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日本の公立病院を統括する全国自治体病院協議会の取り組み
全国に約900ある公立病院を管轄する全国自治体病院協議会。1953年の設立以来、地域の健全な医療を確保し地域住民の健康と命を守るために、各地域への呼びかけや最新事業の導入、現代社会の状況を踏まえ...
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日本の公立病院を統括する全国自治体病院協議会の取り組み

公開日 2017 年 04 月 20 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

日本の公立病院を統括する全国自治体病院協議会の取り組み
邉見 公雄 先生

公益社団法人全国自治体病院協議会 会長 / 兵庫県 参与

邉見 公雄 先生

全国に約900ある公立病院を管轄する全国自治体病院協議会。1953年の設立以来、地域の健全な医療を確保し地域住民の健康と命を守るために、各地域への呼びかけや最新事業の導入、現代社会の状況を踏まえた対策の検討などを行っています。地域の医療を支え続ける全国自治体病院協議会ですが、同会会長の邉見公雄先生は、地域の良い医療と良い病院は、院長でも市長でもなく地域にお住まいの方々の力によって作られるといいます。今回は邉見公雄先生に、全国自治体病院協議会の取り組みと課題、そして会長としての思いをお話しいただきました。

全国自治体病院協議会とは?

全国自治体病院協議会は、1953年に設立した元厚生労働省所管の公益法人で、今は総務省との関係の深い公益社団法人となっています。1962年10月までは全国都道府県立病院協議会と呼ばれていました。各市町村が設立した組合からなる公立病院や市民病院など、会員である自治体病院や診療所を統括し、各地域の健全な医療を保つために、医療の質の評価や総合診療専門医の育成などの様々な取り組みを行っています。

全国自治体病院協議会が取りまとめる自治体病院の数、所在地

日本列島

北は北海道稚内市から南は石垣島まで、2017年現在、日本全国に約890の自治体病院(診療所を含む)が存在します。これは日本病院の13%、病床数では15%を占める割合です。また、本邦における周産期医療や臨床研修に関しては、その30%前後を自治体病院が担っているといわれていますし、SARSや結核などの感染症に対する政策医療も自治体病院が主導となって取り組んでいます。

しかし、平成の大合併や人口減少が加速する以前には12000を超える数の自治体病院が存在したことを考えると、その規模は著しく縮小してしまっています。地域医療を健全に運営し続けるためにも、今後は再び自治体病院に参画する病院を増やし、規模を拡大させなければなりません。

全国自治体病院協議会の役割と取り組み

全国自治体病院協議会の主な役割は、経営指導(各自治体病院へのアドバイス)、政策への要望の実現のための活動、研修・教育の3つです。

全国自治体病院協議会の組織のなかには、下記の8つの部会と1つの特別部会が設けられています。看護部会には看護師、薬剤部長部会には薬剤師など、各部会にはそれぞれの専門家が所属し、各自治体病院の医療をレベルアップさせることを目的として、部会ごとに専門的事項に関する調査研究や研修を行います。

【全国自治体病院協議会 部会一覧】

  • 看護部会
  • 薬剤部長部会
  • 臨床検査部会
  • 臨床工学部会
  • 事務長部会
  • 栄養部会
  • リハビリテーション部会
  • 放射線部会
  • 精神科特別部会

また全国自治体病院協議会の使命は、地域住民の命を守ることです。自治体病院は各地域のリーダーとなる医療機関ですから、仲間の自治体病院や民間病院との連携も意識したうえで、その地域に最適な医療を提供するよう努めています。

たとえば救急であれば、患者さんが運ばれてきたら絶対に断らないように常に人員を配置するよう求めたり、災害医療対策の整備や備蓄を行ったりすることも、全国自治体病院協議会の役目だと考えます。

自治体病院同士の連携で地域住民の命を守った実例―熊本地震に伴う周産期医療

地震により崩れてしまった道路

2016年4月に発生した熊本地震により、熊本市民病院という自治体病院のひとつが大きなダメージを受けました。ご存知のように、熊本地震は4月14日と4月16日の2回に渡り大規模な地震が発生しています。熊本県の市民病院は、1回目の地震が起こった時点では引き続き患者さんを受け入れていたのですが、2回目の地震で完全に病院が稼働不可能となり、他県の自治体病院に患者さんを送るしかありませんでした。

熊本市民病院には30床規模のNICUがあったため、乳幼児の搬送が最大の急務でした。ほとんどの患者さんが体重1,000g未満、28週未満の未熟児で、重い先天性心疾患を抱えていたり、自力では呼吸ができなかったりと状態が悪く、搬送も極めて慎重かつ迅速に行わなければならなかったのです。

しかし、病院同士の連携と絆の力により、全員の患者さんを無事24時間以内に他院に搬送することができました。これは相互援助協定のもと、熊本市民病院と九州地方の各自治体病院の院長が連絡を取り合い、スムーズに情報を共有してドクターヘリや救急車、ドクターカーを稼働できたことが大きな理由です。こうした緊急時の周産期医療においては、強靭なネットワークを持つ自治体病院だからこそ迅速に対応できるという強みがあります。

参考:2016年6月30日 第5回 周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事禄)

