インタビュー

婦人科良性疾患の治療選択時のポイントについて

婦人科良性疾患の治療選択時のポイントについて
福原 正生 先生

福岡山王病院 副院長・産婦人科 部長

福原 正生 先生

この記事の最終更新は2016年02月13日です。

同じ診断名や症状であっても、個人差が現れるのが婦人科疾患の特徴のひとつです。治療の選択肢は広がりましたが、何より大切なことは、困った状態を改善するための最善の治療法を選ぶことです。婦人科良性疾患の治療選択時のポイントについて福岡山王病院 産婦人科部長の福原正生先生にお話を伺いました。

福岡山王病院では、お産や不妊症などの産科領域から、子宮や卵巣などの婦人科領域に至るまで、悪性を除くほぼすべての良性疾患の治療を行っています。良性疾患は、がんなどの悪性疾患と違って、すぐに治療が必要というわけではありません。同じ症状や診断名でも個人差があるため、患者さん本人がどの程度困っているのか、その程度によって治療の時期や方法も異なってきます。

治療が検討されるのは、日常生活に支障を及ぼすような月経時の痛みや多量の出血といった症状がある場合、あるいは子どもがほしいのに妊娠しにくいといった場合などです。子宮や卵巣などの婦人科疾患に限らず、その他の病気でも同じことだと思いますが、良性疾患については、どこで治療の一線を引くのかという判断は非常に難しいものがあります。

患者さんによっても個人差は大きく、症状が軽くても心配だからといって手術を希望される方もいれば、月経時の出血がひどくてヘモグロビン値が5~6 g/dlと正常値の半分程度に低下していても「手術は絶対にしたくない」と言われる方などさまざまです。そのため、お勧めの治療法をお伝えしながら、可能な限り患者さんの希望に沿いながら、困った状態を改善するための治療を行います。そのような中でも、最近は「子宮を残したい」という患者さんが結構多くおられます。他の病院で子宮全摘といわれて福岡山王病院に来られる方も少なくありません。

1995年から18年間、前任地から現在の福岡山王病院にチームで移って以降も、良性の子宮疾患に対する手術療法に関するさまざまな研究を行いました。この研究において、子宮全摘手術と子宮温存手術の割合をみてみると、当初子宮全摘術は8割強を占めていましたが、2009年には子宮温存術が7割となり、温存術が全摘術を上回るようになりました。今は昔のように、何でも子宮を全摘するという時代ではありません。

福岡山王病院では、腹腔鏡一辺倒というわけではありませんから、開腹手術がふさわしいという場合には、腹腔鏡手術は行いません。可能なのであれば傷が小さく、痛みも少ない腹腔鏡を用いた手術を行うことが理想ですが、すべて腹腔鏡でなければならないとは考えていません。

腹腔鏡下手術には適応があって、例えば子宮筋腫であれば、筋腫の大きさがだいたいおへその高さあたりまで、また個数については10個前後くらいまでが腹腔鏡下手術を行える限度です。腹腔鏡下手術では、おへそのくぼみにカメラのついた内視鏡を挿入しますので、それよりも上(胸部側)に筋腫がきているような場合は、おなかの中の全体像を把握することが難しくなります。周辺には腸や血管といった重要な臓器や組織がありますので、見えないところで何か起こってはいけないからです。

ただ、開腹術になった場合でも、より傷の仕上がりをきれいにするため、私は「メーラード法」という横切開を行っています。患者さんにとってベストな治療法を選択して、その中でより負担の少ない手術を行うことが低侵襲だと考えます。検討したけれども腹腔鏡下手術はダメだったという時にも、可能な限りの低侵襲手術を提供しています。

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