インタビュー

1型糖尿病とは。自己免疫によってインスリンが作れなくなる病気

1型糖尿病とは。自己免疫によってインスリンが作れなくなる病気
川村 智行 先生

大阪市立大学医学部附属病院 小児科新生児科講師

川村 智行 先生

この記事の最終更新は2016年03月12日です。

小児糖尿病の約8割は1型糖尿病であることを、記事1『小児糖尿病とは。病態とその原因』でご説明しました。では、1型糖尿病とはどのような病気なのでしょうか。1型糖尿病の患者数や年齢、症状について、引き続き大阪市立大学医学部附属病院 小児科新生児科講師である川村智行先生にお伺いしました。

1型糖尿病とは、膵臓のランゲルハンス島という場所にあるβ細胞が自己免疫によって壊されてしまい、本来β細胞から分泌されるはずのインスリンが分泌されなくなってしまう状態です。インスリン分泌を担うβ細胞自体が破壊されているために、体外からインスリンを補給しなければなりません。

1型糖尿病糖尿病全体(2型糖尿病を含む)から見ると5%以下であり、現在の日本において小児期発症1型糖尿病の年間発症率は10万人あたり1~2名となっています。この発症率は北欧やイタリアなどに比べるとかなり低いのが特徴です。しかし近年では、世界的に1型糖尿病の発症率が増加しており、環境要因との因果関係が疑われています。また1型糖尿病患者は、乳児から老年者まで幅広い年齢で発症することも特徴とされます。

1型糖尿病は大きく自己免疫性と特発性の2種類にわけることができます。自己免疫性のタイプでは、自分の免疫機構によって自己の細胞を破壊してしまうことが原因となります。一方、特発性とは原因がよくわかっていない糖尿病のことを指します。

また1型糖尿病は進行の速さによって、緩徐進行型、急性発症、劇症型といった3つに分類されることもあります。緩徐進行型では、発症後早期は食事療法や運動療法などで血糖値をコントロールすることが可能です。初期は一見2型糖尿病の状態と似ているのですが、数年かけて1型糖尿病の状態に移行していくため、1型糖尿病の治療としてインスリンを早期から投与します。

急性発症型は、最も子どもに多いタイプです。数週間から数ヶ月の期間で症状が進みケトアシドーシスという状態になりますので早急にインスリン療法が必要となります。

もう一つの劇症型は糖尿病の症状があらわれてから数日の間に、急激に状態が悪化してしまう非常に危険なタイプです。劇症型の約90%以上が成人であり、兆候として、前段階で風邪のような発熱がみられます。また妊娠後に発症した1型糖尿病の場合には劇症型が多いといわれています。急性発症型と劇症型は、インスリン治療が遅れると生命に関わりますので注意が必要です。

それでは、小児期発症1型糖尿病の症状とはどのようなものがあるのでしょうか。初期症状としては以下のようなものが挙げられます。

●のどが渇いて水をたくさん飲む。

●尿の回数が多く、1回の量も多い。おねしょが治っていたのに再開する。

●食べる量は多いのにもかかわらず、体重が減る

●全身がだるい

●嘔気と腹痛

●意識が低下する

このような症状があるようならば、できるだけ早急にインスリン療法を開始する必要があります。

インスリン療法を行っていても、治療による十分なコントロールが行われていない場合、早ければ数年後には糖尿病合併症が起こってしまいます。糖尿病合併症に関しては、1型糖尿病2型糖尿病は同じことがいえます。

糖尿病の3大合併症は、糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害です。糖尿病合併症の恐ろしいところは、よほど進行しないと症状がない点にあります。糖尿病合併症の早期発見には、眼科受診や検査が必要です。早期発見できれば、合併症の進行を止めたり遅らせたりすることができます。しかし発見が遅れると進行は止まりません。眼が見えにくい、体が浮腫む、足がしびれるなどの症状は、合併症も重症にまで進行している状態です。

ですからできるだけ当初からインスリン療法をきっちり行い、十分な血糖管理を行うことが重要となります。

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