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劇症1型糖尿病とは
生活習慣の変化から、現代では多くの人が糖尿病を意識しなければならなくなったといわれています。糖尿病は生活習慣の不摂生によって発症するイメージがありますが、必ずしもそうではありません。劇症1型糖尿...
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劇症1型糖尿病とは

公開日 2015 年 09 月 27 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

劇症1型糖尿病とは
花房 俊昭 先生

堺市立総合医療センター 院長

花房 俊昭 先生

生活習慣の変化から、現代では多くの人が糖尿病を意識しなければならなくなったといわれています。糖尿病は生活習慣の不摂生によって発症するイメージがありますが、必ずしもそうではありません。劇症1型糖尿病は1型糖尿病のひとつであり、不摂生とは関係がありません。そして放っておくと死に至ることもある非常に危険な病気でもあります。大阪医科大学医学部教授 花房俊昭先生に、劇症1型糖尿病とはどのような病気なのかについて解説していただきました。

劇症1型糖尿病とは

劇症1型糖尿病とは、インスリンを生産する膵島β(ベータ)細胞(すい臓ランゲルハンス島の細胞)が急速に破壊されることによって起こる疾患です。後の項で詳細について説明しますが、劇症1型糖尿病が発症する正確な原因はわかっていません。

健康な状態であれば、血液中の糖分(血糖)が上昇した場合、膵臓の膵β細胞から血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌され、血液中の糖分は肝臓や筋肉などの細胞に取り込まれ、血糖値が正常に戻ります。

しかし劇症1型糖尿病では、膵β細胞が急速に破壊されることによってインスリンが分泌されなくなり、急激に高血糖をきたします。死亡するケースも珍しくありませんが、回復したとしてもインスリンの生産ができないため、インスリン治療を続けていく必要があります。

劇症1型糖尿病の患者さんはどれほどの人数がいるか

前項でも簡単に触れましたが、劇症1型糖尿病の正確な原因は今の時点ではわかっていません。また、正確な統計がない状態ですが、急性に発症する1型糖尿病の約20%が劇症1型糖尿病と考えられています。日本では、1年の間に発症する急性1型糖尿病の患者さんは、およそ10万人に対して1.5人といわれていることから、劇症1型糖尿病は年間でおおよそ300人前後の方が発症しているのではないかと考えられています。また、愛媛県における1型糖尿病の疫学調査(愛媛スタディ)およびインスリン使用者数をもとにした調査から、日本における劇症1型糖尿病の有病者数は5000人~7000人程度ではないかと考えられています。

劇症1型糖尿病の原因、リスク

劇症1型糖尿病とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンを分泌する膵島β細胞が急激に破壊される疾患です。現時点で発症の正確な原因についてはわかっていません。ただ、様々な研究から、「遺伝素因(ある種のHLAタイプ)」「膵島へのウイルス感染」「ウイルス感染に対する過剰な免疫応答(ウイルスに対する免疫反応にブレーキが利かずに免疫系がウイルスに感染したβ細胞を攻撃してしまう)」の3者の関与によって発症すると推測されています。

劇症1型糖尿病の症状

急激な血糖上昇がおこる前に、約70%の患者さんに、上気道炎(咽頭痛、発熱など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐)などの感冒症状(いわゆる「かぜ」の症状)がみられます。そのときには、糖尿病の兆候はありません。しかしその数日後には、急激な血糖上昇のため、口渇、多飲、多尿、全身倦怠感がみられます。

注意しなければならないことは、全身倦怠感が強すぎて、口渇、多飲、多尿などの症状があっても患者さん自身がそれに気がつかず、そのため医師も糖尿病であると思い至らない場合があることです。しかし血液検査をすれば、あきらかに血糖値が高い状態が確認できます。重症化すると意識障害、さらには昏睡に陥り、早期に治療を開始しなければ死亡するケースもありえます。

