方以外には理解しがたいかもしれませんが、吐くことは一種の発散です。患者さんは、嘔吐によって今までため続けていた体の中の不安や不満や悲しみなど、これまで口に出せなかった嫌なものが、嘔吐によって食べ物と一緒に全て出ていく気持ちを覚えます。一瞬で嫌なこと、怒り、不安がぶちまけられる感覚があるといいます。

そういう一種の快楽行為たる部分と、「吸収して太りたくない」という根幹の肥満恐怖から嘔吐は慢性化すると考えられます。

とはいえ、嘔吐は基本的に非生理的な行為ですから、当然体によいとはいえません。

過食嘔吐の多くの患者さんは強迫的観念を持っているため、嘔吐をまったくなくしたい、ゼロにしようと考えています。

しかし、私は患者さんに「過食を始めたら止めるな」とアドバイスしています。これには理由があります。過食嘔吐には非常に大きなエネルギーが必要ですから、それを途中で止めたとき、そのエネルギーが自傷行為や暴力などさらなる逸脱行為に代わってしまう可能性があるからです。

ただし、過食を始めるまでは当然過食嘔吐をすすめることはありません。ほかに気晴らしできる方法が見つかるように一緒に考えますし、衝動が起きた一定時間、別の気晴らしをすれば過食嘔吐に走らなくて済むのだという話をします。その代わり、いったん始めたらもう止める必要はないと考えています。むやみにその行為をやめたとしても、結局のところ役に立たないからです。

過食嘔吐がストレスの発散法であるならば、そして患者さんがほかにストレスの対処法を知らなければ、いったん過食嘔吐でその場の気持ちを乗り切るということが可能になります。

過食嘔吐は私から見ると、結果でしかありません。結果にのみ一時的に対処したとしても、その患者さんが抱えている根幹の原因が患者さんの心に残っている限り、一定期間をすぎたらまた爆発するだけです。過食嘔吐が出るたびに無理やり止めていては、治療者・患者ともに負担が大きくなってしまいます。

仕事や学校に支障が出るほどに過食嘔吐がやめられない患者さんの場合は、入院などをしてみて環境を変えることをおすすめしています。

過食嘔吐の方は、ご自身の環境に依存している方が多くいます。そのため、入院すると途端に過食嘔吐をしなくなります。ただし、退院して環境を戻すと再発してしまいます。ですから、入院は根治のための処置ではなく、“吐かないでいられる”という体験を積むために行われると考えたほうがよいかもしれません。

患者さん本人は、一生やめられないと思い込んでしまっています。その凝り固まった認知をほぐし、やめられるのだと教えてあげることが治療のための一歩につながります。

これは過食嘔吐症の方のみならず摂食障害の方全般に言えることですが、寛解(症状がおさまり、生活に支障がなくなった状態)した患者さんには、最終ゴールに向けて生活面でのアドバイスをしていきます。症状がおさまり、治りかけている方に対して重視しているのは、どれだけ社会生活に適応できるかという面です。当然能力差はありますが、その人に応じて治療のゴールを設定し、アドバイスしていきます。

ゴールは人それぞれ異なります。自立と一口にいっても個別性がありますから、全ての患者さんが同じゴールを目指す必要はありません。就職して働くことであれ、趣味を見つけてサークル活動を始めるであれ、その方ができそうなことをしていくことが、その方にとってのゴールへの道筋につながっていきます。

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