インタビュー

摂食障害の治療――拒食症と過食症の危険性とは?

摂食障害の治療――拒食症と過食症の危険性とは?
石川 俊男 先生

いしかわストレスケアクリニック

石川 俊男 先生

目次
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摂食障害と一口に言っても、そこにはいわゆる拒食症(神経性やせ症)と過食症(神経性大食症)に大きく分かれ、拒食症の中にも、拒食のみの制限型と浄化行動を含む過食・嘔吐型があります。また、過食症(神経性大食症)は一般に体重の減少はないが、過食・嘔吐のような浄化行動を伴うタイプをいいます。浄化行動を伴わない過食症状が中心の過食性障害もあります。

中でも拒食症の過食・嘔吐型は死亡率が非常に高く、決して看過できない病気といえます。摂食障害のタイプのチェックと個々の危険性について、いしかわストレスケアクリニック(元・国立国際医療研究センター国府台病院 心療内科特任診療部長)の石川(いしかわ) 俊男(としお)先生にお話しいただきました。

※2021年2月現在、国立国際医療研究センター 国府台病院を定年退職したのち、いしかわストレスケアクリニックにて診療をしております。入院施設ではありませんので、低体重(35kg以下)の患者さんの診療はお断りしています。

摂食障害は数ある精神疾患の中でも、特に深刻に死の危険と向き合っている病です。国府台病院でも年間数人は亡くなっていました。それだけ“半端な病気ではない”といえるでしょう。

半端な病気ではないという表現には、微妙に診断基準を誤解されている可能性があるという意味もあります。これについて以下にご説明します。

拒食症というのは一定以上に痩せている方々たちの一群です。拒食症には制限型と過食・排出型があり、そのどちらも拒食症に分類されます。対して、体重が正常か正常以上の方は過食症もしくは過食性障害に分けられます。

つまり、拒食症の中にも食事制限だけをするタイプと過食するタイプがあり、過食するタイプは嘔吐をするなど何らかの浄化行為をするために痩せています。このあたりの境界が、世間一般ではきちんと区切られていないように感じられます。

また、同じ人でも体重の増減を繰り返したり、拒食状態になったり、過食・排出行動を繰り返したりとタイプが変わることもよくありますので、さらに区別が難しくなっていますが、基本的な心の病理は変わらないと考えられています。

摂食障害の分類

具体的には貧血低血糖、脳萎縮、肝機能障害、白血球・赤血球減少、腎機能障害、脈拍数低下、低体温、無月経、思考能力の低下、判断能力の低下、感情コントロールがうまくできない、など多岐にわたります。

ただし、制限型の死亡率は2~3%であり、過食・排出型に移行させないための早期治療が肝心ともいえます。それにもかかわらず、拒食症の患者さんは太らされるのが嫌だという理由で受診を拒否する方が多く、治療が困難であることも少なくありません。標準体重55%未満の場合は入院加療が必要です。

標準体重別の治療

過食・排出型の拒食症を続けると、浄化行為による身体的弊害や、浄化行為後の罪悪感による抑うつ症状が危惧されます。また、嘔吐による電解質異常、心電図異常、齲歯(うし)、生理不順、唾液腺肥大、むくみ、また食べ物が喉に詰まる危険も否定できません。

過食嘔吐のし過ぎで必要な栄養素が確保できない過食・排出型の拒食症の場合は、体重が減り続け、前項の栄養失調に伴う症状が同時にあらわれます。

摂食障害のなかでもっとも死亡率が高いのは過食・排出型の拒食症で、全体の18%(専門施設による多施設共同調査2004による)にも及びます。死因は栄養失調、身体合併症がメインで、突然死、自殺も見受けられます。

ここまで死亡率が高いことの理由は、吐いて痩せ続けているのに何度も過食嘔吐するということが、人体にとって極めて非生理的なことだからです。24時間365日体に負担をかけ続けていては、体がもたないのも当然といえます。

摂食障害の自殺の特徴はうつ病と違って衝動的な場合があります。

患者さんは家族や治療者を試そうとして、わざと反抗的かつ暴力的な言葉を発することがあります。それに治療者や家族が乗ってしまい、売り言葉に買い言葉のような状況になってしまうと非常に危険です。

摂食障害の患者さんは、悲しいことですが周囲の方々が側にいる所で自殺をしたがります。「みんな見ていて」、「助けてほしい」という思いがあるのでしょう。

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