術後の体調がおもわしくないときに、少しだけ漢方薬を利用することで、調子がよくなることがあります。小児漢方外来という全国的にも珍しい取り組みをスタートした九州大学病院小児外科の宮田潤子先生にお話をうかがいました。
九州大学病院では、2015年に小児漢方外来を開設しました。実際には開設する1年ほど前から稼働していたのですが、正式に外来診療をスタートさせたのは2015年のことです。小児領域、特に小児外科においては、以前から漢方の効果が注目されており、漢方を活用する小児外科医は増加しています。私も実際に前任地である麻生飯塚病院にて小児漢方を臨床の現場で実践するなかで、有効性があるとの手応えを感じていました。
日本小児外科漢方研究会といって、今年で第21回目を迎える研究会があります。このような研究会においても、術後の経過が思わしくなかったり、原因はわからないものの体調が悪いというお子さんに漢方を使うと効果があったという報告が増えてきたのです。
例えば、小児では鎖肛(さこう)やヒルシュスプルング病などに多いのですが、手術によって肛門を形成したり、病変部を取り除いているにも関わらず、術後の排便機能が思わしくない状態が続くことが少なからずみられます。便秘に対する緩下剤あるいは下痢に対する止痢剤等の西洋薬だけでは排便管理がうまくいかない患児に対して、漢方を処方すると非常に効果があったという報告が出されるようになりました。つまり、手術だけでは治しきれない部分を補完という形で漢方が広がっていったのだと思われます。成人の場合でも、外科領域で大建中湯(だいけんちゅうとう)が広がったのと同じような感じなのではないかと考えられます。
当外来で漢方を使用している疾患としては、以下のようなものがあります。
また、症状の改善を目的として行われる漢方治療の対象となるものには、以下のようなものがあります。
小児漢方外来では、幅広い疾患を対象としています。小児科疾患に伴う諸症状や、自閉症スペクトラム、不登校などの諸症状等に対しても漢方治療を行うことがあります。また、アトピー性皮膚炎に対しても、皮膚科の先生に外用薬を処方してもらいながら、体質改善のために漢方薬を処方するということも行っています。
西洋医学や西洋薬は、例えば便が出なければ「便を出す」、皮膚がカサカサしているのであれば「保湿する」といったように、病気の一点だけを治すものですが、漢方医学では、からだ全体を治すというとらえ方をします。からだのバランスを整え、体質を改善することで、症状を総合的に治していくという観点が漢方治療なのです。
九州大学 大学院医学研究院保健学部門 講師
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