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インタビュー

小児漢方の特徴について

小児漢方の特徴について
宮田 潤子 先生

九州大学 大学院医学研究院保健学部門 講師

宮田 潤子 先生

小児に漢方と聞くと意外だと思う方も少なくないのかも知れません。しかし、小児外科の領域で漢方は以前から注目されていた治療法なのだといいます。

九州大学病院小児外科の宮田潤子先生に小児への漢方治療の実情についてお話をうかがいました。

九州大学病院では、2015年に小児漢方外来を開設しました。対象は小児で、肛門周囲膿瘍などの疾患では新生児から漢方を投与することもありますが、一般的には乳幼児期以降に多くなります。一応、上限は15歳までと区切ってはいますが、小児科や小児外科などで治療を続けている方は15歳を超えても、成人でも診療を行っています。それ以外の成人の方については、当院総合診療科の漢方外来が成人中心に診療を行っておりますので、そちらをご紹介しています。

※成人の漢方治療についてはこちらをご覧ください。「原因のない不調や「未病」を治す漢方医学の考え方-西洋医学との違い」九州大学大学院医学研究院地域医療教育ユニット准教授 貝沼茂三郎先生

小児漢方外来といっても基本的には成人の漢方診療と変わりはありません。漢方治療を行うにあたって適切な方剤(処方)を決めるための物差しとなるのが「証(しょう)」と呼ばれるものですが、この証をとらえるのに「望・聞・問・切」という四診を行います。

・表情 : いらいら、元気がない

・顔色 : 顔が赤い、青白い、口唇

・歯ぐきの色

・歩き方

・服装 : 真冬に半袖

・半ズボン、暑い時期に厚着するなど

・舌の状態を観察

・声 : 大きさ、張り、話す口調

・呼吸音

・嗅ぐ : 体臭、口臭

・病歴、症状が出るときの状況

・食事 : 偏食の有無、陰性食品摂取の有無

・睡眠 : 睡眠がとれているか、中途覚醒・悪夢の有無

・排泄 : 便の頻度、硬さ、臭い

      尿の頻度、濃さ、量

・ストレスの有無

・入浴時間の長さ

・水分摂取の状況

・食後の眠気

・疲れやすさ(朝か夕方か)

・寝汗の有無

・手足の冷え

・腹部の診察

皮膚の乾燥

西洋医学では疾患や症状に対して薬剤を処方するわけですが、漢方医学では独自の診断基準で方剤を決めていきます。そのため、先ほどお話した四診が非常に重要になってくるのです。漢方医学で使われる証には、以下のようなものがあります。

・虚実 : 体力や体格など病気に対する抵抗力を意味するもので、病気に対して抵抗力が充実している状態を実証といい、弱っている状態を虚証といいます。

・寒熱 : 寒がりや暑がりの意味です。新陳代謝が低下して冷えがある状態を寒証といい、新陳代謝が亢進して熱感がある暑がりの状態を熱証といいます。

・陰陽 : 活動性のことで、陰は寒証に近く、陽は熱証に近い状態のことです。一般的に子どもは陽実証といわれています。

西洋薬と違って、漢方にはさまざまな種類があるため選択肢も広がります。もちろん、東洋医学一辺倒では不足するところもありますし、西洋医学だけでは補えない部分もあるということは実際に臨床の現場でも実感しているところです。その辺りを互いに補完し合いながら治療できるのが日本の医療の特徴でもあるのだと思います。

例えば、西洋医学で用いる緩下剤であれば数種類しかありませんが、漢方薬だとさまざまな種類があるので、選択肢が広がり効果にも期待が持てるという親御さんも少なくありません。また、西洋薬で治療がうまくいかなかった場合でも、「漢方なら」といって安心感を持って受けられる方も多いように感じます。

その一方で、漢方というと苦いといったイメージがあります。ところが、子どもによく使う漢方薬には甘いものが実は多いのです。例えば、咳のときに使う五虎湯(ゴコトウ)や麦門冬湯(バクモントウトウ)がありますが、これらは甘いお薬です。

その他、夜泣きが強かったり、ひきつけやかんしゃくを起こしたりするとき使う、甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)には甘味調味料として使用される甘草や棗の実である大棗、小麦からできているのでとても甘いお薬です。甘すぎて飲めないという人もいらっしゃいます。

とはいっても、西洋薬と比べると飲みにくいものもあるため、さまざま工夫をして飲んでもらうこともあります。一般に流通している漢方の粉薬はエキス剤といって、お湯で煎じて煮出した薬の成分をインスタントコーヒーのように粉にしたものですから、内服する時には、コップ半分くらいのお湯に溶かして、食前にお茶のように飲んでもらうというのが基本的な飲み方です。

しかし、それができない場合には、小皿に薬を出し小さじ1杯程度の水で練ってもらいます。するとお薬がスプーンに乗るくらいの量になるので、それを一口でお子さんの口に入れてもらいます。ここでのポイントはひと口で飲んでもらうという点です。小さなお子さんは、一度口に苦いものが入ると、次は口を開けてくれなくなるからです。お薬を口に入れた後は、母乳を飲んでもらったり、ジュースを飲んでもらったりして流し込んでもらいます。このときに飲ませるものは、お子さんが好きなものを選んであげるといいと思います。

(ミルクに混ぜると、赤ちゃんがミルク嫌いになることもあるので、お薦めしていません。)

それでも飲めない場合は、アイスクリームやチョコクリームなど甘味のあるものを混ぜたりもしますが、それも効果がないときには、お薬の味を薄くして、お茶のように水筒に入れて飲んでもらうこともあります。小さなお子さんの場合には、お母さんに頑張ってもらわなければなりませんので、お母さんの熱意も必要になってきます。(熱には強いので、お料理に混ぜたり、クッキーを焼くときに混ぜこむというレシピもあります。)

漢方薬の処方については、成人の投与量が3包分3のものであれば、小児の場合、体重10キロであれば1包分2、体重が20キロであれば2包分2、30キロ以上であれば3包分3で処方します。あるいは体重1キロあたり0.2~0.3グラムを「分2」にして処方します。基本的には先ほどお話した証を検討して処方しますが、その他、論文や学会で報告されたエビデンスに基づいて選択する場合などもあります。

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