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心臓移植の適応-重視される適応基準とは?
心臓移植とは、他の方から心臓の提供を受け、自身の心臓として植え込むことで延命とQOL(生活の質)の向上を目指す治療法です。国立循環器病研究センター病院は、国内有数の心臓移植の実績を有する医療施設...
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心臓移植の適応-重視される適応基準とは?

公開日 2017 年 11 月 13 日 | 更新日 2017 年 11 月 14 日

心臓移植の適応-重視される適応基準とは?
福嶌 敎偉 先生

国立循環器病研究センター病院 移植医療部 部長・臨床栄養部長(併任)

福嶌 敎偉 先生

心臓移植とは、他の方から心臓の提供を受け、自身の心臓として植え込むことで延命とQOL(生活の質)の向上を目指す治療法です。国立循環器病研究センター病院は、国内有数の心臓移植の実績を有する医療施設です。

同病院の移植医療部 部長である福嶌 敎偉(ふくしま のりひで)先生は、日本で心臓移植が開始された当初から心臓移植に携わっていらっしゃいます。福嶌先生によると、心臓移植の適応決定には「移植された心臓を大切にできるかどうか」が重視されるそうです。それはなぜなのでしょうか。

今回は、国立循環器病研究センター病院の福嶌 敎偉先生に心臓移植の適応決定の流れや生存率など、心臓移植の現状をお話しいただきました。

心臓移植とは? 移植件数や待機者数

2010年から心臓移植は増加傾向にある

心臓移植とは、重度の心不全(心臓の機能が極めて低下した状態)の方に適応され、亡くなった他の方の心臓を植え込むことで延命とQOL(生活の質)の向上を目指す治療法を指します。

1997年に施行された臓器移植法では、臓器の提供には本人の書面での意思表示が必要でしたが、2010年の改正によって本人が生前に拒否をしていなければ、家族の承諾さえあれば提供が可能になりました。

以下の表は、日本における心臓移植数の推移(日本心臓移植研究会レジストリー調べ)です。2010年の改正に伴い、心臓移植の件数が増加していることがわかっていただけるのではないでしょうか。

心臓移植数の推移

▲日本心臓移植研究会レジストリー調べ

待機患者数と待機年数

移植を受けるためには、日本臓器移植ネットワークへの登録が必要です。移植件数だけではなく、同ネットワークへの移植希望登録者数も増加しており、全国で約500名の方が移植を待機しているといわれています。現状では、登録後3年近く待機し、心臓移植を受ける方が多いでしょう。

心臓移植の対象者と適応ルール

心臓を提供する方には、特に年齢制限がありません。そのため、臓器提供は0歳から可能です。できれば60歳までが望ましいとされていますが、医学的に提供が可能と判断されれば何歳でも提供することができます。実際に、60歳以上の方でも臓器提供をされる方はいらっしゃいます。

また、心臓移植を受ける患者さんは、65歳未満が望ましいとされています。そのため、移植希望登録は64歳までと定められていますが、移植自体は65歳以上であっても適応されています(2017年現在、登録日が65歳であると、たとえ誕生日であっても移植できません)。たとえば、50代で登録し、69歳で心臓移植したケースも存在しています。

18歳未満の方の心臓は18歳未満の患者さんに提供

お話ししたように心臓の提供者には年齢制限がないため、18歳未満の方の心臓が提供されるケースもあります。このように18歳未満の方が提供者の場合には、日本では、同じく18歳未満で登録した方に優先的に移植されるようになっています。

これは、患者さんの生存を考慮することに加え、提供者のご家族の心情を考慮してのことです。幼くして亡くなったお子さんの心臓がなるべく長く動くよう考慮し、日本ではこのようなルールができています。

がんの治療後5年経過していない方は移植の適応外

また、がんの根治手術後5年経過していない方は、移植の適応にはなりません。このため、がんの手術をした場合には、登録までに5年待機しなくてはいけません。現在は、強心剤(心臓の働きを強める薬剤)の点滴や、体の外に血液ポンプのある体外設置型人工心臓などの治療を受けながら待機をし、5年後に移植が適応となるケースもあります。

心臓移植の適応疾患

適応疾患で多いものは8割を占める拡張型心筋症

以下は、心臓移植が適応となった疾患の割合(日本心臓移植研究会レジストリー調べ)です。最も多い疾患は、全体の約8割を占める拡張型心筋症です。拡張型心筋症とは、全身に血液を送り届ける収縮能力が低下することによって心臓が拡張してしまう疾患を指します。

心臓移植が適応となった疾患の割合

▲日本心臓移植研究会レジストリー調べ *上図のdextrocardiaは、右胸心を指す

心臓移植希望登録までの流れ

では、心臓移植はどのように決定されるのでしょうか。心臓移植を受けるためには、日本臓器移植ネットワークへの登録が必要になります。ここでは、登録までの流れをご紹介します。

