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インタビュー

劇症1型糖尿病の発見

劇症1型糖尿病の発見
花房 俊昭 先生

堺市立総合医療センター 院長

花房 俊昭 先生

糖尿病のうち、生活習慣病ではないタイプの1型糖尿病の中に、通常のものとは異なる病型があります。これは「劇症1型糖尿病」と言われています。大阪医科大学内分泌代謝内科教授の花房俊昭先生が、大阪大学で今川彰久先生と共に発見した病気です。ここでは、劇症1型糖尿病の発見に至った過程について、花房先生にお話をお聞きしました。

1型糖尿病においては、膵蔵のβ細胞が破壊されてしまうことによりインスリンが出なくなってしまいます。このインスリンが出なくなるメカニズム、つまりβ細胞が壊れてしまうメカニズムには「自己免疫性」と「特発性」の2つがあります。今まで、1型糖尿病の多くは自己免疫の機序(本来異物から自分を守るべき免疫系が誤って自分自身 [1型糖尿病の場合は膵臓のβ細胞] を攻撃してしまう)でβ細胞が壊されてしまうと考えられていました。一方で、特発性は自己免疫の関与が明らかではなく、原因がわからないままβ細胞が壊されてしまうものを指します。

1型糖尿病は典型的には「のどが乾き、数週間ほどのうちにどんどんやせていき、ケトアシドーシスになる」という経過をとります。しかし、1型糖尿病の中には非常に劇的かつ急激な経過をたどって発症をする方がいることが分かってきました。通常は数週間の経過で悪化するにも関わらず、わずか1週間ほどの経過で症状が急激に悪化し、場合によっては死に至ることもあったのです。

そこで、劇的な経過をたどった方の臨床データを調べてみると、血糖値は非常に高く700~800ほどである一方で、HbA1c(後述)がほぼ7%以下で、非常に低いという大きな特徴がありました。

血糖値が高いのにHbA1cがとても低いというのはどういうことなのでしょうか。HbA1cは、過去1~2ヶ月の血糖値の平均が分かる検査です。1週間前まで血糖値がまったく正常だった人が、急に血糖値が高くなったとしても、1~2ヶ月間の血糖値の平均値を示すHbA1cを測定すれば、高い数字が出ないことも納得がいきます。(一方で、数週間の経過で発症する1型糖尿病の方では、HbA1cは12%程度の数値でした。この場合は、ある程度長い期間にわたって血糖値が高くなっていることが示唆されます。)

このように、急激に1週間くらいで発症した方と、いわゆる「のどが乾き、数週間くらいでどんどんやせていきケトアシドーシスになる」という典型的な糖尿病の方々はどのように違うのかという点が大きな疑問でした。

そこで血液検査をしていくと、数週間を経過していた方は「抗GAD抗体(参考:「劇症1型糖尿病とは」)」が陽性で、急激に発症した人は抗GAD抗体が陰性であるという特徴が明らかになってきました。「抗GAD抗体が陽性」というケースでは自己免疫との関連が強く、「自己免疫性」の1型糖尿病と考えられます。

先述したように、当時1型糖尿病は自己免疫によるものが大半だと思われていました。その中で自己免疫と関係のない1型糖尿病が劇的な経過をたどるということが分かってきました。大阪大学を中心に5年間にわたって調べた急性発症の1型糖尿病の人のうち、56人中11人が抗GAD抗体は陰性であり、かつ劇的な経過をたどっていたのです。

また、大阪大学では1型糖尿病の原因を解明して適切な治療につなげていくために膵臓の生検(組織を実際に採取して行う検査)が行われていました。これは採取した膵臓の組織を顕微鏡で詳しく見て、膵臓のβ細胞がどのように壊されているかを明らかにするために行っていました。これによりβ細胞が自己免疫機序で壊されているのかそうでないのか、すなわち、「自己免疫性」であるのか「特発性」であるのかがよく分かります。そして生検の結果としても、劇的な経過で発症した1型糖尿病の人は、自己免疫以外の原因でβ細胞が壊されていることが分かりました。

大阪大学ではこのような形で検証を続け、1週間程度という短期間で劇的に発症し、なおかつ自己免疫性ではないタイプのことが多い「劇症1型糖尿病」という病気があることを2000年に報告しました。これがNew England Journal of Medicineという世界的に有名な雑誌に掲載され、より広く知られるようになったのです。

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