院長インタビュー

卓越した総合力で最適医療の提供をめざす九州医療センター

卓越した総合力で最適医療の提供をめざす九州医療センター
村中 光 先生

独立行政法人国立病院機構 九州医療センター院長

村中 光 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年07月10日です。

独立行政法人国立病院機構九州医療センターは福岡県福岡市のシーサイドももち地区に立地し、高度総合医療機関として九州全域の医療の中心的な存在となっています。

九州医療センターでは全ての患者さんに最も適した医療を提供するという考えのもとで、病院全体の総合力を上げるための組織作りや職員教育などに力を入れて取り組んでいます。今回は院内の取り組みと最適医療の提供に対するお考えについて、九州医療センター院長の村中光先生にお話しを伺いました。

九州医療センターは福岡中央病院と久留米病院を統合し、1994年(平成6年)国立病院九州医療センターとして開院しました。その後、国立病院から独立行政法人へ移行し、2004年(平成16年)に独立行政法人国立病院機構九州医療センターとなりました。

当院は九州を代表する高度総合医療機関として、がん、循環器、合併精神病、膠原病・リウマチ、血液疾患、肝疾患、代謝・内分泌、感覚器、腎、骨・運動器など、広い範囲で各専門医が診療にあたっています。

また、当院は地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院、エイズ診療拠点病院、災害拠点病院などにも指定されており、九州全域における中核病院の役割を担っている病院といえます。

当院では先述のように幅広い疾患で各診療科の医師が専門性を発揮しているだけでなく、診療以外においてもそれぞれの専門によって徹底した役割分担を行なっています。

これにより病院全体で効率がよく、抜け目のない医療の提供が実現できています。

以下にその例をご紹介します。

MCセンターはメディカルコーディネートセンターの略称で、2014年に新しく設置した部門です。当センターでは様々な職種が協働して患者さんの情報を一括管理し、入院患者さんに関して入院中のスケジュールを管理することで、患者さんへ適切な支援を行なっています。

たとえば、入院中に行うリハビリテーションや栄養指導の実施日程は入院前の段階で決定します。

従来では入院中に決定していましたが、医師とリハビリスタッフ間での調整にはどうしても多少の時間を要します。すると、リハビリテーションの実施日にも遅れが生じ、患者さんにとっての適切な時期からずれてきてしまうことがあります。

そこでMCセンターであらかじめ患者さんから聞き取った情報をもとに、リハビリテーションや栄養指導の有無や実施日を決めておくことで、入院中の治療スケジュールを円滑に進めることが可能となりました。

それだけではなく、たとえば薬剤アレルギーの有無、経済的不安(医療費の支払いが困難、退院後の生活が不安など)についても事前に把握し、電子カルテなどを通じて院内で情報共有できるようにしています。

このようにMCセンターは、患者さんにとってはもちろん、病院を円滑に運営するうえでも大切な役割を果たしています。

医療情報管理センターは診療情報管理室、システム管理室、診療情報分析室・情報分析管理室、広報室で構成されています。

主に、実際の診療内容とカルテ内の記載に乖離(かいり)がないかの点検、診療記録に基づいた診療情報の集計や分析、電子カルテを中心としたシステムの管理や病院ホームページの作成・管理を行っています。

当センターには多くのスタッフが在籍しており、これらの業務を独立させて行なっている病院は全国的にみても少ないと考えます。

院内に溢れる膨大な診療情報を管理し、それを運用することは、病院の経営を発展させるためにも非常に大切なことです。

当院のスタッフはそれぞれが自分の仕事に対し非常に高い意識を持って日々の業務にあたっています。これは当院にとって大きな財産であると考えます。

実際に当院の臨床工学技士のなかには英語の論文を国際学会に発表しているものもおり、自らの分野に対する意識の高さが伺えます。

このように、医師だけでなく、看護師、コ・メディカル(薬剤師や臨床工学技師などの医療専門職)、事務員など、あらゆる職種のスタッフがプロフェッショナルな意識を持ち、自らの専門性を高める風土が当院にはあります。

また、職員育成のための仕組みや設備も整っています。なかでも「内視鏡トレーニングセンター」は国内でもいち早くシミュレーションシステムを導入した教育施設で、当院の特長となっています。

内視鏡トレーニングセンターには内視鏡のシミュレーターをはじめ、鏡視下手術(腹腔鏡・胸腔鏡手術など体に開けた小さな穴から専用器具を通して行う手術)や手術支援ロボットによる手術のシミュレーターを揃えており、研修医や院内外の医師を対象に内視鏡専門医が研修を行なっています。

内視鏡トレーニングセンターには専用カリキュラムがあり、研修医はこれを終了してから実際の医療現場で内視鏡、鏡視下手術を患者さんに対して実施しています。

内視鏡、鏡視下手術における医師の技術向上に貢献し、患者さんに安全かつ負担の少ない医療を提供していきたいと考えています。

村中光先生

当院は、高度総合診療施設として九州全域で高度な医療、つまりそれぞれの患者さんにとって、最も適した医療を提供しています。

高度な医療とは最新の医療機器を揃えていたり、先進医療を行うことと勘違いされがちですが、決してそうではありません。ごく一般的な治療から、最先端の治療まで全てを揃えたうえで、患者さんの治療の選択肢を広げることが高度な医療であると考えます。

先にも述べたように当院はスタッフ間の情報共有がきちんと取れていますし、個人の技術や意識も大変高く、これらにおいて他に追従を許さないという自負があります。

そして当院は、ある分野の治療にのみ特化して力をつけるのではなく、病院全体で卓越した総合力を身につけることを目指します。

国、地域、患者さんなどあらゆるところからのニーズをしっかりと理解し、求められていることにしっかりと応えられるような病院であり続けたいと考えています。