腹腔鏡下手術をはじめとする医療技術の進歩は、女性の選択肢を大きく広げました。子宮や卵巣など婦人科疾患に対する子宮温存術もそのひとつです。この20年で大きな進化をとげた婦人科領域における手術療法の移り変わりについて福岡山王病院 産婦人科部長の福原正生先生にお話を伺いました。
婦人科領域における外科手術は、この20年で大きく変化しました。私が大学を卒業した1985年頃というのは、開腹するのが当たり前の時代でした。20代であろうが、未婚だろうが、筋腫などがあれば子宮全摘以外の選択肢はありませんでした。その後、ここ20年ほどの間に腹腔鏡手術が普及して、より低侵襲な手術が行われるようになりました。また、技術の進歩で、それまでは子宮全摘をされていたようなケースでも子宮の温存ができるようになりました。
前任地である浜の町病院で、九州ではいち早く腹腔鏡下手術を取り入れたところ、県外からも低侵襲な手術を求めて多くの方が治療を受けに来られました。そして、子宮温存術を希望される患者さんも増えていったのです。1995年から18年間、前任地から現在の福岡山王病院にチームで移って以降も行った良性子宮疾患に対する手術療法の研究からも、その傾向が明らかとなりました。手術を受ける患者さんも増えたのですが、増加した手術数のほぼ大部分を占めていたのが温存術だったのです。
また一方で、子宮全摘術における術式についても大きな変化がありました。1991年頃まではほぼ全例で、おなかを開けて行う腹式子宮全摘術(TAH)を行っていましたが、当時は日本全国どこの施設も同様に、開腹による手術が第一選択でした。その後、GnRHアゴニスト製剤の登場で、大きくなった子宮を縮小することが可能となり、腹式から腟式(以降すべて修正しました。大変申し訳ありません)へと術式は移行していきました。
腟式手術というのは、おなかにはまったく傷をつけずに、すべて腟式に子宮を摘出する手術法です。「経腟分娩の経験がある」「おなかの中の癒着が軽い」「子宮の大きさが400グラム以下」などの適応条件がありますが、1995年には腟式子宮全摘術(TVH)が手術数の半数ほどを占めるようになり、1999年には子宮全摘術の70%が腟式によって行われるようになりました。
この頃から増えてきたのが腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術(LAVH)です。これはおなかに小さな穴を3か所開け、腹腔鏡を用いながら子宮を摘出する手術法です。子宮周辺の癒着の剥離などを腹腔鏡で行って、腟式に子宮を摘出するもので、腟式子宮全摘術が困難な方などに適応されます。
最近(2012年)のデータによると、術式の割合は、腟式子宮全摘術が30%、腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術が54%、腹式子宮全摘術が16%となっていて、腹腔鏡を用いた術式が開腹術を圧倒的に上回るようになりました。
子宮や卵巣、卵管などの状態を観察する、または手術を行うために用いられます。以前は、おなかを開けて開腹手術を行わなければなりませんでしたが、腹腔鏡を使うことでからだに負担のかからない検査および手術が可能となりました。おへそのくぼみに1センチほどの管である腹腔鏡(内視鏡)を挿入して、子宮や卵巣などをはじめ、周囲の腸や腹膜の状態などを観察し、必要な場合は手術を行います。
・手術は全身麻酔で行います。
・おなかに3か所穴をあけ、ここから内視鏡を挿入します。
・おなかの中をみるため、ガス(炭酸ガス)を入れるなどしておなかをふくらませます。
・おなかの傷には自然に溶ける糸を使用するため、抜糸などはありません。
福岡山王病院 副院長・産婦人科 部長
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