インタビュー

小児糖尿病とは。病態とその原因

小児糖尿病とは。病態とその原因
川村 智行 先生

大阪市立大学医学部附属病院 小児科新生児科講師

川村 智行 先生

この記事の最終更新は2016年03月11日です。

糖尿病には1型と2型の2種類があります。1型糖尿病は自己免疫などによって発症するタイプで、インスリンを分泌する細胞が破壊されてしまうことによって起こります。一方、2型糖尿病は不規則な生活習慣などによって引き起こされるといわれています。

糖尿病というと、一般的には後者の2型糖尿病が想定されがちで患者数も多いのですが、実は1型糖尿病だけでも、1年間に500~600人もの子どもが新たに発症しており、現在の子どもの患者数は約5000人にものぼります。

小児糖尿病は小学校低学年から高学年にかけて突然発症する病気です。病気とは長い付き合いになるため、保護者の方はもちろん、本人もきちんと自分の病気について知り、コントロールすることを学習していかなければいけません。今回は小児糖尿病について、大阪市立大学医学部附属病院小児科新生児科講師である川村智行先生にお伺いしました。

糖尿病といわれると、生活習慣病をイメージする方も多いかもしれません。しかし、一般的に私たちがイメージする成人の糖尿病は2型糖尿病と呼ばれるものです。一方、小児期から糖尿病を発症する子どもたちもいます。子どもに発症する糖尿病の多くは1型糖尿病と呼ばれ、発症年齢は10歳から15歳がピークです。1型糖尿病は原因や治療法も2型糖尿病と異なります。

しかし、最近では中学生や高校生のなかにも2型糖尿病のタイプが増えてきており、小児糖尿病の5人に1人は2型糖尿病に分類されています。そのため小児糖尿病を考える際には、1型糖尿病と2型糖尿病の両方を考えなければなりません。

現在、全世界では約43万人の子どもが糖尿病患者であり、毎年6500人の子どもが新たに糖尿病を発症しています。

日本の小児糖尿病における1型糖尿病の発症頻度は欧米よりもかなり低く、10万人当たり 1.5~2.0人であり、現在約6000人の患者さんがいます。

1型糖尿病患者は10~13歳までに発症することが多く、2型糖尿病は8~9歳頃から増加しはじめ、13~14歳までに診断されるケースが多くなっています。そして小児糖尿病では、約8割が1型糖尿病です。後述しますが、近年では小児2型糖尿病の頻度も高くなってきています。それでも小児糖尿病患者の5人に4人は1型糖尿病であり、成人糖尿病のほとんどが2型であるという傾向とは大きく異なっています。

それでは小児糖尿病の原因について考えてみましょう。

1型糖尿病の原因については、現在では遺伝的要因が50%、ウイルス感染などの後天的要因が50%ということがわかっています。遺伝的要因といっても一般的な体質のようなもので、特殊なものではありません。したがって頻度こそ低いもののどなたでも発症する可能性があります。後天的要因はそのほかにも、内服薬・食事・腸内常在菌の構成(腸内細菌叢)・ミルクや母乳・日照時間など様々な要因が考えられていますが、現在これらのような原因を1型糖尿病と結びつける発症メカニズムはわかっていません。

自分の免疫機構によって自己の細胞を攻撃してしまう反応を自己免疫といいますが、1型糖尿病も自己免疫で発症すると考えられています。ウイルスへの感染や体調の変化で膵臓のランゲルハンス島というところにあるβ細胞(インスリンを作っている場所)を、免疫細胞が間違って攻撃してしまうことがあり、するとその結果インスリンが作られなくなってしまいます。この状態が1型糖尿病です。ただし、1型糖尿病のなかには上記のような自己免疫に関わる仕組み以外でも発症することがあり、その原因はよくわかっていません。

一方、近年増加傾向にある中学生や高校生の2型糖尿病は、遺伝的原因が約90%、肥満などの後天的原因が約10%ということがわかってきました。遺伝的といっても、複数の遺伝子によって形成された体質が重なって発症するため、発症のメカニズムはいまだよくわかっていません。もともとアジア人は欧米人に比べて糖尿病になりやすい体質であり、重度の肥満になる前に糖尿病を発症する可能性がある人種です。特に小児の2型糖尿病の場合、肥満が原因となっているのは10%以下であるため、生活習慣病と言い切ることはできません。

1型糖尿病ではインスリンが分泌される細胞の破壊が原因であるのに対し、2型糖尿病はインスリンの作用不足が原因となっています。インスリンは血糖値を下げ、細胞に糖を取り込む働きを持ちます。しかし、肥満や運動不足、食べ過ぎなどの生活習慣によって、インスリンは慢性的に過分泌されるようになります。そうなると徐々に膵臓が疲弊し、インスリンの分泌量が低下してきてしまいます。さらに、慢性的にインスリンが過分泌されている状態ですから、肝臓や筋肉などの組織に対してインスリンが効きにくくなってきてしまいます。この状態をインスリン抵抗性といいます。こうして組織にインスリンが十分に作用しなくなった状態を2型糖尿病と呼んでいます。

 

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