手は私たちの体の中でももっとも精密な構造を持つ運動器官です。手を中心に肘を含めた腕までを専門とする「手外科」という診療科があります。牧田総合病院副医局長・整形外科副部長であり、日本手外科学会認定手外科専門医の平出周先生に手外科専門医についてお話をうかがいました。
手外科の専門医制度は2007年に発足しました。それまでは「手の外科」と呼んでいましたが、専門医制度か始まったときに2009年に学会の名称も「日本手外科学会」に変わりました。
手外科専門医になるには、日本整形外科学会または日本形成外科学会の専門医を持っている医師が5年間研修をしてから専門医試験を受けます。日本手外科学会が定めた手外科認定研修施設があるのですが、この牧田総合病院も研修基幹病院になっています。
私が手外科を志した理由のひとつには仲が良かった先輩の影響がありましたが、手は体の中でも非常に大事な部分なので、もともと自分でも興味を持っていました。私が以前勤務していた東京慈恵会医科大学附属病院には「手の外科」の診療班というものがありましたので、そこでずっと手外科の診療に携わって専門医試験を受け、認定医になりました。
現在、この牧田総合病院では手外科の診療だけを専門に行なっているわけではありません。整形外科領域全般の診療を行っている中で、手外科以外のものが半分以上になります。ただし、私が非常勤で週1回勤務している川崎市の太田総合病院の「手外科センター」では手外科の専門医が3人いて、手外科に特化した診療を行っています。
近隣の病院からの紹介というケースもありますが、やはり手外科の認知度はまだまだ低いと感じています。
手外科専門医は全国で800人を超えたところですので、全国どこでも専門医にかかることができるというわけではありませんが、都市部にはかなり多くの専門医がいます。名古屋大学医学部附属病院には独立した診療科として手の外科がありますし、新潟には「新潟手の外科研究所病院」というところがあります。また、奈良県立医科大学も手外科では昔からよく知られています。そういった施設では手外科だけの診療科を設けているところもあります。
私も切断した指をつなぎ合わせるような手術を行うことがありますが、最近は工作機械なども安全に配慮されているためか、指の切断などで来院する方は減っています。私が大学病院にいた当時に比べると、外傷自体が減っているように感じています。職場環境的にも日本はかなり安全になってきているのでしょうが、この近くには東京労災病院があるので、患者さんがそちらに行っているということもあるかもしれません。
実は切断した指の再接着というのは日本で初めて行われたものです。奈良県立医科大学名誉教授の玉井進先生(現・奈良手の外科研究所所長、日本手の外科学会初代会長)が1965年に世界で初めて指の再接着に成功しました。ですから日本の手外科は世界的に見ても高いレベルにあると思います。
ただし、今は症例数では台湾などのほうが圧倒的に多くなっています。おそらくかつての日本がそうであったように、手の外傷などが多いのではないでしょうか。日本がリードしてきた手外科の分野をもっと多くの方に知っていただくとともに、私も若い医師の育成といった面でも貢献していきたいと考えています。
牧田総合病院 整形外科副部長
平出 周 先生の所属医療機関
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