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インタビュー

摂食障害の治療ー拒食症と過食症の危険性とは?

摂食障害の治療ー拒食症と過食症の危険性とは?
石川 俊男 先生

国立国際医療研究センター国府台病院 心療内科特任部長

石川 俊男 先生

摂食障害とひとくちにいっても、そこには制限型の拒食症、排出型の拒食症、浄化行為を伴わない過食、過食嘔吐症など、様々なタイプのものが存在します。

なかでも排出型の拒食症は、死亡率が非常に高く、決して看過できない疾患といえます。摂食障害のタイプのチェックと個々の危険性について、国立国際医療センター国府台病院心療内科特任診療部長の石川俊男先生にお話し頂きました。

摂食障害は数ある精神疾患のなかでも、特に深刻に死の危険と向き合っている病です。国府台病院でも年間数人は亡くなっています。それだけ「半端な病気ではない」といえるでしょう。

半端な病気ではないという表現には、微妙に診断基準を誤解されている可能性があるという意味もあります。これについて以下にご説明します。

拒食症というのは一定以上に痩せている方々たちの一群です。拒食症には制限型と排出型があり、そのどちらも拒食症に分類されます。対して、体重が正常か正常以上の方は過食嘔吐症または過食症と分けられます。

つまり、拒食症のなかにも全く食べないタイプと過食するタイプがあり、過食するタイプは嘔吐をするなど何らかの浄化行為をするために痩せています。このあたりの境界が、世間一般ではきちんと区切られていないように感じられます。

摂食障害の分類
拒食症(AN) 制限型拒食
排出型拒食
過食症(BN) 過食嘔吐症、浄化行為を含む
むちゃ食い障害 浄化行為を伴わない

具体的には貧血低血糖、脳萎縮、肝機能障害、白血球・赤血球減少、腎機能障害、脈拍数低下、低体温、無月経、思考能力の低下、判断能力の低下、感情コントロールがうまく出来ない、など多岐にわたります。

ただし、制限型の死亡率は2~3%であり、排出型に移行させないための早期治療が肝心ともいえます。それにもかかわらず、記事3『摂食障害に対する誤解―摂食障害を理解するために』で述べたように拒食症の患者さんは太らされるのが嫌だという理由で受診を拒否する方が多く、治療が困難であることも少なくありません。標準体重55%未満の場合は入院加療が必要です。

標準体重別の治療

標準体重

身体状況

活動制限

55未満

内科的合併症の頻度が高い

入院による栄養療法の絶対適応

55~65

最低限の日常生活にも支障がある

入院による栄養療法が適切

65~70

軽労作の日常生活にも支障がある

自宅療養が望ましい

70~75

軽労作の日常生活は可能

制限つき就学・就労の許可

75以上

通常の日常生活は可能

就学・就労の許可

過食嘔吐症あるいは排出型の拒食を続けると、浄化行為による身体的弊害や、浄化行為後の罪悪感による抑うつ症状が危惧されます。また、嘔吐による電解質異常、心電図異常、齲歯、生理不順、唾液腺肥大、むくみ、また食物がのどに詰まる危険も否定できません。

過食嘔吐のし過ぎで必要な栄養素が確保できない排出型の拒食の場合は、体重が減り続け、前項の栄養失調に伴う症状が同時にあらわれます。

痩せすぎている方が治療しようと思っていきなり高カロリーなものを摂取すると、体がびっくりします。体は普段から低体重に慣らされているのに、突然高カロリーなものが入ってくるために、体の中に洪水が起こったような状態を生じます。

今までは吐いていたため、長時間体に栄養が残っていることなどありません。そこから無理に高カロリーなものを摂取すると、多臓器不全を起こす可能性があります。

血液中の細胞のリンは、低栄養状態になると減少する性質を持っています。細胞の中のリンはエネルギー代謝に必要な電解質であるため、エネルギー代謝を抑えるために体が体内のリンの量を減らしてしまうのです。

そのような状態で高カロリーなものが入ってくると、細胞の中にエネルギーが充満しますが、代謝を促すリンが無いためすぐに細胞内のリンが枯渇してしまいます。こうなると、リンが無くなった細胞が壊れていきます。全身のリンが無くなってしまうと多臓器不全となります。

つまり、摂食障害に対してよく言われがちな「食べれば治るではないか」は不適切な表現なのです。急激な刺激はかえって患者さんを死に追いやってしまいます。

摂食障害のなかで最も死亡率が高いのは排出型の拒食で、全体の18%(専門施設による多施設共同調査2004による)にも及びます。死因は栄養失調、身体合併症がメインで、突然死、自殺も見受けられます。

ここまで死亡率が高いことの理由は、吐いて痩せ続けているのに何度も過食嘔吐するということが、人体にとって極めて非生理的なことだからです。24時間365日体に負担をかけ続けていては、体がもたないのも当然といえます。

摂食障害の自殺の特徴はうつ病と違って衝動的な場合があります。

患者さんは家族や治療者を試そうとして、わざと反抗的かつ暴力的な言葉を発することがあります。それに治療者や家族が乗ってしまい、売り言葉に買い言葉のような状況になってしまうと非常に危険です。

摂食障害の患者さんは、悲しいことですが、周囲の方々が側にいる所で自殺をしたがります。「みんな見ていて」という思いがあるのでしょう。

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