インタビュー

トランジショナルケア外来の実際

トランジショナルケア外来の実際
山村 健一郎 先生

九州大学 小児科 診療講師 医局長 /ハートセンター成人先天性心疾患外来

山村 健一郎 先生

この記事の最終更新は2016年04月15日です。

保護者主体の小児医療から患者さん本人が主体となる成人医療への移行のお手伝いを行うのがトランジショナルケア外来です。九州大学病院小児科医局長の山村健一郎先生にトランジショナルケア外来の実際についてお話をうかがいました。

まず、診療連携の支援としては、疾患の重症度に応じて小児科医や小児外科医、外科医や産科医などあらゆる診療科の先生方と連携をとって、さまざまな問題に対応しています。連携は院内のこともあれば、院外の先生のこともあります。

橋渡しを行うにあたっては、専門とする先生方の情報が必須となりますが、そのあたりの情報については、各科の先生方にも協力を仰ぎ、適切な施設の情報を提供できるように努めています。

医療・社会保障制度に関するサポートについては、小児と成人とでは利用できる制度が異なりますので、小児から成人に移行しても、適切なサービスや公的支援が切れ目なく受けられるためのお手伝いをしています。

例えば、これまで小児慢性特定疾患は二十歳になると医療費補助が切れて三割負担となっていました。しかし、国の難病対策によって難病に対する医療費補助が受けられる制度ができました。対象となる小児疾患患者さんも多数おられるので、制度が受けられるようサポートしています。また、身体障害者手帳や障害年金などの制度については、制度のことを知らずに受けていなかったという方も過去におられたので、そのあたりの情報についても院内にある専用の窓口で聞いてもらうように促しています。

小児慢性疾患の患者さんというのは、成人してからご自分の病名を正しく理解されていないという方が少なくありません。これは小児慢性疾患の場合の特徴のひとつでもありますが、例えば心疾患であればお子さんが3歳くらいまでに治療を終えることが多いため、患者さん本人は治療を受けた当時のことを覚えていないということがほとんどです。

保護者の方の中には、なんとか病気を持つ子どもを守りたいという強い思いや責任感をお持ちの方が多いため、どうしても過保護に育てられることが少なくありません。18歳くらいのお子さんの診察時などには、お子さんに尋ねているのに、お母さんが代わりに答えられるということは日常的によくみられることです。

そこで、保護者主体の小児医療から患者さん本人が主体となる成人医療への移行を促し、患者さん自身が自分の健康管理を行って、自立した生活を送れるよう支援を行います。成長して就職や結婚、妊娠や出産とさまざまなイベントを迎える中で、社会的な問題に直面することもあるでしょう。外見上は健康そうに見えても実際は健康上の問題を抱えていることも少なくありません。さまざまな問題を共に考え、切れ目のない医療や社会福祉サービスを受けられるお手伝いをするのがトランジショナルケア外来の役割なのです。

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    山村 健一郎 先生

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