劇症1型糖尿病の合併症

発症してから5年後に合併症が起こる確率は、劇症1型糖尿病と1型糖尿病の中で一番多いタイプである自己免疫性1型糖尿病で比較した場合、劇症1型糖尿病のほうが三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)(参照:「糖尿病合併症の基礎知識―糖尿病の真の怖さは合併症にあり」)の合併症が有意に高くなっています。しかしなぜ高いのかははっきりとは分かっていません。

HbA1c(参照:「HbA1cとは?」)の数字には有意差がなかったものの、血糖値の変動をあらわす指標と低血糖の頻度では有意差がありました。つまり、低血糖の頻度や変動の大きさが合併症の発症に影響している可能性があります。そのため、後述するように慢性期の治療としては「強化インスリン療法」という厳密な血糖のコントロールが行われます。

劇症1型糖尿病の検査

1型糖尿病とは、本来、インスリンを分泌する膵臓の細胞(膵島β細胞)が何らかの原因で破壊され、絶対的にインスリンが不足することによって起こる疾患です。1型糖尿病には、自己免疫の機序(本来異物から自分を守るべき免疫系が誤って自分自身を攻撃してしまう)によって膵臓のβ細胞が破壊される「自己免疫性1型糖尿病」と、それ以外の未だ不明の原因によってβ細胞が破壊される「特発性1型糖尿病」とがあります。

検査では、膵島構成成分に対する自己抗体の一種である「抗GAD抗体」などについて調べます。GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)とは、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞などに存在するタンパク質です。そして自分の体の免疫システムが誤ってGADを異物と認識し、作られてしまう抗体が「抗GAD抗体」です。

自己免疫性1型糖尿病では、この抗GAD抗体が陽性となります。一方、特発性1型糖尿病では抗GAD抗体などの自己抗体が陰性です。劇症1型糖尿病は、原則として抗GAD抗体が陰性であり、特発性1型糖尿病の中に分類されます。

また、劇症1型糖尿病では、血糖値が高くなるのにHbA1cは低いことが特徴です。血糖値が高いのにHbA1cがとても低いとはどういうことなのでしょうか。HbA1cでは、過去1−2ヶ月の血糖値の平均が分かるものです。劇症1型糖尿病ではほぼ1週間前まで血糖値が正常ですので、1−2ヶ月間の平均を示すHbA1cを測定しても、高い数字が出ないことは納得できます。

劇症1型糖尿病の治療

劇症1型糖尿病は突然発症し、発症してから悪化するスピードも非常に早いため、糖尿病症状が出てきてから1週間以内でケトアシドーシス(インスリンが分泌されないため高血糖になり、体が酸性になる状態)に陥ります。そのような場合は、すみやかな入院治療が必要です。入院の上、生理食塩水で輸液を行いながら、ただちにインスリン投与を開始します。劇症1型糖尿病は死に至る可能性もあり、とにかく早期に治療を開始することが大切です。また、急性期には糖分の入っていない輸液をするよう、注意が必要です。

急性期治療は入院して行うものですが、その後は日常的な治療、つまり慢性期の治療が必要です。慢性期の治療としては強化インスリン療法という治療法を行います。この治療は基本的に、通常の1型糖尿病(劇症1型糖尿病でない1型糖尿病)と同じものです。現在の医療ではインスリンをやめられるようになることはなく、一生治療を続ける必要があります。ただ、きちんと病院に通えばコントロールは可能な病気です。また、再生医療が進歩すれば将来的に根治的な治療が行える可能性もあります。

1950年生まれ。大阪大学医学部を卒業後、研究と臨床に携わり、1994年より大阪大学医学部講師。2000年より大阪医科大学医学部第一内科教授を務めた。糖尿病代謝・内分泌内科の専門医として、難病とされる劇症1型糖尿病の研究と臨床に携わるとともに、後進の指導に力を注ぎ、現在は堺市立総合医療センターで院長を務める。

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