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国立国際医療研究センター病院における膵島移植に関する取り組み

国立国際医療研究センター病院における膵島移植に関する取り組み
霜田 雅之 先生

国立国際医療研究センター病院 膵島移植診療科 診療科長、膵島移植センター センター長、国立国際...

霜田 雅之 先生

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1型糖尿病に対する膵島移植とは、ドナーの方に提供いただいた膵臓(すいぞう)からインスリンを分泌する膵島という細胞のみを回収し、局所麻酔下で患者さんの門脈(胃や腸、膵臓などの腹部の臓器から肝臓に流れる静脈)から膵島を注入する治療です。膵島移植を実施するにあたっていくつかの課題があり、その解決に向けて国立国際医療研究センター病院ではさまざまな取り組みを行っています。

慢性膵炎(まんせいすいえん)に対する膵切除術に伴う自家膵島移植(先進医療)も実施している同院にて膵島移植診療科 診療科長を務める霜田 雅之(しもだ まさゆき)先生に、膵島移植に関する新たな研究や大切にしていることについてお話を伺いました。

1型糖尿病に対する膵島移植はドナーの方からの臓器提供が必要であるために、移植できる症例数には限りがあります。それにより、膵島移植を希望している患者さんの中にはなかなか治療が受けられないという方がいます。また、1型糖尿病に対する膵島移植では拒絶反応を防ぐために免疫抑制薬を使用し続ける必要がありますが、免疫抑制薬による副作用が出てしまうことが懸念されます。

これらの課題を解決すべく、当センター研究所では2022年4月に膵島移植企業連携プロジェクトを立ち上げ、新たな膵島移植の研究・開発を進めています。本記事では、その一部をご紹介します。

取り組みの1つが、ブタの膵島を用いた異種膵島移植(ヒト以外の動物の膵島を移植する治療)です。実現すれば移植する膵島を比較的安価で大量に作れるというメリットがあります。

その一方で、異種膵島移植ではヒトの膵島を移植する膵島移植で起こる拒絶反応よりも強い拒絶反応が起こると予測されます。つまり、異種膵島移植を実施する場合には、より多くの免疫抑制薬を使用する必要があると考えられます。

その対策として、ブタの膵臓から取り出した膵島をカプセルに入れてから移植する方法を計画しています。カプセルの中に膵島を入れることで拒絶反応を和らげられれば、免疫抑制薬の減量・中止やそれに伴う副作用の抑制につながることが期待されます。

PIXTA
多能性幹細胞のイメージ図(イラスト:PIXTA)

iPS細胞やES細胞といった多能性幹細胞(体のさまざまな細胞に変化させることができる細胞)から人工的にインスリン分泌機能を有する細胞を作り、移植する人工膵島移植という治療の研究も進めています。多能性幹細胞を用いた人工膵島移植にはコストがかかることが予想されます。しかし、患者さん自身の細胞から必要数の膵島を人工的に作れるようになれば、免疫抑制薬が不要になったり、膵島移植の待機期間が解消されたりして、副作用を抑えた安全な治療の提供につながると考えています。

1型糖尿病の患者さんの多くは、インスリン療法をしっかりと続けていれば血糖値をコントロールすることができるでしょう。しかし、低血糖を繰り返しているような重症の1型糖尿病の患者さんであれば、日常生活に支障をきたしたり、命の危険にさらされたりする可能性があります。

そこで、適応条件に当てはまる患者さんには、1型糖尿病の根治的治療である膵島移植について一度医師に相談いただくことをおすすめします。患者さん自身がメリットとデメリットを理解されたうえで治療を受けるかどうか決断いただきたいと思います。

2024年1月現在、膵島移植を実施できる医療機関は限られており、関東圏では当院のみとなっています。人口の多い地域にある病院として、膵島移植を希望される患者さんに医療で応えていけるように努めています。

膵島移植に限った話ではありませんが、移植医療は一施設で完結する治療ではありません。そのため、院内での多職種の連携はもちろん、ほかの膵島移植実施施設との連携、日本膵・膵島移植学会をはじめとする各学会や臓器移植コーディネーターなどとコミュニケーションを取りながら進めていくことが重要です。また、知識や技術の維持、向上のために勉強会やシミュレーションを定期的に実施しています。

当院は1型糖尿病に対する膵島移植と、慢性膵炎に対する膵切除術に伴う自家膵島移植を実施している施設です。1型糖尿病の患者さんで低血糖に困っている、または慢性膵炎の患者さんで痛みに悩まされているといった場合には、膵島移植という治療があるということを知っていただき、ぜひ前向きに治療を検討いただきたいと思います。

膵島移植について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽に問い合わせください。

【問い合わせ先】
国立国際医療研究センター病院 膵島移植診療科
診療科長 霜田 雅之
電話:03-3202-7181(内線2776)
メール:mshimoda@hosp.ncgm.go.jp

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  • 国立国際医療研究センター病院 膵島移植診療科 診療科長、膵島移植センター センター長、国立国際医療研究センター研究所 膵島移植企業連携プロジェクト プロジェクト長

    霜田 雅之 先生

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