全国自治体病院協議会が行う最先端事例―医療の質の評価から高度医療の提供まで

医療の質の評価・公表等推進事業

紙の資料

現在、新事業「医療の質の評価・公表等推進事業」の取り組みを強化している最中です。

昨今の医療技術の進歩とともに住民の方々のニーズも多様化し、自治体病院としてしっかりと前項で述べた役割を果たしているかという「医療の質」が現代では問い直されています。評価軸としては医療事故の頻度、患者満足度、救急車の拒否(どれだけ救急車を稼働し、どれだけ受け入れるか)、地域の分娩率と出産への貢献度、他の診療所からの紹介率・診療所への逆紹介率などがあります。たとえば、他の診療所からの紹介率が高いほど、その病院は地域で信頼されている証拠といえます。

全国自治体病院協議会はこうした面々から各病院の医療の質を評価し、自治体病院の質を確保したいと考えています。

各々の病院が全国自治体病院協議会による医療の質の評価・公表等推進事業に参加することは、ベンチマーク(物事の基準となる水準点)はもちろん、日本の医療のレベルアップにも貢献できると確信しています。特に精神科医療の質の評価は世界各国から大きな反響を呼び、さらなる継続が求められます。

総合診療専門医の育成

地域医療の質の確保を主務とする全国自治体病院協議会では、地域志向を持って全人的に診ることのできる総合診療専門医の育成にも注力しています。

3月25日、大阪府立成人病センターから改称され開院する大阪国際がんセンターにも、総合診療専門医の研修カリキュラムが設置されます。このように既存の自治体病院にも裾野を広げ、地元の行政や医師会にも呼びかけを行い、総合診療専門医の育成を推し進めています。

小児がんを最先端技術で治す!小児専門粒子線治療の施設を設立

親子

がん治療として近年注目を集めている粒子線治療は、民間病院ではなかなか実施できない治療法の一つです。また、腫瘍医や麻酔医など専門医の配置が必須となるため、小児がんに対する粒子線治療が可能な医療機関は現在極端に少なく、多くの子どもが粒子線治療を受けられない現状がありました。

こうした状況を踏まえ、2016年5月にポートアイランドに新築移転した兵庫県立こども病院および粒子線医療センターの附属施設として、小児がんへの粒子線治療に特化した新たな粒子線治療施設を設立中です。2017年3月現在、順調に工事が進んでおり、間もなく竣工式が行われる予定です。

新施設には韓国、フィリピンなどのアジア諸国やロシアなどからも患者さんが訪れると予測されています。

※病院パンフレットはこちら:https://web.pref.hyogo.lg.jp/bk01/documents/ryushi_pamphlet.pdf

全国自治体病院協議会の課題―過疎地域への対応

全国自治体病院協議会の現在の課題は、過疎化する地域への対策です。

過疎地域では公共交通機関が続々と撤退しているので、患者さんが病院に来られないのです、このため、在宅医療の重要性が高まっていると考えます。つまり、患者さんに来ていただくのではなく、医療従事者が患者さんのところに向かう医療の在り方です。過疎地域での在宅医療は、今後求められる医療のあり方といえるかもしれません。

しかし田舎の場合、医療従事者が各地の患者さんのご自宅に足を運ぶ在宅医療は、極めて実現が困難な状況です。一人の患者さんのご自宅へ向かうだけでも、往復2時間ほどかかることも少なくないので、効率が悪く採算が取れないのです。

また、看取りのために過疎地域に在宅医療を導入するかも考えなければなりません。夜中、看取りのために患者さんのご自宅を回っていると、過疎地域の医師は超過勤務続きになってしまいますし、次の日の診療にも影響が生じるでしょう。とはいえ医療のないところに人は住めませんから、その地域の方々は別の町に移ってしまい、田舎はますます空き家ばかりになっていきます。この点を速やかに解決することが、現在の課題だと考えています。

良い医療は地域住民が作る―邉見公雄先生からのメッセージ

邉見先生

私たち全国自治体病院協議会は、良い医療を効率的に、地域住民の方々とともに作り上げるような、全員参加型の医療の実現を目指しています。

私が名誉院長を務める赤穂市民病院でも、院長就任時から同様のスローガンを掲げ、開放的な病院の運営を意識してまいりました。

自治体病院や市民病院は市長・村長の病院でもなければ院長の病院でもありません。その地域に住む市民の皆さんの病院です。自治体病院のもっとも偉大な支援者は地域住民であり、各地の自治体病院を栄えさせるも衰退させるも、地域住民の皆さんの行動次第なのです。病院を町のコミュニティセンターにするためにも、積極的に地域の病院を活用していただきたいと思います。全国自治体病院協議会は、地域の方々と地域の病院を繋ぐ架け橋になるために今後も様々な取り組みを進めていきます。

 

赤穂市民病院院長として地域と一体になった医療の運営に関わったのち、現在は全国自治体病院協議会会長として日本中の公立病院を管轄する。「良い医療を効率的に、地域住民の方々とともに作り上げる」ことを目指し、地域の病院の現場から国の医療政策、赤穂観光大使としての地域振興に至るまで幅広く活躍を続けている。