心臓移植検討会・適応評価検討委員会の承認が必要

まず、何らかの心疾患によって内科的・外科的治療で治療することが難しいと判断された場合に、患者さんへ心臓移植ができる施設や人工心臓を扱う施設が紹介されます。

しかし、紹介された患者さんがすべて移植の適応となり、移植希望者として登録されるわけではありません。治療によって改善されるケースもありますし、移植に向かない方もいらっしゃるからです。

たとえば、私たち国立循環器病研究センター病院では、もともと治療を受けていた医療機関に当院の医師を派遣し、患者さんの状態やこれまでの検査結果を確認します。さらに、移植後の治療を続けられそうか、ご家族のサポートの有無やご本人やご家族の心情などを確認します。また、当院が位置しているのは大阪です。地方に暮らす方の場合、治療のために大阪まで来ることができるかどうかも確認します。

その上で、当院の心臓移植検討会にて移植の適応が判断されれば、日本循環器学会の適応検討委員会にて承認を受ける必要があります。日本循環器学会の適応検討委員会にて承認を受けることができれば、登録が可能になります。

すべての承認を受け、移植希望者として登録するまでにはトータルで2か月程度を要します。

50例以上の実績を有する3施設は、より短期間で登録が可能

心臓移植の実績が50例以上ある3施設(国立循環器病研究センター病院・東京大学医学部附属病院・大阪大学医学部附属病院)は、自分たちの医療機関だけで登録を判定することが可能です。このため、2〜3週間ほど通常のケースよりも短期間で登録することができるでしょう。

この場合、移植希望者として認定・登録後に、日本循環器学会に登録者の情報を提供する必要があります。さらに、実際に心臓移植が適応された際には、移植が本当に正しかったのかどうかを日本循環器学会によって審査されます。

状態が悪い場合には3〜4か月かかるケースも

お話ししたように、登録には1〜2か月程度を要しますが、これは患者さんの状態によって異なります。たとえば、全身状態が悪化し肝臓や腎臓の状態が悪ければ、治療をしてから登録するケースもあります。このように状態が悪い場合には、3〜4か月程度かかることもあるでしょう。

心臓移植の大切な適応基準

移植された心臓を大切にできるかどうか

心臓移植の重要な適応基準の一つは、移植された心臓を大事にできるかどうかです。その判断は非常に難しいのですが、薬の服用や日常生活の制限をきっちりと守ることができているかどうかを考慮し、判定します。

移植後は、必要な薬の服用や日常生活の制限など、守っていただかなければいけないことが数多くあります。せっかく心臓を移植したとしても、その後の治療や決まりをきっちりと守ることができなければ、生存が難しくなってしまうからです。

このため、病状の考慮はもちろんですが、治療や制限をきちんと守り、いただいた命を大切にできるかどうかを重視し、適応は決定されます。

心臓移植の累積生存率

心臓移植における日本の治療成績は、世界と比較して非常に良好です。移植後10年の累積生存率は世界では約60%なのに対し、日本では90.5%を誇っています(日本心臓移植研究会レジストリー調べ)。

このように、日本の心臓移植は、移植後の生存率が非常に高いという特徴があります。

心臓移植の累積生存率

▲日本心臓移植研究会レジストリー調べ

なぜ日本の治療成績は良好なの?

ではなぜ、日本の治療成績は良好なのでしょうか。私は、日本人の気質が関係していると思っています。一般的に、日本人は真面目で我慢強い方が多いために、治療を遵守する方が多いのではないでしょうか。さらに、移植の適応を決定する際には治療をきっちりと守れる方を選んでいるという理由もあるでしょう。

また、移植を待機する期間も影響しているのかもしれません。日本では、1年以内に移植できる人はまれです。2年以上待機し移植を受けた方は、命のありがたみを感じるのではないでしょうか。

 

心臓移植(福嶌 敎偉先生)の連載記事

子どもの頃に、和田心臓移植(1968年に和田寿郎教授が主宰する札幌医科大学胸部外科チームによって行われた心臓移植)を知り、死体臓器提供の難しさを感じたことがきっかけとなり、医学部へと進学。小児心臓外科の研修中に、どんなに良い手術や治療をしても助からない子どもがいることを知る。同じ頃、米国のBailey教授がヒヒからの異種心臓移植に続き、ヒトからヒトへの新生児心臓移植を成功させたことを知り、今患者さんを助けるためには心臓移植を行えるようにしなければならないと決意。
その後、大阪大学での心臓移植実施の準備を行い、1991年にロマリンダ大学に留学しBailey教授の指導を仰ぐ。1999年2月に心臓移植再開例で心臓の摘出を担当し、改めて臓器提供者(ドナー)に対する敬意を深めるとともに、現在もドナーに敬意を払えるような移植医療体制をつくることに尽力している。

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